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3章 6

パウラ様とクラウディア様に、留学の連絡すると、二人とも自分のことのようにたいそう喜んでくれた。

きっとご自分も、家にとらわれずに済むならば皇国に行きたかったであろうに。

今回の一連の出来事、何よりも得難い友を得ることができたのが、一番の成果なのかもしれない。


お二人は公爵家でお祝いのお茶会を開いてくれた。


打ち合わせで行き慣れてきた公爵家だが、今回通されたお部屋は初めてのお部屋だった。

明るい色味の調度品、ティーテーブルには小花のアレンジメントが飾られておりわくわくするような雰囲気のお部屋だ。

三段のケーキスタンドには、色鮮やかな一口サイズのケーキとショコラが添えられている。


式典の慰労会とテレーゼさんのお祝いを兼ねて華やかにしてみたの、とはにかむパウラ様が手づから選んでくださったらしい。

芳醇な紅茶の香を楽しみながら、式典の振り返りや留学についての話をした。


「そういえば、サミュエル様も一年ほどヤズマ皇国へ向かわれるそうね。」

「そうなのですか? お父様からは何も聞いていません。」


あら、と意外そうな顔をするパウラ様。

クラウディア様もご存知だったようで、瞬きをしていた。

いまの仕事内容からしても、使者として向かわれるだろうとは思っていたが、一年滞在するとは初耳だ。

 

パウラ様は微笑み、話を続ける。


「テレーゼさんに伝え忘れたのかしら。

 道中、知った方がいるのは心強いわね。

 行きはアヤメさんやソウビさんも一緒ですものね。」

「えぇ。お二人とも、ヤズマ皇国では名家のご令嬢なのですよね?

 皇国でもアマーリエ様に近侍し教育係をされるのでしょうか?」


「通いか居住を共にするかは分からないけれど、皇国でも側にお仕えしてくださるそうよ。

 テレーゼさんも安心ね。」

「教えてくださる方がいるのは心強いです。お二人とも、とても優しい方ですし。

 問題は、王国の衣類を纏う際の髪型や服装なのです。」


前世の記憶があるせいか毎日の身だしなみに他人の手を借りることに抵抗があり、令嬢らしくはないが出来ることは自分で行うようにしてきた。

簡単なまとめ髪や自室でくつろぐ簡易ドレスならば一人でも着ることができるようになったが、

きちんとしたドレスを着る際のコルセットや、豪華なヘアセットなどは一人では出来ない。


パウラ様も、たしかに、と呟きながら頷かれる。

そんな様子を見て、クラウディア様が遠慮がちに口を開く。

 

「アマーリエ様の侍女やメイドが手伝ってくださるのでは?」

「一度二度ならまだしも、頻繁にお手伝い頂く機会があるならば申し訳なくて。

 かといって留学の身で、皇国の状況が分からないのにメイドを何人も連れていくのも気が引けますし。」

「それもそうですわね。

 皇国となればメイドや侍女本人、家族の理解が無ければ連れてはいけませんものね。」


家から付いてきたいと言ってくれるメイドもいるだろうが、経験の浅いメイドたちではアマーリエ様の近く、ひいては皇国の偉い方々にお会いする際に心配がある。

経験豊富なメイドや侍女は家族がいたり、2か月の旅程がきついだろう。

クラウディア様と話していると、手を顎にやり少し思案に耽っていたパウラ様が口を開く。


「ねぇ、リサを連れていってくださらない?」

「リサさん…。お針子たちの取りまとめ役を務めて下さった、公爵家に仕えていたリサさんですよね?」


記憶をたどりながら尋ねれば、パウラ様はこくりと頷く。

クラウディア様も合点がいったようで、あぁ、あの方と呟かれていた。


「そうよ。覚えていてくれて嬉しいわ。

 彼女ね、皇国で服飾を色々学びたいみたいなの。職人として使者団に混ぜて貰おうかと考えていたのだけれど、テレーゼさんのメイドか侍女として連れていけないかしら。

 彼女、お針子だけどメイクもヘアセットも上手なのよ。

 身支度はリサにお願い出来るし、リサも居住場所が安全、テレーゼさんに仕えればアマーリエ様やアヤメさんたちから最新の衣装を学ぶ機会も増えるわ。」


公爵家のお針子として礼節も身に着けているリサさんならば、皇国で我が国の清掃をしなければならない場合に相談に乗ってもらうこともできるし、アマーリエ様の元を訪れる際に付き添ってもらうにもマナーを心得ており安心だ。

願ってもない提案だが、私のために時間を割かせてしまうことが申し訳ない。


「よろしいのでしょうか、リサさんの学ぶ時間が減りませんか?」

「ヤズマ皇国に慣れてきたら、テレーゼさんがメイド無しで活動するときに自由時間をくだされば、自分で学びたいことを学びに行くと思うわ。

 身支度以外はテレーゼさんも問題なくできるのでしょう? 伯爵家からのメイドに身支度以外をお願いするという方法もありますしね。

 

 リサも、職人たちの住まいの詳細も皇国の住宅環境も分からないから、やっぱり不安はあるみたいなの。

 テレーゼさんの近くなら、安心して送り出せるわ。」

 

我が国が皇国の使者や学者たちをもてなすように、皇国でもそれ相応の用意はしてくださっていると思うが、それが合うかどうかは分からない。

皇国のお針子たちの男女比もわからず、不安もあるのは十分理解できた。

パウラ様は紅茶を一口飲んでから続ける。


「帰国してからヤズマ皇国絡みの事業に協力してもらいたくて、留学中のお給金は我が家で出す予定だったから、その辺りも気にしなくて大丈夫。

 国からも職人や学者たちの滞在費を出すそうですし、テレーゼさんが金銭面で心配することはなにも無いわ。」

「リサさんが居てくださるのは有難いのですが、私の一存では決められません。父に確認してみますね。」


リサさんが居てくださるのは心強いが、留学する身でメイドや侍女が複数居るのも問題かもしれない。

お父様たちに判断を委ねることにした。


 

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