表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
母親に競りにかけられたら公爵の妻になりました  作者: たくみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/35

16.利用するべし

 ムーリャとマヤが顔を青褪めさせながらトボトボと部屋から出ていき、その場はシーンと静まり返る。


「お金はあるんだし妾にしてあげれば良かったのでは?」


「あんな女達は御免被る。ところで聞きたいことがある」


 真っ直ぐに自分を見つめる強い眼差しは真剣で、1カ月放置された仕返し心からだろうか、無性にからかいたくなる。


「あら、私に興味が?」


「ただ聞きたいことがあるだけだ」


「こんな美女に興味がないとは、もしやあっち系?」


「「…………………………」」


 お互いになんだこいつと見つめ合う2人。


「……なぜ自分の言葉で私に伝えなかった?リリアに、他人に全てを任せるのは感心しないな」


「私に必要なのは信じてもらうことでしょう?」


「であれば尚更自分で語るべきだ。言葉は力だ」


 真っ直ぐ強い視線がレイチェルを貫くが彼女は鼻で嗤った。


「……なんだ?」


「綺麗事だと思って」


 ふふ、と堪えきれぬ笑い声が室内に不気味に広がる。


「だって公爵様私の言葉信じます?言った言わない。やったやってない。そんなものを証明するのは結局人の言葉のみ。いかに筋が通っているか。じゃあ両方ともそれらしかったら?結局自分が信用する者の言葉に耳を傾けるものでしょう?」


「……君は私の妻だ」


「妻だから信じると?想い合っているわけでもない。一日も共に過ごしたこともないのに?よくそんなお綺麗事を言っていてよく国が支えられますね?」


 挑発的に物申せばレオンの顔色は変わらなかったが部屋の中にいる使用人たちから怒りのオーラが立ち昇る。


 す……とレオンの右手が上がると不穏な気配は消えた。


 よおく教育されている。流石公爵が身近に置くだけの者達だ。


「確かに君の言う通りだな」


 ギシリと椅子から立ち上がるとレイチェルの目の前まで足を運ぶレオン。互いの目と目が交錯する。


「リリアの言葉だから信じた」


 その言葉に思わずくすりと笑ってしまう。訝しげな顔をするものだから余計に笑ってしまう。


「あなたに恋焦がれている妻であれば涙を浮かべていたかもしれないなと思いまして」


「……幼き頃より仕えてきた信用できる使用人の言葉だから信じた」


 ぶはっと吹き出すレイチェル。


 わざわざ言い直さなくても良いのに。そもそもリリアの言葉ならあんな女達の言い分より信じるに決まっていると思ったからリリアに全て任せたのだから。


 それにしてもこの仏頂面の男が妻を気遣うとは――可愛いところもあるじゃない。


「……んんっ!ところで随分とリリアと仲良くなったようだな」


「えー……嫌われてますよ?この娼館街出身のクソ女がって」


 ピクリとリリアの指が動くが何も言うことはなかった。


「それが本当かどうかはさておき……そう思っていると君は思ったのに、なぜリリアに全てを託した?」


 リリアがレイチェルを追い出そうと嘘を言う可能性の方が高かったのではないのか。


「あなたへの忠誠心は本物っぽかったから?」


 リリアのような主人に忠実な者は自分が良かれと思うことはしない。そりゃあ物申すこともあるだろうが、主人の留守中に主人が直々に選んだ嫁を追い出すようなことはしないだろう。だってそれは主人の意に反することだから。


 それにリリアがあの2人を見るときの目は自分を見るとき以上に嫌悪に塗れていた。仕事ができないくせに努力するわけでもなくただひたすらレオンに恋焦がれ、それが叶うと思っている愚か者なんてリリアからすれば迷惑以外の何者でもなかっただろう。


 リリアなら自分ではなく彼女たちを追い出そうと考えると思ったのだ。


「人間は己の力を過信するものだ。傲慢というべきか自分の言葉を信じてもらえると疑わない。見事な策略だ」


 褒められているはずなのに全然嬉しくない。なんか上から目線だしムカつく。


「……昔ゲランでね、すっごい性格の悪い女がいたんですよ」


 なんの話だと首を傾げるレオンだったが腕を組み話を聞く姿勢に入る。


「でその女にすっごいお金持ちのボンボンがお客としてついたもんだから調子づいちゃって他の女の子たちへの暴言や暴力が酷いことになっちゃったんですよ」


 特に自分より可愛い子たちの顔を殴りまくっていた。店主も怒ってはいたが結局は稼いだもの勝ちの世界である以上あまり強くは出られなかった。


「であまりにも酷いから追い出してやろうとした姐さんがいたんですよ」


「ほお」


「ボンボンに直接言っても信じずでね。現場を見せようとしても、このボンボンは姐さんの思うように動かないわけですよ」


「恋の奴隷と化していたわけか」


「「「……………」」」


 え?今恋の奴隷とか言った?なんか似合わない。ちょっ、寒っ。部屋の中に寒々しい空気が漂う。

 

「でそこで姐さんはボンボンの側近を利用したんです」


「色仕掛けか?」


 意外と食いつくわね。ゴシップ好きなのかもしれない。


「美人なお姉さんに涙ながらに助けてとお願いされたら頑張る男は多いんですよ?」


「美人からの願い……ハニートラップだったらどうする。理解しがたいな」 


「でしょうね」


 無駄なことが嫌いなようだから無駄な相槌をうたずに黙って聞いていればいいのに。


「でその側近は見事性悪女の凶行現場を見せることに成功し女はゲランから消えましたとさ。その人が信用する人をうまく利用した方が物事はうまくいきやすいということを私は学んだわけです」


「人任せにしたおかげで性悪女が追放され店に平和が戻ったというわけか」


「適材適所って言ってくださいよ。というか追放になんてされてないですよ」


「「「???」」」


 今なんと?レオンだけでなく室内にいて話を聞いていた使用人たちも首を傾げる。

 

「恋の奴隷君はこんなところで身体を売っているから心が荒んだんだな。僕が助けてあげなければと性悪女をお買い上げしていきましたよ」


「なんと愚かな。頭が腐ってたんじゃないか?」


 レオンが目を見開く。


「そう。愚かすぎた脳内お花畑のボンボンと性悪女は事業に失敗して仲良く首をくくりましたとさ」


「そこはありきたりだな。もう少し話を捻ったほうが面白いぞ」


「実話ですからね。捻る必要ないですからね。ただ信じさせたいときにはその人が信用する人を利用しろってことを言いたかっただけですから」


「ふむ。君の作戦は見事だった。うまくいって何よりだ」


 なんでこの人は他人事なのかな?レイチェルは引き攣りそうになる顔を懸命に堪えた。



 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ