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第14話 春の足音

久し振り過ぎですね……

やっと仕事が落ち着いたので、勢いで書いてみました。

このまませめて季節が追い付くまで一気に書きたいですが……


とりあえず、今回は3月になります♪

「……う~、寒い……暦の上では春と言っても、まだ寒いよね……」


 一年で一番寒いのが二月であり、その翌月である三月は当然ながらまだ寒さは残っている。 


半年先が九月である事を思えば、なるほど秋と言いながらも残暑が厳しい。


 それでも、寒さのピークが過ぎて陽も高くなってくると、季節は春への準備を始める。


「こんな寒い日には、やっぱり日本酒を燗で頂きたいものね。 だったら魚かなぁ……」


 若葉はすっかり魚の口になってしまい、スーパーへと足を運ぶ。

 スーパーの入り口には季節の野菜が陳列されている事が多い。 この店も例外ではないようだ。 白や茶色が目立っていた最前列の旬の野菜たちが、緑へと変わっていた。


「あ、菜の花だ。 菜の花も日本酒に良いわね…… そして、新玉ねぎね♪」


 新玉ねぎと玉ねぎは別に品種が違うわけではない。 普通の玉ねぎは収穫後に乾燥をさせているのに対して、新玉ねぎは収穫後すぐに出荷されている。 乾燥させてないので水分も多く、辛みが少ないのが特徴である。

 菜の花と新玉ねぎを手に取り、そのまま奥の魚コーナーへと進む。

 通りがかりに焼きそばや豆腐なんかもかごに入れながら。


「鰆も増えてきたわね。 寒い寒いとは言いながらも、着実に春の足音が聞える様な気がするわ。 ……でも、鰆は冬の方が美味しいけどね」


 魚偏に春と書いて「さわら」。 文字通り春の訪れを告げる魚と言われているけれど、他の魚同様に冬前の方が脂が乗っていて、焼き魚にするなら冬の方が良い。

 それでも季節ものの代表格と言える。


「ん~……鰆のホイル焼きと菜の花のお浸し、いや、からし和えにしようかな。 だったら燗じゃ無くてが良いかも。 何か良い銘柄が残ってたかな?」


 着々と献立を頭の中で作り上げながら家路を急ぐ若葉だった。



「さてと、お風呂の追い炊きをしてる間にささっと下拵えをしちゃいましょうかね」


 ピッとおふろの追い炊きボタンを押したら、時間との戦いだ。

 だがしかし、寒い状態からの追い炊きは時間がかかるので、夏と違って随分とハードルは低い。


 まずは買って来た鰆の切り身に塩を振って、水分を抜く。

 このひと手間が実は重要で、水分を抜く事で臭みが抜けるのもだが、そもそも身崩れしやすいのを引き締める効果もある。


 そして、一緒に湯豆腐もするつもりなので、鍋にお水と昆布を入れて火を掛けておく。

 沸騰はさせたくないので、中火より弱い程度だ。


 ひと手間別の料理の準備を挟んだが、今度は新玉ねぎをカットする。

 下に敷くのは大きめに、上に乗せるのは薄く。

 普通の玉ねぎに比べて柔らかさもあり、火が芯まで入っていなくても辛さが無いので厚切りの方が美味しく頂ける。 上に乗せるのを薄くするのは、美味しい玉ねぎの果汁を鰆に染み込ませたいからである。


 サラダにするわけじゃないので、水に晒したりせずにそのまま置いておく。


 あとは、一緒に入れるエノキダケをカットする。

 上に乗せるのは先の方を使う。 石突付近ギリギリまでの根の方はざっくりとほぐしておく。

 これも大事な仕事をしてくれる食材だ。


 この頃には鰆の身が汗をかいている。

 そのままキッチンペーパーでしっかりを水分を拭って、ホイル焼きの準備をする。


 ホイルに厚切り新玉ねぎ、エノキダケの根の方、鰆の切り身、エノキダケの先の方、そしてたっぷりのスライス新玉ねぎを乗せる。 その上にバターを置いてホイルを閉じる。

 これをトースターにスタンバイしておく。


 そして、菜の花は……湯掻いてからカットをするので、このまま待機となる。


「まだ、お湯は沸いてないんだよなぁ……手持ち無沙汰だ」


 とは言え、これ以上待つにはお腹が空いているのも事実なわけで。


「身体を洗っているうちに追い炊きも終わるでしょ! 入っちゃおう」


 電気ポットのスイッチを入れて、お風呂に入る事にしたらしい。



 なお、サービスシーンはないのであしからず……



「ふぅ……さぁ、急いで作ろう!」


 ホイル焼きをセットしてあるトースターを一五分ちょっとにセットして過熱を始める。

 同時に湯豆腐の鍋に再度火を掛けて、豆腐を入れる。


 それぞれの料理が完成する間に、菜の花のからし和えを作ってしまう。

 まずは、ポットから鍋にお湯を入れて、火にかける。 水から沸かすよりもすぐに湯がけるので便利である。

 塩を入れて、菜の花を湯掻く。 好みではあるが、菜の花は比較的繊維がしっかりしているので強く茹でても崩れるほどまでにはならない。 もしお浸しやからし和えを柔らかくしたい場合思ったより長めに茹でても大丈夫。


「ま、私は歯ごたえが残ってるくらいが好きだけどね」


 ……だそうだ。


 しなっとしたところでお湯から上げて、軽く水気を絞り切ったら、適当な長さでカットをして、麺つゆと練りからしを入れて和える。

 仕上げに鰹節をまぶしたら完成だ。


 あとは、トースターがチンと焼き上がりを知らせてくれたら食卓に並べるだけ。

 ホイルを開けて、玉ねぎの下からエノキダケを引っ張り出す。 料理は見た目も大事なのだ。

 そこにポン酢を掛けたら、鰆のホイル焼きの完成。


「菜の花に鰆、まさに春の足音が聴こえるようなメニューね」


 早速、菜の花から手を付ける。


「んー♪」


 からしの辛さが突き抜ける。 そして、麺つゆのカツオと醤油の香りが抜けて、菜の花の苦味がアクセントとなる。

 お浸しも良いけれど、このからしの爽やかな辛さに春を感じる。


 刺激を受けた口の中に、日本酒を流し入れる。

 芳醇な甘いお米の香りが、いつもよりも強く感じられる気がする。


「そして、本日のメインディッシュ、鰆のホイル焼きは……と」


 箸でほろりと身がほぐれる。

 そのまま口へと運ぶ。


 春物の鰆の少しパサついてとも言える身に、新玉ねぎの果汁とバターの濃厚さが染み込んでいる。

 塩焼きだと少し物足りないが、こうして他の旨みが染み込むと絶品なのだ。


「うーん、これこれ♪ そして、下のエノキダケを頂いて……」


 それぞれの旨み、そして厚切り新玉ねぎからのさらなる果汁がたっぷりと染み込んだエノキダケ。 これこそホイル焼きの『醍醐』だ。

 味のしみる食材を受け皿にすべし。


 またも日本酒を口に含めば、今度は濃厚な味を喉へを運び込み、余韻が鼻を抜けていく。


「今年の春は、今始まったって感じ♪」


 若葉の中に春の風が吹き抜けたような気がした。

久し振り過ぎて書き方を忘れてます……ま、いいか(爆)

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