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第25話 風切り魔法の完成

あれからしばらく、置かれた物を切る練習が続いた。


丸太の次は、薪、ロープや布、陶器の破片。

切る種類によって少しずつ、刃の形を変化させていく。


狙った角度で、狙った位置を切る。

正確さの調整は、5色の色石の時と感覚は近い。


春の風が庭を抜ける頃、ヴァレリウスが空を見上げた。

高い枝から花びらが舞い始めていた。


「次だ」


空を見上げる。

白い花びらが、ひらひらと落ちてくる。


「花びらを切れ」


「え?」


「地面に落ちる前に、だ」


難しいのはすぐに分かった。

花びらは軽く、軌道が安定しない。風に流される。


小さな風刃を作って飛ばす。

外れる。

そのまま飛んでいき、遠くの木の幹を浅く削った。


「花びらの位置までで当たらなかったら刃は解け」


師匠が言う。簡単に言うけど、そんな瞬間的に判断できないと思う。


「余計な破壊をするな」


「はい」


私だって余計な傷はつけたくない。けど。

もう一度。

飛ばす。外れる。


刃を解こうとしても、うまく消せない。

また外れる。

また外れる。


何度も外して、疲れてきた。

他の木にも傷をつけてしまっている。申し訳ない。


舞い散る花びらを見上げると、思わずため息が出る。


(難しい……)


その時、師匠が言った。


「何が難しい?」


「軌道の予測ができないので、狙いが絞れません」


「そうだな。動物よりも小さく軌道が読めない。確かに難しいが」


師匠はこっちを向いて言った。


「生き物を狙うより、花びらを切る方がお前はやりやすいだろうと思った」


私の気持ちの負担を考えてくれたんだ。前に、丸太で怖がったから。

やっぱり優しい。

そう、私の推しはこういう優しさがたまらないんだ。

嬉しい。


「ありがとうございます。でも難しいですね」


「そう、だな」


師匠は少し考え込む。


「なら、目標の近くで刃を作れ」


「近くで?」


「体から離れたところで思い通りに形作るのは難しい。が飛ばす時間がない分、命中率が上がる」


なるほど。


落ちてくる花びらを見つめる。

一枚。ゆっくり回転しながら落ちてくる。


そのすぐ横に、風を集める。

薄く。小さく。優しく。


刃を作る。

そっと当てる。

花びらが、ふたつに分かれた。

静かに落ちていく。


「……できた」


思わず笑みが出る。


「この方が、やりやすいです」


師匠がわずかに驚いた顔をする。


「……そうか」


次の花びら。

また切れる。

その次も。

空中で次々に花びらが分かれて落ちていく。


(ナイフを投げるより、りんごを剥く方が安心だな)


大きくて硬いものを切るなら、勢いが必要だろう。

でも花びらは柔らかい。

そっと当てる方がいい。


私が花びらを切り続ける様子を、師匠はなぜか複雑な表情で見ていた。


しばらくして、師匠が言う。


「風はここまでだ」


「え、これで終わりなんですか」


「今は、これで十分だ」


短い沈黙。


「次に進む」


「わかりました。次は?」


「――結界魔法だ」


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