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3章 14

早馬のおかげか、王城へ近づくにつれ騎士や護衛が多くなる。

馬車降り場に到着するやいなや、アマーリエ様は担架で運ばれすぐに処置を受けた。

臓器に別状はなさそうだが、出血量が多いせいか、寒気と震えが出ているようだ。

顔も血の気がなく、白くなっていた。



王国側の護衛たちは、急ぎ報告に走った。 

トネリ様たち皇国側の面々はは陛下が用意した部屋に通される。

皇国の使者も憔悴している様子なので、ゆっくり休んでから、話し合をするそうだ。



私は別室でお母様と会った。

お父様は会議のため来れないが、事件を聞いた王妃陛下が、呼んで下さったそうだ。

震える手でぎゅっと抱き締められ、心配をかけていたことを実感した。

お母様の温もりで、緊張の糸が切れたようだ。

どっと力が抜け、疲労感が襲ってきた。

部屋の長椅子に横になると、お母様は幼子をあやすように背中をトントンしてくれた。

安心して、気がつけば夢の中にいた。



その頃、貴族たちが集められ、事件を告げられた。

反対派の貴族たちはアマーリエ様が負傷したことに動揺していたらしい。

アマーリエ様が先発団の中に紛れていたことに対する驚きもあるが、

それ以上にアマーリエ様を害してまで、婚姻を阻止する覚悟はなかったようだ。




目が覚めてしばらくすると、聞きつけたパウラ様とクラウディア様がが駆けつけてくれた。

二人とも私が無事であることに安堵していたが、やはり一番の心配はアマーリエ様だ。

 

「私のせいかもしれません。」

 

ポツリと呟くクラウディア様に、私たちは怪訝な目を向ける。

 

「お姉様に気が付かれたのかもしれません。

 一緒に出掛けたいから王宮や公爵家に出掛ける日を教えて欲しいと言われて。

 一昨日から使者団の本隊がが出発するまでの間は暇だと伝えたのです。

 もしかしたら、それで…。」


瞳を潤ませ、自責の念に駆られるクラウディア様。

お母様がそっと寄り添う。  

 

「たしかに頻繁に出入りしていたのに、出発日前に出入りしなくなるのは不思議に思うかもしれませんわね。

 ましてクラウディア様のお姉さまは、ご婚約者がいらっしゃるのでしょう?

 嫁入り道具もドレスもギリギリまで打ち合わせするものと考えていらっしゃったら、一週間前に打ち合わせが終わるのは不自然に感じたかもしれません。」

 

ますますうなだれるクラウディア様に掛ける言葉が無い。

お母様は労わるように肩を抱き寄せ、安心させるように語り掛ける。 



「でもね、貴女の心労は、ここにいる誰よりも大きいのよ。

 パウラ様もテレーゼも、家を挙げて国交樹立にも、アマーリエ様の婚姻に対しても賛成派でしょう。

 

 でもあなたの家は違う。


 もとは反対派で、今は表立って反対しないものの内心は分からないし、親族や派閥の家々は反対派。

 家の中でうかつなことは言えない。

 パウラ様やテレーゼと出かけても、友達と何をしたというような他愛もない話をご家族とすることもできない。


 そのような重責の中、今までよく耐えてきたわ。」


優しい言葉にクラウディア様の涙腺が緩み、頬に涙が伝う。

儀式を成功させても、アマーリエ様の婚姻関連で尽力しても、クラウディア様はご両親から労わられたことは無い。

クラウディア様自身も功績を言いたくても言えない、ご両親も家内に反対派が潜んでいることを鑑みて表立って褒めることも避けているのだろう。



私やパウラ様は、家で儀式のことやアマーリエ様の話をすることができた。

時にアドバイスを貰ったり、応援してもらって頑張ろうと思えた。

 

でも、クラウディア様は家族に秘密にしなくてはならなかった。


国家行事を内緒にしなくてはならないのだ。

相当なストレスになっていたのではないか。

もっとクラウディア様に寄り添うべきだった。 


パウラ様も声をかける。

 

「先発隊が居ることは分かっていたのですから、アマーリエ様とは関係なく、純粋に先発隊を狙ったのかもしれませんわ。

 それにまだ、国内の反対派が主導したのかさえ分かりませんもの。

 クラウディア様の責任ではないわ。ね、テレーゼさん?」

「そうですわ。武力を用いた者だけが責を負うべきです。」

 

安心したように泣き出すクラウディア様。


パウラ様はハンカチを差し出し、お母様はそんなクラウディア様の背を撫でる。


私の友人たちを大切にしてくださるお母様の姿を見るのは、嬉しいような誇らしいような気持ちだ。

私が居ない間、二人がお母様を慰めてくださるのも頼もしい。

戻ってきたころには、三人が親子のようになっていそうだなと想像し、ふと笑みがこぼれた。

 

 

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