第45話 配属と謁見〜最推し登場!
古着の制服の山からなんとか自分に合うサイズのものを見つけ、新人研修が進められて数日、研修担当の先輩魔法士から配属を言い渡された。
セシルとトーマスは行政。
そして私はなんと研究部門だった。
嬉しいけど、なんでそうなったかがすごく気になった。
でも聞く勇気はない。
「ではこれから、国王陛下と王子殿下に謁見します。ついてきなさい」
は?
今なんと?
国王陛下と、
『王子殿下』って言った⁈
それはつまり、エリック王子…………
ここで、最推しキターーー‼︎
エリック王子といえばリリアナの想い人、『王宮魔法士シリーズ』のヒーロー。
プラチナブロンドに白磁の肌、深い青の瞳の儚げな美貌。
なのに、実は計算高くて腹黒毒舌キャラ。
そのギャップがたまらなくて前世の私の最推しだったのよね。
表裏のある美形キャラ、最高。
で、その王子を生で拝めると。
魔法士になってよかった、こんなご褒美があるとは。
嬉しすぎて挙動不審にならないように気をつけねば。
私はヒラ魔法士。
新人の下っ端。
王子様は遠いお方。
毒舌腹黒キャラだなんて全然知りません。
「ここで待て」
謁見の間らしきところの手前の廊下で三人並んで大人しく待つ。
先輩は大きな扉の前で新人魔法士を連れてきた、と報告している。
いよいよだ。
おお……広間だ。
玉座だ。
王様が座っている。
RPGの世界でよく見たやつ。お城の玉座。
その側に立つのが……
エリック王子!ああ、本物、美しい!!
見ると、そのそばにリリアナが、さらに一段下がったところに師匠がいた。
いや、師匠じゃない、団長、か。
先輩に促されて広間の中央に並び、膝をついて礼をとる。
この動きもさっき練習したばかり。
「今年は三名の新たな魔法士を迎えました。皆優秀です。我が国の重要な力となってくれるでしょう」
行政トップの、誰だっけ名前が思い出せないけど部門長が国王陛下に奏上する。
そして名前を呼ばれて順に立ち上がる。
国王からのお言葉を賜る。
「新たな魔法士を王宮に迎えられたことを嬉しく思う。活躍を期待している」
3人揃って頭を下げる。
これで顔見せは終わりだ。
もう直ぐ退出。
ああ王子、もう少し見ていたかった。
その時目の端にししょ……団長が映った。
一瞬目が合ったが相変わらずの無表情だ。
元弟子の晴れ舞台なんだからもう少し柔らかい顔をしてくれてもいいのにな。
王子の優雅な立ち姿を目に焼き付けつつ、私は謁見の間を退出した。
魔法士棟に戻るとセシルが声をかけてきた。
「ねえ、緊張したね!」
「あ、そ、そうね。王様の前だもんね」
「王様って、その言い方は。でも陛下のお姿間近で見たの初めてだよ。お声もね、近くで聞けてさ。王宮魔法士になったんだなあって」
「そう、そうね!」
「ふん。クレシアはずっと陛下じゃなくて、王子殿下の方ばかり見ていたな」
トーマス、鋭い。
バレてる。恥ずかしい。
「あはは、殿下はハンサムだもんね、やっぱり気になっちゃうんだね」
セシルにも笑われた。
恥ずかしくてちょっと顔に熱がたまる。
「でもさ、ヴァレリウス団長、ずっとクレシアのこと見てたよね?」
「え?」
「気づかなかったの?いつもの無表情だったけど、ずっとクレシア見てたと思うよ」
「そ、そうだった?」
なぜか顔がもっと熱くなる。
ほんとかな。
ほんとだったら、ちょっと嬉しい。
はっ!
でもそれなら私がエリック王子ばかり見ていたことがししょ……団長にバレてしまったということか!
それはまずい!
…………まずい?
…………なんで?
ううむ。
王子は元から最推しで、想像通りに美しくて素敵だった。
……けど。
今私が気にしているのは、ヴァレリウス様のような気がする。
それはつまり。
――――私、いつの間にか『推し変』してたのね!
突然の焦りの理由がわかって、私はすっきりと落ち着いた。
エリック王子がずっと最推しだったけど、長く一緒にいたから情が移って、今はヴァレリウス最推しになったんだ。なるほど、だから後ろめたくなっちゃったんだな。
最推しの目の前で他の推しに目を奪われるなんて、やっぱりよろしくない。
これからは気をつけよう。
それにしても王子、綺麗だったなー。
リリアナと並んだ絵面が良すぎて本当に尊かった。
原作どうなってるのか知らないし、身分の差とか色々問題はありそうだけど、あの二人が結ばれるまで見守りたい気持ちでいっぱいになった。




