第20話 色石サーカス公演延期中
生活魔法を教わりながら、色石の修行は続いていた。
冬の家の中はあったかくて快適だ。
生活魔法を使えるようになると、日常生活が劇的に改善した。
前世の日本と同じくらい。
暖房も効かせられるし家事も冷たい水や手荒れに悩むことなくできる。
食料の買い出しの時は寒い雪道を歩いていくけれど、それもしっかり着込んで防水のブーツを履けば辛くはない。
美しい雪景色を楽しむ余裕も出てくるほどだ。
今日も午後からは色石の修行をしていた。
木箱に収められた色石を一つずつ宙に浮かせる。
均等に並べてから空中にジェットコースターのようなコースを思い浮かべる。
均等な間隔で繋いだ色石をそのコースに滑らせるように流していく。
速くしたり、遅くしたり。
コントロールはもう難しくなかった。
5つの石の間にある4つの空間を広げたり縮めたりしながら回転させる。
師匠がこっちを見ている。
気づかないふりで石を動かし続ける。
「できたか」
師匠が聞いてくる。
これまでも何度か同じことを聞かれている。
「そうですね、もう少し」
私は言葉を濁す。
修行が終わってしまうのが怖かった。
生活魔法が使えるようになって、この色石修行も終わったら、言われてしまうかもしれない。
『村へ帰れ』
と。
元々、魔力の暴走を抑えて生活魔法を使えるようにするためと言って弟子にしてもらった。
もう、目的は達成されている。
村での生活は問題なくできるだろう。
でも。
ここの暮らしが好きだ。
師匠はきっとずっと森にいるわけじゃない。
大魔法士ヴァレリウスの描かれ方は、そんな序盤で終わる感じじゃなかった。
だから。
せっかくの推しとの暮らしを少しでも長びかせたい。
それが本音だ。
私ははぐらかして答えた。
「せっかくの綺麗な石ですからね。師匠のお手本よりもパアッと華やかなステージにして見せます!」
「ステージってなんだ。5つを制御できればいいんだぞ」
「師匠のお手本、素敵でしたからね、越えて見せます!」
そう言ってニカッと笑って見せた。
「まあいい、好きにしろ」
師匠はそう言って見逃してくれる。
私は石のサーカスの振り付けを考える。
上がって、広がって回って連なって。
できるだけ難しいことをやって見せたい。
高いところから自由落下させて直前で止めるとか、色が混ざって見えるぐらい高速回転させるとか。
難しい技を次々生み出してはノートに演出プランを書き留めた。
木箱だけでなく他のガラス瓶や糸や棒なども使って組み立てていく。
ふと思う。
何かに似てる。
どこかで……あ、あれだ。
前世で見たペタゴラ装置。
球がいろんな道を通っていろんな力を使ってコースの最後までたどり着く、教育系チャンネルでやってたやつ。
あれを空中でやる感じ。
印象深かった動きをあれこれと思い出してみた。
前世のテレビの記憶を手繰り寄せながら、私は複雑で長いサーカスの演技プランを一冬かけて完成させた。
「随分と凝ったものを作ったな」
師匠は半分呆れたような笑顔で、合格をくれたのだった。




