10月11日 宴の夜 10/14
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「美緒さぁ~ん、美緒さぁ~ん」
喧々諤々、興奮気味の生徒たちの声が広場に響く中、美緒は自分を呼ぶ声に顔を上げた。
正面玄関のほうから青いシャツの少年が駆けてくる。
転校生受け入れを手伝い、駅まで迎えに行ってくれた少年だ。
「玄関に来客です」
「えっ! こんな時間に?」
よほどのやむを得ない事情がなければ昼間でも出歩かないこのご時世に、日も落ちて、新世界連盟の緊急放送まであった直後に、間が悪いというか、よりにもよってである。
こんな遅くに来られては、夜道を返すわけにもいかない。飛鳥に泊めることになる。
「事前の連絡もなしに?」
少年がうなずく。
「とにかく、美緒さんを呼んで欲しいって」
――私を知ってる……?
「名前は? 聞いた?」
少年は首を横に振る。
「来ればわかる、とだけ」
「……」
美緒は眉をひそめた。
――こんな時間に突然やって来たうえ、名のらないなんて。
美緒はあたりを見た。
歓迎会は中断しているし、生徒たちもざわついている。
「青柳さん、ちょっと待っててね」
ステージ中央のマイクの前にふてくされた顔で立ったままの瑠奈に声をかけ、とりあえず正面玄関へと急ぐ。
広場の奥に設置されたステージから玄関までは、それなりに距離があった。
屋外から玄関へは、雨や風など外気の侵入を防ぐため、ふたつに区切ったスペースを通り抜けて出入りするようになっている。
建物内部に入った目の前には、人の背ほどもある木化したラベンダーの植え込みが、屏風のように横一列に伸びていた。季節に関係なく花をつける飛鳥のラベンダーは、一年中、玄関のまわりに芳醇な香りを漂わせていた。
太い枝のようにたくましく育った茎や深緑の葉の間に、招かざる客の影が見え隠れしている。
玄関に近づくにつれ、空気を染めそうに濃厚になるラベンダーの香りと共に、その姿がだんだんはっきりと見え始めた。
――まさか?!
そう思った時にはもう、美緒は駆け出していた。
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更新:週一、月曜




