10月11日午後 ~ 廉 3/4
駅の出口で少年と別れると、廉は高台にあるロータリーから黎明の地を眺めた。
初めて目にする黎明市は、かつての市街地が水に浸かっている南の湾と、北の内陸側にある山々、山と湾の間の平地、そして、いくつかの半島から成る沿岸部とでできていた。
緑という緑が姿を消し、花はもちろん、木も草も見ることがなくなった今では、毛の抜けた犬のように赤茶色や黄土色の地肌がむき出しで、地形が露出している。暴走する自然になぎ倒され、崩れたり陥没した場所はそのまま放置されていた。
それは日本中どこでも同じだ。
基本的にビレッジでの暮らしは外出することがないため、屋外で危険なめにあうことは稀だ。人命が確保され、建物に被害がなければ、近隣地域がどう変貌しようとビレッジでの生活には響かない。生活に影響が及ばないものには、手をかける必然も余裕もないから、放置したままになる。災害の傷跡がぱっくり開いたまま打ち捨てられている場所には、朽ちていくものの殺伐とした悲壮感が漂う。
ところが、今廉の眼の前に広がる景色には、そんな悲壮感はなかった。
頭上には、見渡す限り、目に痛いほど真っ青な空が均等に広がっている。隅々まで同じように青く、端々まで同じように高い。
これは、とんでもなく、珍しい。
――この空のせいだろうか?
はるか上空まで突き抜けた清々しい青は、見た者の気持ちを明るくする。
端から端まで同じひとつの様子をしている空を見たのは、廉は生まれて初めてだった。
やむを得ず外出した時、いつもなら、廉は色の違うピースをはめたジグゾーパズルのような細切れの空を見上げ、どす黒い色を探す。黒いピースの下は天気が荒れているから、そこを避けるためだ。
だが、身についたその習慣は、今日は出番がなさそうだった。
少し遠くまで見回しても、目に入ったビレッジの数は十に届かなかった。
沿岸部にあるビレッジは、建設時に未来の海面上昇を見越して高い場所を選んだのだろう、半島の背骨にあたる山の尾根伝いに建てられていた。
半島の突端、山を越えて西側にある飛鳥は、ここからは見えない。
山のこちら、東側にある湾には、かつての市街地が沈んでいる。
そこから昔の瀬戸内海の海岸線までは――距離にするとかなりありそうだが――遠浅になっているらしく、遠くまで所々に、廃墟になったビルや建物が水面から姿をのぞかせていた。海に沈んだというより、海水に浸かっているといった風だ。
――ふむ。
廉は首をひねった。
画像や動画で見る廃墟は、総じてどこも似たりよったりだが、どうもここは何かが違う。
そう感じさせるものを探して、廉は湾内の景色を眺め直した。
更新:週一、月曜




