8話-1 悪魔の魔法
いつもご高覧ありがとうございます
またやっちまいましたー!!
予約投稿のストック尽きてた〜(><)
今週は火、水、金更新になりますm(_ _)m
ただコピペするだけの作業なのに忘れるのポンコツすぎて本当に申し訳ないです
明日もお楽しみに!
四度目の記憶を戻す儀式を成功させたユートとユーナだった。その記憶の中で二人は思い出す。相容れぬ敵だと思っていた女の悪魔が、二人の家族であるシャーロットであったことを。
しかし、シャーロットは二人を認識できていなかった。そこで、何をするにも記憶を取り戻し、知るべき情報を得る必要がある。
一度、コルアン兵士団へと戻った四人は、世話になった兵士たちに事の顛末を語りに行った。
「不思議な色の石……女の子の悪魔が家族だった……うーん」
「おい、ルトに考えさせるのはやめろ。答えは出さない癖に熱ばかり出すんだぞ、この馬鹿は」
頭を抱えながら懸命に考えるルトがハルキに止めると、馬鹿って言わないでとルトは拗ねる。四人はその漫才に苦笑いで返した。
そんなやり取りの後に、ハルキまでもがお手上げだと肩を竦める。
「なんにせよ、まずは記憶を取り戻すべきだろう。次は何処に行くんだ?」
「うん。それが……島なんだよね。誰もいない島」
ハルキが尋ねると、ユートは困った様子を見せた。それもそのはず。ユートとユーナは今回、今までとは少し毛色の違う情報を提示された。
今までは大まかな場所や行き方が示されてきたのだが、二人の脳裏には島と、そこに朧気に建つ遺跡の映像のみが刻まれている。
四人は島の存在を知らないため、行き方はおろか方角も分からなかった。
ハルキは島という情報を反芻すると、地図を取り出す。それはコウが持っていたものよりも少し古く、詳細な地形が描かれていた。
「すっげえ、ローシネル大陸ってこんな形してんだ?」
「これでも正確では無いだろうが、他のものよりは信じられる地図だ。ここがコルアンで、島ってのはこれのことだろ」
ハルキは目を輝かせて眺めるコウたちに、指先で紙面をなぞりながら教える。指し示された島はコルアンの北西の海に浮かんでいた。
ユグシアと小さく文字が書かれている。地図上では立派に存在感があるものだった。
「へぇ、こんなところに島があったんだね。オレ知らなかったよ」
「この国の人間は一部の老人しか知らんだろうよ。なんでも、人智を超えた獣が住んでるとかって噂の島だ」
ユグシアと名のついたその島は、辺境の異世界と呼ばれる無人島だ。行ったものは二度と帰らないとか、大きな蛇のようなものがとぐろを巻いているのを見たとか。根も葉もない典型的な噂が人を払い、島の存在を忘れさせていた。
「そ、そんなところに行くってことですか……?」
「そうじゃないと、記憶が戻らないからね。ユーナ、あたしがいるから大丈夫だよ」
怯えてサナの腕に手をかけるユーナに、サナは肩を抱いて安心させる。対して、少年二人は心躍る様子だった。
「船旅かー! 近いから大した旅にはならねえだろうけど!」
「蛇ってどれくらい大きいんだろうね! 食べられるかな?!」
子どもたちは未知の冒険に騒ぎ出す。それを微笑ましく見守りつつ、ルトとハルキは二人で話し合いを始めた。船旅といっても、恐怖の島へ船を出してくれる船守はいない。しかし、彼らだけで行けるような場所でもなかった。
「船の手配と操縦は俺もできるから、俺も行くか」
「おれも頑張れば……」
「頑張ってできるもんじゃねぇぞ」
否定されて叱られた犬のようになったルトに目もくれず、ハルキを含めて五人は旅の算段を相談し合う。
そして、島へと渡った冒険者たちは、足跡ひとつ無い砂浜に踏み入った。
着いて早々に走り回る少年たちと、呆れて溜息をつくサナ。ユーナが船から降りるのを支えるハルキと、恐ろしい噂が蔓延る島への上陸にしては呑気だった。
実際、そのような噂が流れるほどの空気は感じられない。
「この感じだと、誰かの意図で流された作り話だったみてぇだな」
「何故そのようなことをするのですか?」
「大切なものを守るため……ですかね、ユーナ様。例えば、そこの遺跡とかどうでしょう」
船から降りたユーナに、指差しでハルキは遺跡を示した。城塞の壁のように並び立つ木の向こう側にそれはある。隠しきれていない遺跡の頂点だけが垣間見えていた。
それは先端だけでもわかるほど、今まで訪れた祠とは大きさも作りも全く違う。双子とコウは早速そこへ向かおうとした。
「俺は船番してるから、気をつけて行ってこいよ」
「……ねぇ、あたしもここに残っていい?」
「サナちゃん? 一緒に来てくれないのですか?」
サナが唐突に、駆け出す三人に遅れをとる。ユーナは不安そうな顔をしたが、サナはそんなユーナの頭を撫でながら不器用に笑った。
「正直ね、待っているの飽きちゃうの」
「俺がいるから話してりゃいいじゃあん!」
「あんたとはもう話飽きたって言ってんのよ、コウ」
甘えたような声を出すコウにぴしりと一言決めて、サナは浜辺に足を留める。ハルキと二人で、森に入っていく三人の背中を見守った。
「……そこまでして俺と話したいか」
「自惚れないでもらっていい? 事実だから否定しないけど」
少し小突きあうと、船縁に軽く腰をかけながら、二人は少しの沈黙を作る。波のせせらぎが癒しの音に聞こえ、自然と呼吸が緩やかになった。
「お前、殺し屋なんだってな」
「もう足洗ったよ」
先に口を開いたハルキはサナに素早く切り返されて、失礼と一言謝ってから話を続ける。
「こんなに穏やかな時間は初めてだろう。ハスビリアはもっと、緊迫感があるもんな」
「よく知ってるね。あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
ハルキは自分に顔を向けたサナへ、黙って質問を促した。サナはしばらく口を開いて言葉を選ぶようにしたが、開いた唇を結んで目線を逸らす。
「なんで兵士やってるの」
独り言を言うように、サナは呟いた。ハルキはそれを拾い上げ、空を仰いで考えては、答えを出す。
「そりゃあ、なりゆきだ」
「……成り行きでやってるようには見えないんだけど。なんで、兵士として人を守るために戦うことを決めたの」
雑に返されたと怒りを込み上げるサナが食ってかかった。しかし、ハルキは対称的で、静かに遠くを眺めている。
サナにとって、この質問は自問でもあった。自分は何故、ユートやユーナ、コウを助けるようなことをしているのか。言葉にしきれない真相を誰かに言って欲しい。
ハルキはその心情を汲んでいた。それでも、全く目を合わせることなく、それこそ独り語りをする。
「理由が必要なら、そうだな。遺言に従っているってのが一番それらしい」
「遺言……って、誰の」
そんなのは関係ないだろうとハルキは笑い飛ばした。サナはこのままだと何を聞いてもはぐらかされてしまうと、質問に惑う。そして、一番気になることを口から出した。
「……人助けって、誰かに言われたとか……軽い気持ちでやってもいいの?」
「そりゃあ──」
その問いには小さく揺れる大きな不安が滲む。サナは自分の現状を顧みて、これでいいのかと常に疑問を抱いていた。サナの固く握りしめられた拳を見下ろして、ハルキは幾らかその不安を飲み込む。
そして、ハルキは答えた。サナはその言葉に、紫石英の瞳を丸くする。
遺跡に向かった三人は、いつものように短い別れに手を振った。そして、大きな遺跡の入口へ双子は進んでいく。祠と印象は同じだが、広い空間に足音や風の音が音楽を奏でるように響いた。
「なんだか……落ち着くね」
「うん、自分の部屋に入ったみたい。ユート、私たちここに来たことがあるのかな?」
「うーん、それは違う気がする。誰かに守られてるみたいな安心感……とにかく進もう」
二人は形容し難い感覚を胸に覚えながら、影さす廊下を進んで行った。じきに、眩しい光が出迎える。白くて、暖かい光。眩しさに目を細めることもなく、二人は自然と深く息を吐いた。
広い一室だが、中には壁画や豪華なシャンデリアが降りている。二人の記憶に照らし合わせると、王城の玉座の間に似ていた。
「……ユーナ、あそこに台座がある。今までのとは形が違うんだね?」
「なんだろう……鍵穴もあるから、扉みたいに見えるね」
二人はその台座に触れ、まじまじと観察してみる。
その時、首にかけていた石が服を透過して輝き出した。今までにない輝きで、驚いた二人は慌てて引っ張り出す。
硬く傷一つ無かった石には、割れ目ができていた。その亀裂は少しずつ広がっている。
「ユート! ど、どうしましょう!!」
「え、わかんない! 壊れちゃうよ……ッ!?」
二人が慌てふためいていると、石は大きく音を上げて砕けた。その瞬間、二人の視界は今までよりもずっと強い光に満たされる。




