10月11日 宴の夜 2/14
「今回、新しく飛鳥の家族になるのは、二人。高校一年の百瀬廉くんと、中学三年の青柳瑠奈さんです」
歓迎の拍手が起こった。
「じゃあ、百瀬くんから、自己紹介お願いします」
美緒が促すように廉のほうを見る。
だが、頬を紅潮させ、夢見心地の廉の目には入らなかった。
飛鳥を目指して歩いてきた道の先に森を見つけた時、二年前ニュース番組で知っていたのに、息を飲んだ。
想像をはるかに越えた緑の豊かさ、その瑞々しさに打ちのめされた。
実際に木々を見上げ、直接に植物に触れて、その息吹に飲み込まれる気がした。
そして、緑色の絨毯を敷きつめたような苔を踏みしめて正面玄関に到着し、飛鳥の内部へ足を一歩踏み入れたとたん、「うわっ!」と思わず声が漏れた。
――ああ、これだ。
玄関のインターフォンで名前を告げて開いた扉の向こうには、まだ誰もいなくて、飛鳥の空気だけが押し寄せた。
アンテナを広げるように両手を上げると、あの独特の振動が腕から指先に濃密にまとわりついた。それは、館内を満たしている空気全体に溶け込んでいた。
ずっと想像してきたものに実際に触れ、しかも、それが想像以上だったことに、廉は大声で叫びたい気分だった。
その瞬間から、知恵熱を帯びた子どものように、廉の頭はぼおっとしたままだ。
「百瀬くん、こっちこっち」
自分を呼ぶ声に我に戻り、ようやく美緒が手招きしているのに気づくと、廉は慌ててステージに上がった。
広場が拍手にわく。
「みなさん、初めまして。百瀬廉です。えっと、埼玉県秩父市の家族学校からきました。高校一年です。僕は、二年前に番組で飛鳥を知ってから、ずっと、この日を待って……」
そこまで言った時、何かにふわりと取り囲まれたのを感じた。
何かが、廉を包み込みながらゆっくりと動いている。
しかも、気づいた時にはもう、それは廉の内側まで入り込んでいた。
――何だ、これ?
更新:週一、月曜




