10月11日 宴の夜 1/14
「お待たせしました。では、これより転校生歓迎会を始めます」
美緒の発声に、集まった生徒たちは、いっせいに広場の奥に設置された即席ステージのほうを向いた。
飛鳥の正面玄関から入ってすぐの場所は、屋外の広場のような作りになっている。
薄い水色をしたドーム状の高い天井に、ゆったりとした間口。奥行もかなりある。各種イベントや集会を開くには十分だ。
床は地面のような土色をしていて、何本かある廊下は広場から伸びた道のように見えた。
いつもは、広場を囲むように食堂やレストラン、カフェや売店が軒を並べ、テーブルや椅子も置かれている。が、今夜は、店はすでに閉まり、設置された即席ステージの前あたりには、料理を乗せた長いテーブルが並べられていた。
広場には百人ほどの生徒たちが集まっている。
転校生歓迎会は自由参加だ。広場に出向いてのリアル参加と自室からのバーチャル参加ができ、会の映像も流される。
「転校生二人には、美緒ちゃん手配のスペシャル料理が用意されてるんだって?」
「今朝獲れた魚料理らしいわよ」
「地植えのハーブをたっぷり添えて、か」
「うわぁ、美味しそう」
「天然もので、冷凍じゃないなんて、国賓級の歓迎だよな」
羨ましそうな声も聞こえるが、広場に集まった参加者にも、バイキング料理が用意されている。三年に一度の転校生歓迎会は、めったにない食事つきの集まりなのだ。
食糧不足は世界的に常に深刻な問題だ。国内外の運搬や物流が当てにできないため、国や地方行政も動きが取れず、すべてのビレッジは自給自足が原則だ。
だから、バイキングといっても、普通なら、選べるほど豊富なメニューは望めない。
ところが、飛鳥では、三棟ある建物の上層階にある温室も、各階で仕様の異なるハウスも、屋外の地植えのハーブも、不作になったためしがなく、今夜も、肉に見立てた植物性たんぱく質のメニューをはじめ、野菜料理やフルーツを使ったデザートが何種類も並べられていた。
転校生歓迎会に限らず、飛鳥では事前に出欠を取ることはしない。直前の欠席や追加出席も自由だ。重な食料を使う料理の準備に出席者数の把握は必然だが、それをしなくても、用意した料理の量と実際の出席人数ぶんの量とが、過不足なく、いつもぴったり合うからだ。
自然に動くことで全体の調和が保たれる――、それが色々なところに顕著に現れるのが飛鳥の日常だった。
更新:週一、月曜




