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母親に競りにかけられたら公爵の妻になりました  作者: たくみ


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45/58

45.一件落着

 ボロボロな宿屋にボロボロな食堂。今の自分には似合わないものばかりだ。食堂のボロボロの椅子に腰掛けながら辺りを見回す男。


 どいつもこいつも冴えないやつばかり。きっと自分が一番金を持っていることだろう。


 そう思うと気分が高揚する。自分はヤツらとは格が違うのだ。


 ガヤガヤッ


 ん?何か外が騒がしいな。どうせ喧嘩だろう。貧乏な街は品性がない奴らばかりだ。これからはもっといい宿に泊まれる。こんなことも最後だと思えば喧嘩も可愛いというものだ。


「失礼する!」


 カランカランッとベルが鳴り宿の店主に来客を告げる。そこには客……とは思えぬ軍服を着た厳しい顔をした男たちが数人いた。


 ツカツカと入ってくると宿屋の店主と何やら話をする軍人たち。


 なんだ?とその場は騒然となるが、男は余裕だった。どこのどいつだ?国に目をつけられるような阿呆は。自分のようにうまくやらねば。


「おい」


 ああ自分の頭の良さには自分でも惚れ惚れする。


「ねえねえ君だよ君」


 女を落とす才能もあるみたいだし、無敵だな。


「おい!」


「なっ!?」


 ぐいっと腕を掴まれ椅子から無理矢理立ち上がらされる。その手の主を見てさぁぁぁと青褪める男の顔。


「娼婦のモリーを知ってるな?」


「え、な、え……し、知りませんよ!」


 なんでなんでなんでなんで。


 男の頭の中はその言葉で埋め尽くされる。


「たいちょーう。部屋に大量の金貨ありました~」


「決まりだな」


 2階の自分の部屋の前で片手で女の腕を掴みもう片方の手で金貨の入った袋を掲げる軍服を着た男を見て自分の人生が終わったことに気づいた男だった。



~~~~~~~~~~



「権力様々だねぇ」


「はい!権力様々です!」


「ふふふふふふ……」


「はははははは……」



 レイチェルとルードのやりとりに侍女たちは呆れ顔だ。だがその顔には隠しきれぬ喜びも入り混じっている。


「お喜び頂けたようで私達も嬉しく思います奥様」


「ふふ……ありがとう。お疲れ様~」


 お礼の言葉を言うレイチェルの前に背筋を真っ直ぐに伸ばし後ろで手を組んで立つのは男を捕らえた軍服を着た男たち。ゆるかやな笑みを浮かべる様はなかなか目の保養だ。


 彼らは公爵家の私兵だった。レイチェルがレオンに事情を話し犯人を助けたいと訴えたところ彼らを使えと貸してくれたのだ。


「本当にありがとうございます!本当にありがとうございますー!」


 涙を流しながら隊長の手を握るルードだったが素っ気なく振り払われる。


「貴様の為ではない」


 その冷ややかな視線にはい、とルードの涙も引っ込む。


「何かご褒美をあげないとね。何か欲しいものとかある?」


「いえ、我らは勤めを果たしたまでですので。ですがそうですね……しいて言うのであればレオン様にお礼の一言でも差しあげていただければと思います」


「そうだね。お礼はちゃんと言っとかないとね」


「先程早く帰れるので一緒にお食事をと連絡がございました」


 その言葉に何やらニタニタと笑う部屋の中にいる公爵家の使用人たちに居心地が悪くなる。ああなんかムズムズするわ。


「では私たちはこれで」


 やり終えたとばかりにすっきりとした顔で後退る彼らにレイチェルは執務机に置いてあったあるものを掲げる。


「そうかー。ご褒美はいらないかー。ゲランの娼婦の為に頑張ってくれるなんてって感動したメフィストの姐さん方が無料サービス券をくれたんだけどなー」


 彼らの足がピタリと止まり視線はその券にロックオンされる。


「うーん、もったいないなぁ……でも他の人にもあげるわけにはいかないし捨てちゃ「奥様是非ください」」


 いつの間にか執務机の真ん前で横並びになり膝をつき両手を掲げる彼らたち。レイチェルは隊長にはいと笑いながら渡す。


 先程までのかっこいい姿はどこへやら、だらしない顔で下がる彼らに侍女たちは呆れる。男とは……本当になんなのだろうか。


 部屋の外から


『お前奥さんいるだろ!俺に寄越せ!』


『えー!でも確かに奥さん悲しみますよね。あー!でもメフィスト!行きてー!』


 そんな声が聞こえてきてレイチェルは微笑む。


「奥様、本当にありがとうございました」


 ガバッとルードが深々と頭を下げる。


「私は何もしてないけどね」


「いいえ。奥様がいなければやつは野放しでした。モリーの気も少しは晴れたでしょう。彼女はやられっぱなしは性に合わない性格でしたから」


 ブリブリしているようで気が強い女だった。ライバルの娼婦との掴み合いの喧嘩を何度目にしたことか。でもそんなギャップが可愛くて、夢中になった。


「完全に吹っ切れました。暫く恋愛はいいので、仕事を頑張ろうと思います!それが奥様とレオン様への恩返しにもなると思いますし」


 そう言った後顔を上げた彼の顔には笑顔が浮かんでいた。


 ほっこりした気分になる侍女たち。だが


「奥様?何か……?」


 レイチェル一人だけが微妙な顔でじーっとルードを見つめていた。戸惑うようにルードが声をかければいや……とこれまた歯切れの悪い返事に皆首を傾げるのだった。










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