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第48話 リリアナの思惑

「アルベルト部長」


会議室を出たところで、リリアナは研究部門長を呼び止めた。


「おや、これはリリアナ殿。何か御用ですかな」


「ええ少しお伺いしたいことがあって。新人の……クレシアの様子はいかがですか?」


クレシアの配属については、話がもめた。


行政部長は新人は行政からが基本、特別扱いは本人の立場が苦しくなると言い、軍属部長のリリアナは早期に戦力として育てたいといい、研究部門は変わった適性を持っているので研究が向いていると主張。


つまり、取り合いになった。


「クレシアですか。ふむ。順調に学んでいるようですな」


「上位属性を習得中とか」


揉めた末に、ヴァレリウスが『上位属性魔法の習得を優先させたい』と言ったことで研究部門に配属が決まったのだ。

しかしリリアナは、今も研究から軍属への移動を望んでいる。


「時間と闇の適性がありますな。雷はまだなんとも」


「実戦で使えそうですか」


「実戦、というと軍属での意味でしょうが…………さて」


「どういうことでしょうか」


言い淀むアルベルトにリリアナは怪訝な顔をする。


「クレシアは、穏やかで優しい性格のようでしてな。相手を傷つけることを極端に嫌う」


アルベルトが髭を撫でながらゆっくりと言う。


「戦闘向きの性格ではありませんな。力量は申し分ないだけに、惜しいと言えば惜しい」


「私とて、相手を傷つけることを楽しんでいるわけではありません」


リリアナは反論する。

軍属魔法士は別に戦闘狂というわけではない。


「もちろんです。だが、必要とあれば戦い、相手を傷つけても前に進む。軍属には必要な性質ですな。これが弱い。傷つけた相手を思って心を傷める。……無理をさせると心を壊す」


「…………」


ヴァレリウス様がクレシアを軍属にしなかった理由はそこか、と思い当たる。


でもあの魔力と制御力、攻撃の正確さは研究棟に籠もらせておくには惜しすぎる。

軍属で、補助役としてでも支えになってほしいとリリアナは思った。


「直接攻撃をしなくても、軍属でやれることはたくさんあります。結界の解除や地雷魔法陣の検出や補給や救護の仕事も」


「確かに。しかし、あの魔力であれば期待されるのは積極的な攻撃魔法になるでしょうな」


「…………それ、は」


「まだ、わかりません。若い、新人ですからの。これからどのように伸びるか、伸ばすか、焦らぬことが大事かと思いますぞ、リリアナどの。ではこれで」


リリアナは会議室に戻り、書類を片付けながら考えていた。


もう少ししたら、第三王子派の殲滅作戦が決行される。

ヴァレリウス様を冤罪に落としたエンデ卿が中心になっている勢力だ。

街の魔法士たちを囲い込み、禁術魔法にも手を出す厄介な相手。


ようやく追い詰めたが、森の奥の廃墟に未だ立てこもっている。

周囲に結界を張り、地雷型魔法陣を多数埋め込み、森の生命力をじわじわと奪っている。

早く元を断たねば被害が広がってしまう。


森の生き物たちの悲鳴が聞こえるようで、リリアナは苦しかった。


敵の魔法士に大した技術も魔力もなかったとしても、禁術を使われてしまうとこちらの手が多く取られる。

対応は簡単ではない。

力のある魔法士は一人でも多くほしい。


クレシアは経験不足ではあるが優秀で大きな魔力を持っている。


地雷魔法陣の撤去や禁術への対抗力として、リリアナはどうしても期待をしてしまうのだった。

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