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2章 11

パウラ様をお誘いして、クラウディア様と共に昼休みにラウンジへ向かう。

公爵家と侯爵家のご令嬢が一緒だからか、なにも言わずとも個室に案内された。

これで安心して話ができる。


はじめは当たり障りのない会話をし、食事を楽しむ。

いつ本題に入るか少々気は張るが、クラスメートたちが耳を大きくしている教室に比べたら、ここでの会話はとても楽だ。


頃合いを見て、パウラ様が口火を切る。

「クラウディアさん、ヤズマ皇国の使者がいらっしゃる際には、貴女もヤズマ皇国風のドレスを着てくださるのでしょう。とても心強いわ。

 貴女のお陰で、ドレス着用を承諾してくださった家もあるのよ。」


保守派の侯爵家令嬢であるクラウディア様が着用するなら…と、

しぶしぶながらも子女にヤズマ皇国風ドレスを着用させることを認めた親もいるようだ。

もちろん、公爵家のパーティーで、アマーリエ様とパウラ様が着用したことも大きい。


クラウディア様は嬉しそうに笑った。


「それは存じませんでしたけれども、お役に立てて光栄ですわ。

 ですが私、もっとお役に立ちたいのです。

 私もパウラ様と同じように、表だって働く立場にないからこそ、

 政治に関与しながら実力を発揮されているお二人を見習いたくて。」



侯爵家に生まれた令嬢ならば、原則働くことは無い。

王女の話し相手、王女と年が離れていたら教育係として召されるくらいだろう。


公爵家のご令嬢として生きてきたパウラ様には、クラウディア様の言葉がとても響いたようだ。

クラウディア様を見つめ、しっかりと頷いた。


「私がしていることは、政治に関与、といえるほどではありませんの。

 でも、貴女の気持ちは痛いほどわかりますわ。

 私も、外交の大きな転機を迎える場を取り仕切るアマーリエ様と、

 アマーリエ様の期待以上の働きをするテレーゼさんが、とても眩しく見えますもの。」


私は慌てて否定する。


「いえ、私など後先考えずに思い付いたことを口にしているだけですわ。

 それを形にするには、パウラ様のお力が必要ですもの。」


クラウディア様は、羨ましそうな表情を浮かべる。

パウラ様はありがとうと呟き、クラウディア様と目を合わせる。


 「クラウディアさんにもお力添え頂けたら、嬉しいですわ。

 どのようなことをなさりたい、とかご希望はございまして?」


クラウディア様は、胸元のペンダントをきゅっと握りしめる。


「いいえ。なにかをしたいとは思うのですが、何ができるかサッパリ分からなくて。

 一応、侯爵家令嬢としての学ぶべきことは学びましたけれども、裁縫も歌も語学もダンスも、今回は必要無さそうですから。」


悲しげに目を伏せるクラウディア様に、パウラ様は同調して頷く。


「ヤズマ皇国の言葉は、令嬢教育では学びませんものねぇ。

 謁見より後にダンスパーティーも開きますから、本番で活躍していただけますわ。

 歌と裁縫は…どうかしら、テレーゼさん?」


私は、クラウディア様を見つめる。

何かをしたいという気持ちは、痛いほどわかる。

さして親しくない私に話しかけてくれた勇気に応じたい。

何か案はないだろうか。


クラウディア様の握りしめるペンダントを見て、ふと思い付いた。



「裁縫って、縫うのがお得意でいらっしゃいますか? 刺繍も?」


クラウディア様は言葉を選びながら、応じる。


「令嬢教育での裁縫といえば刺繍でしょう、得意ですわ。

 小さなポプリくらいなら作れても、ドレスなどを縫うのは無理ですの。」


「でしたら、一つ考えているものがありますの。

 アマーリエ様にお見せする試作を一つ、作って頂けませんでしょうか?」


不思議そうな顔をしながらも、クラウディア様はしっかりと頷いてくれた。

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