2章 12
「今度は何を作るのかしら?」
パウラ様が興味深そうに問いかける。
「パウラ様、私がアマーリエ様からお預かりした木箱を覚えていらっしゃいますか?」
クラウディア様は、木箱?と怪訝な顔をしていたが、
パウラ様が然り気無く説明して下さる。
「えぇ、ヤズマ皇国の布の切れ端が詰まった箱よね。
アマーリエ様のドレスなどを作ったときの余り布ですから、上質なものだったわ。
その布を使うのね?」
「はい、それを使って、お守りを作ろうと思いますの。」
二人は目を瞬かせる。
「「お守り??」」
クラウディア様の胸元のペンダントを見ていて、思い付いたのだ。
前世の神社で売っているようなお守りは、この国にはないが
各自が、自身の心の拠り所とするお守りならばある。
それを取り入れられないだろうか?
「形は、いくつか考えております。
小さなものでしたら、クラウディア様のペンダントトップのようなサイズで、ペンダントとして使えるのもよろしいかと。
もう少し大きなものはカバンにつけたり、部屋に飾るのも良いですわね。
夢や目標、励ましの言葉などを書いた紙を中に入れても素敵ですわ。」
神社のお守りは、何も書いてはいないらしいけれど。
紙は自分で書いても良いし、親が書いて子に渡したり、友達同士の使用を想定している。
「あら、でしたら中に守護石を入れても効果がありそうね。」
ニコニコと笑うパウラ様の言葉に、私はハッとする。
守護石、いわゆるパワーストーンだ。
誕生日だったり、自分の欲しい効能で選ぶ石であり、見た目がきれいなことから富裕層には人気がある。
これこそ、お守りではないか。
「素晴らしい案です、パウラ様!
富裕層には守護石を入れとして販売しても良さそうですね。
守護石を持てない方々には、お願い事を書いた紙が依れないよう、硬い土台もいれたいですわね。」
私の言葉に、クラウディア様は驚いて声をあげる。
「もしかして、庶民にも販売するおつもりなの?貴重な布なのでしょう?」
私とパウラ様は、顔を見合わせる。
そう、これが本来の貴族の反応だ。
アマーリエ様のような考え方が少数派である。
ただでさえヤズマ皇国を蔑む貴族たちが、
アマーリエ様の庶民にも等しくヤズマ皇国に親しみを持って貰いたい、という考え方に反対するのも用意に想像出来る。
「国全体でヤズマ皇国への蔑視を無くし身近に感じて頂きたい、といいのがアマーリエ様のご意向なのです。
たしかに高価な布ですが、貴族や一部の富裕層ならば、交易が活発になれば手に入れられますわ。
私たちが独占することよりも、多くの人々が手に取る機会を作らなくてはならなくてよ。」
パウラ様の話を聞き、クラウディア様は怪訝な顔で首をかしげる。
「なぜですの?
交易をするのに、庶民の意思など関係ないではありませんか。」
クラウディア様の意見は、貴族ならば至極全うだ。
政治も交易も、すべて権力者が決めること。
貴族言えども男爵のような弱い立場の貴族には、決定時に意見を述べる機会さえない。
いわんや、庶民をば。
遠方の国には大変だから交易のための荷運びをしたくない、などの個々の意思はあるだろうが
庶民全体の意志が反映されることは、ほとんど無い。
上位貴族が納得しそうな理由を探し、 私はゆっくりと、クラウディア様似に語りかける。
「クラウディア様のおっしゃりたいことは、理解しております。
貴族、それも上位貴族ならば、当然の考え方です。
ですが、お考えになってくださいませ。
蔑視している国と交易をしては、経済的に失敗すると思いませんか。
蔑んでいてはヤズマ皇国の品が売れないでしょう?
貴族が購入したところで、悪口のように広まるだけです。
大枚をはたくからには、人々から羨まれてこそ、ですわ。」
クラウディア様の表情を見ても納得しきれては居ないようだが、こちらの主張を分かっては下さったようだ。
小さく頷いてくれた。
国内における奴隷や被差別民こそ居ないが、職業差別をする貴族はいるし貧富の差もある。
人権意識も人種差別も何もない時代だ。
アマーリエ様のご婚約の話をしても良いならば話は早いのだが、使者との謁見までは極秘である。
秘密を抱えたまま、様々な人を巻き込み話を進めていかなければならないので、これから先も気苦労が多そうだ。




