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母親に競りにかけられたら公爵の妻になりました  作者: たくみ


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27.お茶会

 やって参りましたお茶会当日。


 姿見の前で身だしなみの最終チェックをするレイチェル。


 レオンが公爵夫人たるものアクセサリーくらい持っていろと用意してくれたネックレス良し。


 同上 耳飾り良し。


 同上 髪飾り良し。


 どれも美しい宝石がついており、キラキラと輝いている。売ったらいくらになるのだろうかなどと考えてしまうが貴族はそんなことを考えないのだろうか。


 アクセサリーと同じくレオンが用意していたオーダーメイドのドレスを鏡越しに見つめる。ピッタリジャストサイズ。サイズを測った覚えはないのだがなぜだろう。


 白に近い淡い紫色のドレスの上半身部分には一針一針苦労したと思われる細かい刺繍。スカートに触れればずっと触っていたいようなサラサラとした手触り。


 ああ、これを売ったら……もうよしておこう。


 鏡に映る自分の姿は我ながら見とれんばかりの輝く美貌。


 後ろに控えている侍女たちもぽけーっと口を開けて見つめている。1人レイチェルをまじまじと見つめるリリアと鏡越しにばちりと目が合う。


「どうかした?」


「失礼いたしました。その……いつものあれがないなと……」


 あれ?あれとは?


 頭をひねりかけたが閃く。


「今日は嫌だーは無しよ!気合い満タン!害虫駆除万歳!」


「害虫駆除?」


 気合十分のようで心強い限りだが何やら不穏な言葉が聞こえたような……


「ええ、任せなさい!」


 逞しくも胸をドンと叩くレイチェルなのだが何も任せてなどいないはず。何をする気なのか。


 胃が…………


 リリアの胃痛に気づくことなくレイチェルは女の戦場へ向かうため優雅にそして勇ましく足を踏み出した。




~~~~~~~~~~




 美しい香りに誘われ蝶がヒラヒラと舞う公爵邸の庭園。庭師たちの手により優雅に咲き誇る花々は見るものの心を魅了することだろう。


 お茶会が始まりはや十数分。


 レイチェルはごくりと紅茶を飲み込んだ。


 うーむ……。


 彼女の目の前では楽しそうに話す双子の皇女の姿。


 そして――


 彼女たちの隣には王女にちやほやされご満悦な様子のマリアがいた。事前に彼女が来ることは手紙が届いていたので知っていた。が、正直なところ来るかどうかは半信半疑だった。


 だって結局彼女は1ヶ月の間毎日公爵邸に足を運んでいたのにレイチェルに挨拶をすることはなかったから。こんな平然と目の前に座っていられるとは……よっぽどヤバイやつくらいだろう。


「レイチェル。とても素敵なアクセサリーね。レオンからのプレゼント?」


「左様でございます。バネッサ様」


「ふふ、流石ハーデス公爵家。とても高価な宝石を使っているわね。その辺の貴族では手が出せないものばかり。でも……とても似合っているわ」


 穏やかに微笑むバネッサがどういうつもりで言っているのかはわからないが悪意は感じない。


「どうせおねだりしたんでしょ?流石娼婦の娘、浅ましいですこと」


 相変わらずこちらのアリッサ皇女様は敵意剥き出しで清々しい。 


「レオン様は妻を着飾らせたいタイプのようです」


「本当ならマリアがつけていたものよ」


 え……?これらを……?


「私が妻だからこそ用意されたものだと思いますが……。このような華やかなデザインはマリアさんにはちょっと……」


 幼く可愛らしい雰囲気だが顔立ち自体は地味なマリアには小ぶりなアクセサリーの方が似合うだろう。彼女にはこんなでっかい宝石がついたアクセサリーを贈るやつはセンスがないだろう。


「そ、そういうことじゃないでしょ!?」


 確かにそのアクセサリーはレイチェル以上に似合うものなどいなさそうだ。マリアよりもレイチェルの方がそれらのアクセサリーは似合う。アリッサもそれは認めざるを得なかった。 


「マリアの方がレオンにふさわしいって言ってるのよ!さっさとレオンと別れなさいよ!」


 おお、なんたる直球。ちょっとびっくりしてしまった。レイチェルだけでなく側にいた侍女やバネッサ、マリアまで目をまん丸くしている。


「無理ですわ」


 その言葉に次はアリッサが目を真ん丸くしてレイチェルを見つめる。なんだろう。その信じられないと言いたげな目は――?


 ああ彼女はこんなふうに言い返されたことがないのだ。


 この帝国の大事な大事なお花として育てられてきたから。


 だがそんなこと自分の知ったことではない。


「そもそもこんなに美しい女を数ヶ月で男が手放すと思います?」


 こてんと首を傾げふわりと微笑めばアリッサの顔がカッと赤く染まる。


「じゃあ愛人になりなさいよ!娼婦の娘にピッタリでしょ!?」


 バンッと勢いよくテーブルを叩くアリッサ。カップが揺れ、中の紅茶もゆらゆらと揺れ零れそうになる。


「マリアさんが妻で私が愛人ですか?マリアさんが毎夜ベッドで涙を流すことにならなければ良いのですが……」

 

 上目遣いで挑発するかのようにアリッサを見れば何を想像したのか彼女の顔は茹でダコのように真っ赤に染まっている。


「っ!」


 ふふっと笑えばワナワナと震え始めるその身体。


「そ、そそそそそそそんな……こう肉体的な……身体で夢中にさせようっていうの……?………は、破廉恥だわ!」

 

 流石ゲラン育ちね!と怖い顔で吐き捨てるがまだ顔が真っ赤で微笑ましい。こんなことくらいで赤くなるなんてゲランでは考えられない。


 もっといじめてやろうかと口を開きかけたレイチェルだったが先に言葉を発した人がいた。


「身体で人を縛ろうとするなんて可哀想な人」


 レイチェルは彼女に視線を向ける。


「レオン様はそんなものに溺れる方ではないわ。彼は心を大切にする人だもの。レオン様の名誉を汚すのはやめてちょうだい」


 二人の間にバチッと火花が散る。


 初めてかもしれない。


 この人――マリアの目を真っ直ぐに見たのは。


 レイチェルの口角が僅かに上がった。


 





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