第43話 祝福の言葉は
「よろしかったんですか?」
回廊から建物内へ向かっていると、リリアナが呆れるように後ろから声をかけてきた。
「もう少し、喜びを表に出しても誰も責めませんよ?」
「……」
さっきのクレシアとのやりとりのことを言っているのだろう。
「合格するのはわかっていた」
リリアナは苦笑する。
「ヴァレリウス様の気持ちではなくて。……あれではクレシアは寂しいでしょう」
クレシアは真面目だ。能力も高い。
難関試験とは言われていても、内容は基礎的なことばかりだ。
あれがこんな試験で弾かれるようなことはない。
今朝の試験の会議でも、満場一致での合格だった。
当然だ。
「……いつまでも弟子気分でいられては困る」
「それはわかりますが。もう少し丁寧に言って差し上げてもよかったのでは?と言ってるんです。せめて……おめでとうぐらいは欲しかったと思いますよ。頑張っていましたからね」
おめでとう、か。言った方がよかったのか。
あまり考えていなかったな。
……しかし今更遅い。
「……よかったとは、思っている。王宮魔法士として、独り立ちするんだからな」
そう、まだ上位属性魔法を教えていなかったのが気がかりだったが、ここでなら環境も整っている。
クレシアの力ならば働きながら覚えていけるだろう。
給金を受け取るようになればそれなりに暮らしていける。
自分の手からは離れ、一人の大人として生活していくのだ。
「そういう、ことではないと思いますけど、……まあいいです」
含みのある言い方をしてリリアナは話題を閉じた。
これからのクレシアのことを考える。
新人魔法士として宿舎で暮らし、同期や少し上の者たちとの関係ができていく。
仕事を覚え、付き合いが広がり、同年代の仲間と協力しあったり励ましあったりして成長していく。
王宮魔法士であれば生活には困らない。
実家への仕送りもできるだろう。
師匠としての役目はこれで終わった。
自分も魔法士団長に復帰して忙しい。
森での暮らしは悪くなかったが、今はもうそれぞれの道を歩むことになったということだ。
「……懐かしいな」
「え?」
「いや、なんでもない」
ほんの二ヶ月前のことなのに、不意に森の家の記憶が温かく、懐かしく思い出された。




