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3章 1

穏やかな陽射しが降り注ぎ、澄み渡った空には雲が一つもない。

お父さま、お母様と馬車へ乗り込み王宮へと向かう。


「いよいよね、テレーゼ。よく頑張ったわ。」

「ありがとうございます、お母様。

 お母様も、ご婦人方のドレスや装飾品の取りまとめや指導、ありがとうございました。」


ついに使者の方が王宮を訪れるのだ。


国についたことは早馬で聞いていたが、皇国側からの依頼で表立った歓迎は避けた。

二か月にも及ぶ旅程のため、身支度がきちんと整えられていないからだという。

第一印象は大事だと、国王も賛同した。

数日滞在して状態を整え、王宮へと向かう道中で庶民が歓迎をすることになっている。

アヤメさん、ソウビさんも支度の手伝い等で数日前から公爵家を離れている。


「道中の様子が気になるな。人は集まっているようだが。」

「皆がどのような反応を示すのか見たいとことですが、王宮で待っていなければならないのですから仕方ありませんわね。」


お父様たちの会話を聞き身を乗り出すようにして外を見ると、扇を手にした市民の姿が見えた。

その表情に、憎しみもおびえもない。きっと受け入れられるだろう。

扇やお守りを売る露店に加え、飲食店も並びお祭りのようだ。


にぎやかな声を聴きながら王宮へ着くと、先ほど道中で見たよりも多くの人々がひしめいていた。

「もうすぐかな?」  「蛮族って聞くけど、どんな人なんだろうねぇ。」

「この扇とかヤズマ皇国のものを真似したって聞いたよ。結構細かいデザインだしさ、手先が器用な人が多い国なのかな。」

「ここに来るまで二か月かかるらしいな。貿易しようにも食べ物は無理か。」


お父様もお母様も、柔らかな笑みを浮かべた。

「これなら安心ね。警備はしっかりしているけれど、使者の方々が道中に何かあったらと少し不安でしたの。」

「反対していた貴族たちも、表立っては何も言ってこないからな。

 腹の中は分からないが、公衆の全面で何かするわけにもいくまい。

 今日は大丈夫だろう。」


クラウディア様のお父様が賛成派に回ったことで、ヤズマ皇国との交易や国交樹立に反対していた貴族たちは反対活動をしなくなった。

でも、簡単に考えを変えるとは思えない。

一部の国粋主義者を除いては、使者たちの様子を見て、そして交易で利益が得られることを確信した段階で意見を変えるだろう。

今日は様子見と言ったところだろうか。



王宮の中は、すでに到着した貴族たちがひしめいていた。


デザインから携わった肩飾、アクセサリー、ドレス、扇。

和洋折衷のデザインは、若い世代にはすんなりと受け入れられた。

皆お互いのデザインを鑑賞しあっている。

保守的な方々には難色を示されたが、色味をそろえるなどの協力を仰ぐことはできた。


「あら、テレーゼさん、到着されたのね。こちらにいらして!」

クラウディア様に呼ばれて向かうと、令嬢たちがパウラ様を囲み談笑していた。

十二単に着想を得た、裾や襟元に何色もの布を重ねたデザインのドレス、一般的なシンプルなドレスに帯を飾り結びにしたドレスなど色とりどりだ。

着用は講習会を開いた買いがあったようで、正しくきれいに着ている。

私に気づいたパウラ様が、私を輪の中に誘い込む。

「テレーゼさんがたくさんのアイディアを出してくださったのよ。」


「素晴らしいですわ、テレーゼ様。」

「とても気に入りました!今回はお借りしましたけれど、商品化されたらぜひオーダーしたいわ。」

「皇国の布が手に入るようになったら、もっと気軽に着れるようになりますものね。」

令嬢たちに口々に褒められ、面はゆい反面なんだ居心地の悪さを感じた。

前世の記憶をもとに話しただけで、新しく自分で考えたわけではない。

それを伝えることはできないので、ほほ笑みで返す。


「ありがとうございます、皆さまに気に入って頂けて嬉しいです。

 着付けも問題なくできているようで、安心しましたわ。

 皆様がメイドや侍女を講習会に参加させてくださったおかげです、ご当主さまにも御礼をお伝えくださいませ。」


到着するまでの時間、大人たちも思い思いに会話をしている。

私もそのまま令嬢たちの輪に残るが、よくみればクラウディア様の周りには今回のために用意されたドレスを着ている令嬢が少ない。

私の視線に気が付いたのか、クラウディア様が声を潜める。

「ご本人たちは、着たいとおっしゃって下さっているのですけれども、どうしても家の許可が下りなかったのですわ。」

「やはり反対派ということでしょうか。」

「ヤズマ皇国に反対する家だけではなく、王女殿下にお借りするということに反対している家もありましたの。

 でもせかっくのドレスですもの、後で皆で交換していろいろ着られるようパウラ様がアマーリエ様に相談してくださるそうです。

 もちろん、大人たちには内緒ですわ。」


いたずらっ子のように笑うクラウディア様と、それに同調して微笑む周りの令嬢たち。

親の意向が強いと、着たい物も着れないのだ。

今回に限れば金銭的な負担も何もないのに、ドレス1つ自由に選べない。

親と子供は違うのに、親の意見に従わねばならない不自由さを感じる。

 

それを思うと、勝手に婚約者を決められたり留学に反対されたりはするものの、我が家はこの世界においては自由な家にはいるのだろうか。



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