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毒ボール事件

~あのボロ小屋から少しだけ離れた村の宿にて~



「ふい〜この世界にも風呂文化があってよかったよかった。」



平安時代のように香を焚きしめる文化だと不清潔極まりない。ジャパニーズオフロカルチャーis清潔、これとっても大切。



部屋の金庫に大切な袋は置いてきた。万が一のためにホイッスルは首から下げている。サウナまで完備された何一つ不自由なく快適なホテルのような大浴場である。が、いくつか驚いたことがある。



「紋々率高ぇ...」



やはりその辺りは異文化である。腕にクローバーの痣のある自分が言うのはなんだが民族的なsomethingなのだろうか?腕に真っ黒なラインがある人が多い。だがそれよりも...



「(てか皆様屈強すぎません?実は俺、体格はいい方なんですよ?力の使い方が下手すぎるだけで握るだけの握力測定だとクラス上位ですよ?その体格が貧相に見えるようになるって凄いぞ?あそこの人なんてさぁ、なんでこんなクッソイケメンで顔から下の体格バッキバキなの?こんなん見てたら俺性癖歪むよ?)」



半分以上個人的ジェラシーによる八つ当たりが脳内で炸裂した。

現代の貧相な社畜共※(ヒビキのイメージです)とは比べ物にならない。みーんなハイスペックで、綺麗にプログラミングされたゲーム内じゃないのかと勘違いしそうになる。



あと補足説明だが俺は握力測定と上体起こしは得意だ。立ち幅跳びも人並みにできる。だが「ハンドボール投げ」、あれはノーコンフォームなのでほぼ飛ばずにすぐそこに落ちる。短距離走は大丈夫だが長距離走は死にそうになる。



こう思い返し、思わず自分の運動に対するセンスの無さにため息が出た___


*****


雅との相部屋に戻ろうと鍵を開けようとするとドア下の隙間からレタがするすると出てくる。



『今雅がバルコニーの風呂に入っているのでバルコニーとその隣のベッドルームは入室禁止です。トイレで慎ましく過ごせ。』



そう、格安宿にしては良いサービスがあり、1部屋に1つバルコニーに少し小さめの露天風呂があるのだ。ずっと廊下に立ちっぱなしにいる訳には行かないのでとりあえず入ってすぐのトイレに入ることにした。



〜しばらくして...〜



「あ〜いいお湯だったわ〜。ヒビキもう入ってきても大丈...」



「ハイ!マンゴー、お風呂行きましょうね〜♪」



雅がタオルを巻いていることを視認したヒビキは雅とマンゴーのいる部屋に目にも止まらぬスピードで突入した。その間僅か0.数秒。



我ながら親バカだが、大きなマンゴーの両脇を抱えた時にもふっとなったのが一発KOだった。



「oh...yea...Goodもっふ...だが重いっ...!」



一日中酷使した体にとってはかなりの負担だ。



マンゴーを地面から少しだけ持ちあげてベタベタと交互に重々しく足を出して前進するヒビキを横目に、雅は自分のコンプレックスをじっと見つめていた。



「(私に女としての魅力が無いのか?それともヒビキが変わってるのか...後者であると願いたいわ。)」



*****


村の食堂と兼ねられた一階の食事処では見たことがない食材がズラリと並んでいる。簡単なビュッフェなんだろうが、見た目上、とても手をつけたいとは思わない。



「そーいえばヒビキはこの世界に来てから何食べてたの?」



ぎくっ...食べていたものは、実は普通に現代で売られている物なのだが、この世界における呼び名が個人的に凄くツボで絶対笑ってしまう...



「え...ぱ、パンだけど?」



聞き慣れない言葉に雅が眉をしかめて案の定指摘してきた。



「パン?...ペェァンのこと?」



「ぶっ...そう、それそれ。」



ダメだ何度聴いても笑えてしまう。売れない芸人のネタのようにじわじわてきて抑えきれなくなる。



笑いを堪えるのに精一杯になりながら涙を浮かべてヒビキは雅が1番美味しいと思うものを教えててもらった。1人笑いそうになっているヒビキに「変な人ね」と若干眉間にシワをよせながらだったが___



〜10分後〜



「うぷっ...オロロロロロ...」



個室のトイレで吐き続ける俺に向かって信じられないと若干怒りのこもった声がドア越しに聴こえてきた。



「人の紹介した1番美味しいご馳走を吐き出すとは、体調管理がなってないんじゃない!?体調が悪かったならもっと他に粥とかペェァンとかあるでしょうが!」



「ふぶぅっw...ぺ、ペェ..オロロロロロ...」



胃の中がすっからかんになるほど吐いているというのにどんな構造をした料理だったのだろうか?腹の中に永遠に残っている感覚がする。あぁ気持ちが悪い...



~数分前に遡る~


名前を聞いても分かるはずがないのでとりあえずビュッフェから持ってきた雅のものを少しよそってもらった。なんと表現すれば良いのだろうか、見た目はギラギラと7色にテカリのある拳より一回り二回り小さいサイズのボールだ。雅の皿には山のように盛られている。既に嫌な予感はしていたが、それ4分の1に切ったものを恐る恐る口に入れた。ねっとりとした油の塊に甘みと酸味と苦味とが混ぜこまれている、なんかもう...クソ不味いレベルではない。



生命の危機を感じた俺は直ちにトイレに直行した。毒物を食べたら吐くのが1番だ。



という経緯から今に至る。



「とりあえず私はアレを好きなだけ食べてくるから、気が済んだら出てきなさいね。」



「はぁ...はぁ...りょ、りょうk..オロロロロロロロ...」



パタンとドアの音がした後もしばらくへっぽこ勇者ヒビキの吐き気は止まらなかった__


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