第53話 昏睡
暖かかった背中が冷たくなって、さらになんだか固くなって、そこで私は目を覚ました。
ぼんやりと……天幕が見える。
ここは?
……私はどうなったのだったか。
まだ少し霞む視界、瞬きをゆっくりした。
「クレシア!!気がついたの?」
この声は……ミア先輩。
「あ」
「クレシア!私よ!ミアよ!わかる?」
わかります。
頭の上でそんな大声出さなくてもわかりますから。
「はい。先輩」
先輩は目をうるうるさせて頷くと、走ってどこかへ行った。
しばらくするとリリアナが現れた。
「……よかった。目が覚めたのね」
リリアナはそう言って私の手を両手で包み込んでしばらくじっとしていた。
「うん、循環してる。大丈夫ね。どこか痛いとか苦しいとかはない?」
「……少し、ぼんやりしていますが、痛みは、ありません」
「危なかったのよ。戻って来れてよかった。しっかり休んで」
「あの」
天幕を出ようとしたリリアナに声をかけた
「あの、団長、は」
「……ヴァレリウス様も、生きているわ」
「そう、です、か。よかった」
そのままリリアナは出て行った。
まだ頭がぼんやりする。
ものすごく恐ろしい目に遭った気がするけど、詳しく思い出せない。
でも、団長も無事だったなら、よかった。
ミア先輩が毛布をかけてくれて、私はまた眠った。
・・・
翌朝、目覚めた時には城への帰り支度が進んでいた。
まだ無理をしないほうがいいとのことで、私は荷馬車に乗せてもらうことになった。
団長の姿が見えない。
探していると、別の荷馬車に眠ったまま乗せられる団長が見えた。
「団長!」
近づくと顔が青白い。
生気がない。
背中が冷たくなった。
「団長、は。あの。容体は?」
衛生兵と治癒魔法士がそばについていた。
「まだ、目覚めません。このまま城に連れ帰って治療を進めます」
「あの、大丈夫、ですよね?眠ってるだけ、ですよね?」
「クレシア」
後ろからリリアナに肩を掴まれた。
「静かに」
「……あ、はい」
「今はなんとも言えないの。とにかく、城に帰りましょう」
その表情はいつになく深刻で、私は、ただただ不安に押しつぶされそうだった。




