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第50話 臨時軍属と裏事情


臨時軍属??


聞かされた時には何のことだかわからなかった。

例によってペラ紙が食堂前の掲示板に張り出してあったらしい。


・・・


今朝は休日。

ゆっくり二度寝を楽しんでいたところに、誰かがドタドタ走ってきてバンバンドアを叩いた。


「クレシア!!開けなさいクレシア!大変よっ!」


何事かと飛び起きてドアを開けると、息を切らせて目が爛々で鼻息ぶんぶんのミア先輩がいた。


「軍属に異動よっ!私もあなたも!」


大興奮で単語が切れ切れなのをつなぎ合わせて聞いて、ようやく話が見えてきた。


エリック王子が次の戦いに赴くにあたり、魔法士の増員が必要になった。

その増員メンバーに私もミア先輩も選ばれた、ということだった。


「臨時とはいえ一気に七人も軍属入りよ!大きな戦いなのかしら……ちょっと心配よね」


大興奮が少し落ち着いたのか、ミア先輩が冷静に言った。


私は着替えを終えて、ミア先輩と一緒にそのペラ紙を確認しに行った。

確かに七人。

私の名前も入っている。

同期の名前はなく、他の五人は知らない人だった。


「ミア先輩、良かったですね。軍属目指してたんですよね」


「そうね。嬉しいわ、でも、実際になってみると……少し怖い感じもするわね」


「そう、ですよね」


「だーいじょぶよ!」


後ろからよく通る美声がした。

振り返ると。


「リリアナ様っ!」


突然の推しの登場にミア先輩が固まる。

両手を口に当てて顔を真っ赤にしている。


「リリアナ様、これ、驚きましたけど、どういうことでしょうか」


私はペラ紙を指さして尋ねた。


私はまだ新人で研究部門でようやく馴染んできたところ。

仕事も楽しくなってきたのに、臨時軍属。


ミア先輩も言ってたけど大きな戦いに行くことになるんだろうか。


「詳しくはね、またみんな集まった時にちゃんと説明するけど、この七人は戦地は不慣れでしょう?だから補給や結界関係の魔法で助けてもらいたいってことなの。正規の軍属が戦闘に専念できるようにって」


その言葉を聞いて、ミア先輩の表情がわかりやすく緩んだ。


「あ、そういうことなんですか。私、リリアナ様のお役に立てるのはすごく嬉しいです!でも正直ちょっと怖いなって思っちゃって」


「ふふ、それはそうよね。大丈夫よ。みんな大切な魔法士だもの、いきなり怖い目に遭わせたりはしないわ」


「ありがとうございます!安心しました」


リリアナとミア先輩のやり取りを聞いて、私もほっとしていた。


「あ、クレシア。ちょっといいかしら」


「はい、なんでしょう?」


呼ばれて、二人で食堂を出る。

ミア先輩が羨ましそうにこっちを見ている気配がすごくするけど、この場合はしょうがないので許してほしい。


人気のない場所まで来ると、リリアナが振り返って言った。


「クレシア、あなたはヴァレリウス団長の補佐になります」


「え?」


「あなたは大きな力を持ってる。だけど新人だし戦闘も初めて。万が一ミスやパニックが起きた時に抑えるとしたら、あなたの力をよく知っているヴァレリウス様が適任だから。軍議でそう決まったの」


パニック……森での失敗を思い出してしまう。

火の粉が散って、手がつけられなくて。


「最初は私の近くにって言ったんだけど、ヴァレリウス様がそばに置きたい、って譲らなかったのよ?」


「えっ……そばに?って?」


「うふふ、あなたを危険から守りたい、ってそういうことじゃないかしら?」


「そ、そんな……私だって、戦えますよ!」


いつまでも弟子気分でいるなって言ったのはあっちなのに。

半人前扱いするなんて。


「あ、ごめんなさい、そういう意味じゃないのよ」


「?」


「あなたの力を認めているから軍属に入れると決めた。でも、どうしても気になるのよ」


「……私は、何をすればいいんでしょうか」


「それは、ヴァレリウス様に聞いてね。あなたなら臨機応変に対応できるはずよ」


そういうとリリアナは軍部の方へ戻っていった。


ヴァレリウス団長の、補佐。

何をするかは直接聞く。


仕事だけど、近くで働けるのはやっぱり嬉しい。

だって……今は、最推し。

つまりこの世界で一番好きな人ってことだ。

ししょ……団長のそばだったら、初めての戦場でもきっと戦える。


その次の日から、私とミア先輩を含めた七人は臨時軍属として厳しい研修と訓練を受けた。 


隊列や戦術、役割分担と号令指示の暗記、魔法士としては禁術魔法の対抗術式を覚えたり、戦いに出る前に倒れそうなほどの詰め込み量だった。


そして、いよいよ戦地に赴く日がやってきた。

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