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第27話 魔法陣のチート発動

クレスの魔法陣は、独特だ。


術式の意味を理解している。

だから書くのが速い。

迷いがない。

合理的で、余計な装飾がない。

必要な文字だけを正確に並べる。


見本を写しているだけでも意味を理解し、すぐに応用式を作る。

形も変える。

円だけでなく、線や三角を試し始めている。

普通なら、あり得ない速度で習得している。


——学び慣れている

——そんな雰囲気すらする。


だが。


「ジョーエンカー、アッアギー、モン、モ……」


詠唱になると止まる。

せっかくの術式が光らない。発動しない。


「エーアンカールティ、ティモンスレーデ……」


それにしても……苦労しているな。

そこまで噛むのも、ある種の才能かもしれん。


ため息をついて、クレスが光らない魔法陣を見つめる。

下を向く。


詠唱ができなければ、術式は動かない。

だが詠唱も、本来は時間をかけ繰り返し唱えて口が覚えるまでやる。


普通の魔法士なら何年もかけて覚えることを、こいつは短期間で詰め込んでいる。

読めないのも無理はないことだった。


そこでふと思う。


自分は、もう詠唱はしない。

書くときに同時に魔力を流し込む。

正確には書くということすらしない。

頭に描いた術式をそのまま空間上に文字として浮かび上がらせて、同時に回路を起動させる。

術式を閉じる瞬間に起動魔法を与えて、発動させる。

もちろん正確な術式が頭にあってこそできる方法で、難易度は詠唱よりもずっと高い。


これは戦いの中で覚えたやり方だ。

のんびり詠唱していては敵にやられる。

そんな極限状態で体が覚えたやり方だ。

教えたからといって、できるものでもないだろう。

だが。


「詠唱は、難しいか」


声をかける。


「はい」


素直だ。


「諦めなければ、いつかはできるだろう。だが」


クレスが顔を上げる。


「が?」


「詠唱なし、という方法もある」


クレスの目が大きく開く。


「‼︎ほんとですか!そっちの方がいいです!」


……やはり人は楽な方へ流れる。軽く睨む。


「あっ、すいません。つい……」


しおしおと肩を縮める。

分かりやすい。


まあ無理だろうが、ものは試しだ。


「当然ながら、詠唱より難しい。上手くいく可能性は低いが、やってみるか?」



そして。

三日経つ頃には、クレスは無詠唱で魔法陣を発動させた。


非常識にも程がある。

思わず、笑ってしまった。


この弟子が規格外なのは、やはり魔力量だけではないらしい。

この力を、この先どう扱うのか。


簡単な問題ではなくなってきた。

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