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第34話『未完成の怪物(プロトタイプ)』

 地平線の彼方、帝都のある北の方角から、黒い竜巻のような砂煙が迫ってくる。


 ズドォォォォォォォォンッ……!!


 音速を超えた衝撃波が、遅れて鼓膜を叩く。

 速い。あまりにも速すぎる。


「……来てしまいました」


 シエラが耳を塞ぎ、顔をしかめる。


「音速に近い速度です。でも、音が……悲鳴を上げています。

 金属が軋み、魔力が暴走し、エンジンが『死にたくない』と絶叫しています」


「どんな運転してやがるんだ、あいつは……」


 俺が呆れる間もなく、その「赤い閃光」は俺たちの目の前で急激なドリフト体勢に入った。


 ギャギャギャギャギャギャギャッ!!


 砂利を撒き散らし、白煙を上げながら、その物体は俺の鼻先数メートルの位置でピタリと停止した。


 ◇


 砂煙が晴れると、そこに現れたのは異様な乗り物だった。


 名付けるなら、『走る黄金宮殿』。


 ボディの主成分は、目が眩むような黄金色――伝説の金属オリハルコン。

 装飾には白銀のミスリルが惜しげもなく使われ、無意味な彫刻や宝石が散りばめられている。

 トラックというよりは、王族のパレード用馬車に無理やり巨大なエンジンを積んだような、悪趣味きわまりないデザインだ。


 だが、その豪華絢爛な車体は今、ボンネットから猛烈な火柱と黒煙を噴き上げていた。


 ボシュゥゥゥッ!!


「ゲホッ、ゲホッ……!」


 運転席のドアが開き、煤だらけになった青年が転がり出てきた。


「や、やあケント君! 来たよ!

 どうだい? 僕の自信作、試作車両『プロメテウス号』だ!」


 フィアンだ。

 彼は顔を真っ黒にしながら、白い歯を見せて親指を立てた。


 直後、背後のトラックが「ボンッ!」と爆発音を立て、圧力に耐えかねたパイプの「バルブ」が空高く吹き飛んだ。


「あはは、また燃えちゃった。おかしいなぁ」


「……おかしいのはお前の頭だ」


 俺はため息をつき、地獄のような熱気を放つボンネットへ近づいた。


 ◇


「おい、フィアン。ボンネット開けるぞ」


 俺が耐熱手袋をしてエンジンルームを開くと、そこには狂気の光景が広がっていた。


 エンジンブロックそのものが赤熱し、溶岩のように光っている。

 動力源には最高級の『炎の魔石』が、隙間なくぎっしりと詰め込まれていた。


「……なんだこれは」


「え? だってケント君、『熱を動力に変える』って言ってたじゃないか。

 だから、もっと熱くすればもっと速くなると思って、手持ちの魔石を全部突っ込んでみたんだ!」


 フィアンが得意げに胸を張る。

 俺は頭を抱えた。


「馬鹿野郎。熱機関エンジンの基本を分かってねえな」


「えっ?」


「いいか、熱ってのは『差』で動くんだよ。

 高温の爆発力(膨張)と、低温への排熱(収縮)。この温度差がピストンを動かす圧力になる。

 お前の設計には、一番大事な機能が欠けている」


 俺は灼熱のエンジンを指差した。


「『冷却装置ラジエーター』がない。

 捨てる場所がなけりゃ、エネルギーは行き場を失って、ただ内側から釜を溶かすだけだ。

 お前のトラックは、出口のない圧力鍋だぞ」


 俺の指摘に、フィアンは「あ!」と手を叩いた。


「そうか! だから走るたびに爆発してたのか!

 いやぁ、君の冷却理論は知ってたけどさ、オリハルコンなら熱に耐えると思って、つい『出力』を優先しちゃったよ」


 感心している場合か。よくこれでここまで生きて辿り着いたな。


 ◇


 だが。

 俺はふと、その赤熱するエンジンブロックに触れて、目を見開いた。


「……おい、待てよ」


 数千度の熱に晒されているはずなのに、フレームが歪んでいない。

 溶けてもいない。


「フィアン。このフレームの素材、なんだ?」


「え? オリハルコンだよ。物理攻撃も魔法攻撃も弾くから、丈夫かなって。

 あと、熱を逃がすパイプは全部ミスリル合金で作ったよ。魔力伝導率がいいからね」


「……マジか」


 俺は絶句した。

 オリハルコンにミスリル。どちらも国家予算レベルの希少金属だ。

 それを、こんな悪趣味なトラックのボディに全投入したのか?


 だが……。


「……いい素材だ」


 俺の技術者としての血が騒ぎ出した。


 ミスリルは熱伝導率が異常に高い。つまり、冷却魔法を流せば一瞬で冷える。

 オリハルコンは物理的強度が最強だ。俺の魔法で極低温にしても、金属疲労で割れることがない。


 前のトラック(ドラグーン・カスタム)は、俺の冷却出力に車体が耐えきれなかった。

 だが、こいつなら――。


「……耐えられるかもしれん。俺の『冷却』をフルパワーで流しても」


 設計はゴミだが、素材は神レベル。

 宝の持ち腐れとはこのことだ。


「フィアン。手伝え」


 俺はニヤリと笑い、工具箱を取り出した。


「この金ピカの欠陥品プロトタイプを、俺が『本物』に作り変えてやる」


 俺の言葉に、フィアンの目が輝いた。


「本当!? わあ、楽しみだなぁ! 何をすればいい!?」


「まずは余計な装飾を全部剥がせ! 軽量化だ!

 それから冷却回路バイパスを組むぞ!

  俺が溶接するから、お前は素材を出せ!」


 ◇


 その頃。

 遥か後方の荒野で。


 動かなくなった鉄屑の山(元ドラグーン・カスタム)の前で立ち尽くしていたゴルドフたちは、遠くから響く爆発音に身をすくませていた。


「な、なんだあの音は……?」

「親分、あっちの方角……さっきのガキ共が歩いていった方ですよ?」


「……フン、野垂れ死んだか? まあいい、放っておけ」


 ゴルドフは知らなかった。

 自分たちが捨て置いたその場所で、今まさに、世界を揺るがす最速の怪物が産声を上げようとしていることを。




次回は

【 火曜日の 18:10 】に更新します!


──────────

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明日も更新します!


──────────

※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。

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