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6話-1 再会の衝撃

うわーーー!!予約投稿尽きて少しだけ更新が止まっていました、すみません(_;´꒳`;):_

いつも月水金に投稿していますが、今週は火水金で行きます…!


 記憶を取り戻す旅をしていた冒険者一行は、その道筋を少しずらして、とある民家を目指していた。


 ユートの背中には、数時間全く起きる気配がないユーナが眠っている。サナはその顔を見つめながら、唇を噛み締めた。コウは先陣を切って、三人を見守る。


 聞こえてくるのは、木々で暮らす鳥の鳴き声と、三つの足音だけ。これまで賑やかな旅路だったのが、一転して静かな道のりとなった。


「この辺り、見覚えがある。もう少しで着くよ」


 ユートが森を見上げ、ユーナを背負い直す。目標にしている民家はユートが記憶を失ってから、五年もの間に暮らしていた場所だった。


「こんな山奥で暮らしてたの?」


「うん、人が多い街は逆に危ないからって。魔物とかが出ると……さ」


「ふぅん、確かに。森の方が静かなことあるよな」


 サナの問いに答えるユートへ、いい所で育ったなと、続けてコウは感想をこぼす。しかし、会話はそこで途切れてしまった。


 皆の心はユーナへの心配や不安でいっぱいいっぱいなのだ。道のりを楽しもうという気持ちは湧いてこない。


「……あ、見えた」


「あれかぁ、思っていたより綺麗な家だな」


 ユートが指さす先を、二人が同時に確認する。自然と足取りは速くなった。ユートが育った場所を見られることもだが、何よりユーナを安全な場所で寝かせてやりたい。三人とも抱いていた焦りが、足に出ている。


「……ミキ、いるといいんだけど」


「医者が居なくても、ちゃんとした寝床で寝かせてあげられればそれでいい。入ろう」


 サナが少し急かすように言った。それにユートは緊張したのか、深呼吸を繰り返す。そして、扉を叩いた。


 ユートにとっては、もう帰ってこないことも考えた場所だ。それは家主たちも同じで、どう思われるかはわからない。ユートは少しの不安を覚えていた。しかし、扉はあっさりと開かれてしまう。


「……ミト!」


「あれ? あれれ? ゆーと?」


 四人の冒険者を迎えたのは、扉を重そうに開けた幼い少女だった。ミトと呼ばれると、嬉しそうに笑いながら飛び跳ねている。


「ゆーと! かえってきたー!」


「うん、帰ってきたよ。ごめんねミト、ミキかルト、ハルキ……はこの時間いないだろうけど、誰かいる?」


 ユートが抱きついてくるミトを片手で宥めながら、本来の目的に踏み出した。しかし、ミトは素直に言うことを聞けるほど、(さと)い年齢には辿り着いておらず、騒ぐばかりで聞く耳を持たない。


「ねぇ、そこのガキ」


「ガキはねえだろ、落ち着けよサナ。えーと、ミトちゃん? オヤジさんかオフクロさん呼んでくれる?」


「おやじ? おふくろ? だれそれ」


「くっそー、大人気ないけどイラついてきた」


 ミトに翻弄(ほんろう)されるばかりの三人が嘆いていると、家の中からのっそりと大きな影が現れる。


 それは高い身長に夜空のような黒髪、青く光る蒼玉石を瞳に宿している。コウとサナがその登場に短く悲鳴をあげる隣で、ユートは嬉しそうに顔を輝かせた。


「ルト! いたんだね!」


「ユートじゃん、帰ってきたの」


 ゆったりとした気怠げな話し方でユートを迎えたのは、ユートが世話になったと語ってきたルトという男である。


 彼はコウとサナにも目線を向け、お友達ねと軽い挨拶をした。二人はその威圧感に似合わない、のんびりとした空気に戸惑いながらも、どうもと返す。


 ルトは右目を覆い隠すように伸ばした髪の毛を触ると、数秒黙って皆を観察していた。


「賑やかだなぁと思ったら、なんか大変?」


「そう、ユーナ……えと、オレの妹が倒れてから目を覚まさないんだ! 詳しいことは後で話すから、助けて!」


 ユートが必死の剣幕で頼むと、そこまで緊張しなくてもとルトは言いながら中へ促す。ミトはルトに抱きつくと、早く入りなよとコウとサナに言ってきた。


「俺、子供嫌いかも」


「あたしは元々嫌い」


「み、ミトは特別変わってると思うから……そう言わないで。ようこそ、オレの家へ」


 ユートは腕を組んで苛立ちを隠さない二人に苦笑いを浮かべながら、ルトへついていく。そのまま自分が五年間寝ていたベッドへユーナを運ぶと、ようやく一息つくことができた。


 穏やかに眠る妹の顔を見て、ここに至る道のり、会敵した悪魔たちを改めて思い出した。


「もう会えないのかと思った。何か思い出せたの?」


 しばらく黙っていると、後ろで様子を(うかが)っていたルトが声を掛ける。


 ルトは五年間、ユートの近くにいた人物の一人。彼が記憶を失っている間の苦悶や様々な悩みは把握していた。それが少しでも軽くなったのか、質問の本質はそこにあるのだ。


 ユートは何から説明しようかと悩んでから、小さく頷いてすべてを語る。


「ユーナさまと双子で、おれたちの他に家族がいて、天使で王族……うん、すごいね」


「でも、オレはオレのままだよ」


 語られたことを咀嚼(そしゃく)するように、ルトはユートの言葉を繰り返す。そんなルトに、ユートは笑顔で自分の胸に手を置いた。その誠意がある姿に、ルトはわかっていると短く返事をする。そして、再び考え込んだ。


「悪魔のこと、ちょっと変なことがある。これはハルキにも話した方がいいね」


「うん。ユーナが起きたら会いに行きたいんだけど……」


「おれじゃ詳しいことがわからないけど……うん、しばらく起きない感じがする」


 ルトは独特な言葉で説明するが、彼の直感的な意見は正確性が高いことを、ユートは知っている。目覚めないと言われてしまったユーナを見て、目頭が熱くなった。黙ってしまったユートの気を察したのか、ルトはその丸くなった背を撫でる。


「おれは非番だったから家にいたけど、ミキちゃんは仕事。でも夜には帰ってくるよ。ハルキはしばらく来ない」


「仕方ないね、最近忙しそうだったから」


 淡々と話すルトだったが、その声音には励ましたいという想いが込められていた。ユートもそれを感じたのか、頷いてから目元を力強く拭う。


 皆に話をしたいと、玄関先に置いてきた仲間の元に向かった。自分の部屋として使っていた扉を閉め、ユーナに心を残しながら階段を下りていく。その先には、心配そうにこちらを見上げる仲間たちが待っていた。


「起きそうにないか?」


 コウが食い気味に聞いてくるのを、ユートは俯いたまま肯定する。サナは息を吐いて、手元を(せわ)しく動かした。


 皆、安心しきれずに落ち着きが保てない。ミトもその想いを察知したのか、奥のソファで黙っていた。


「えっと、自己紹介してもいい?」


 重い空気に耐えきれなかったのか、ルトが手を挙げる。コウはその意見に乗って手を叩くと、明るい雰囲気を蘇らせた。サナは相変わらず気が散っている様子だったが、無言で賛同の意志を示す。


「おれはルト。ユートとは五年前から一緒に暮らしていて、コルアン王国の兵士やってる。よろしくね」


「コウだ。ユートとは一カ月くらい前に会った」


「……あたし、サナ」


 各々が名乗り終えると、よろしくとルトは握手をした。それに応じたコウが潰された蛙のような声を上げる。骨が軋むように痛んだのだ。


 それを見て、ルトは慌てて手を離すと、しゅんとした顔で謝罪をする。まるで叱られた子どものような顔だ。


「おれ、力強いの……折れてない? 大丈夫?」


「そこまでヤワじゃねえ」


 コウがいつも通り素早いツッコミを披露すると、ミトがくすくすと笑い始めた。ユートも自然に口角が上がっている。


「るとはね、おもしろいよ」


「嬉しいなあ、オレの家族と仲間が仲良くしてくれるの」


 まだ仲良くないと、ユートの言葉をさっぱり切り落としたのはルトの方だった。コウも被せてツッコミをすると、サナまで小さく笑う。蔑ろにされた気持ちのコウは、拗ねるように口を尖らせた。


「自己紹介はここまででいいよな? 今後どうするか話し合おうぜ」


「あ、そうだね。今夜、オレが言っていた医者のミキが帰ってくるの。それまでユーナのそばにいてあげたい」


 ユートが今後について提案すると、コウとサナは力強く頷き賛成する。動けないユーナを置いて、目覚めの方法を無闇に探究するより、有識者を頼るべきという判断であった。


 ルトもそれがいいと同意すると、それまでに家の中を紹介したいと、コウとサナを誘う。サナはそんなことをしている場合ではないと言いたげな顔をしたが、コウが先手を打ってサナの手をとり、ルトについていった。

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