10月11日 宴の夜 11/14
*
人型になったミカエルを見て、瑠奈の怒りは爆発した。
粒子の細かい、針の先で突いたよりずっと小さな光の点が集まってできた人型は、うすく透けながらも、しなやかな動線をつくっている。
疎になったり、密になったり、状態が不安定なのか、ところどころ稜線が滲んでいるが、その姿には膨らみがあった。
両親も兄弟もいない瑠奈にとって、ミカエルは唯一の家族とも言える存在だ。
どんな姿をしているのかずっと想像し、顔を見て話したいとどれほど願ったことか――。
それなのに、こうしてミカエルの姿を見ることができた今、素直に喜べないどころか、怒りで全身の血が逆流した。
――裏切りだ。
姿を目にした瞬間、思った。
ミカエルは自分を捨てた、――さっさと、いとも簡単に。
見つめる瑠奈の目の前で、白く霞んでいたミカエルの姿が、だんだんキラキラと輝きを増しながら、喜びに酔うように優雅に空中を舞っている。
そして、粒子が収束するように、その姿が次第にはっきりと形を結び始める。
――飛鳥に来れれば、それでよかったんだ。
ここなら人型にだってなれて、好きに飛び回れるから――。
これまで何を置いても瑠奈の想いを優先し、瑠奈だけに応えていたミカエルが、瑠奈のほうを見ようともしない。
そして、ふいに、飼い主に呼ばれた忠犬のように、身をひるがえして正面玄関のほうに一目散に飛んでいく。
しかも、その横顔が笑みまで浮かべているのを、瑠奈ははっきり見てしまった。
――誰かに呼ばれてるの?
ミカエルが初めて姿を現したのは瑠奈のそばではなかったし、初めて笑いかけた相手も瑠奈ではなかった。
――私のことなんて、どうでもいいんだ。
瑠奈の内側は固く強張り、気持ちは行き場を失くして凍りついた。
――どこに行くの? 誰が呼んでるのよ。
鳥が主の肩にとまるようにミカエルがふわりと降りたった先にいた相手を、瑠奈は仇のように睨みつけた。
相手はひとりではなかった。
さっきまで歓迎会の司会役をしていた、美緒と呼ばれているスタッフと、ラベンダーの植え込みの向こう側に、もうひとり、誰かいる。
涙が堰を切って溢れた。
血が滲むほど唇を噛み締めると、ふたりの姿が涙でゆがんだ。
「いったい、どういうことなのよっ」
胸の奥から言葉がほとばしり、瑠奈は悲鳴のように叫んでいた。
*
更新:週一、月曜




