突然の死
〜WARNING!〜前奏曲の世界の用語として『ペェァン』が登場します。わからない方は前回の【私とペェァンと毒ボールと】を必ずお読みください。(実際そんな騒ぐもんじゃないので予想のつく方は無視して下さって大丈夫です)
「ひ、酷い目にあったぜ...」
げっそりしながらトイレから出てきた俺は目を疑った。雅があの激マズ毒ボールおよそ20個を完食しようとしている。なんという胃袋だ。周囲の笑顔が引きつっている所から少なくとも20個一気に食べる(食べられる)ものではないらしい。
「(もうアレは一生食べねぇ)」
ヒビキは心の中で固く決心した。
帰り際に店長と思しき人物が、吐きすぎて顔色が真っ青になりながら雅から受け取ったお金で会計を済ませようとする青年と、好物を腹いっぱいに食べて普段の微笑みにさらに艶がかかったような良い顔色で先に店から出ていった女性にそれぞれに違う種類の【心配の目】を向けてきた。
何かしら食べなければと思った俺は会計中に無意識にこう注文していた。
「...柔らかい...ペェァン下さい...」
少々値は高かったが1つの紙袋に小さな白くて丸いペェァンを2つ詰めてもらった。だが、頼んでもいないのに他に袋が2つも出てきた。
「お前さんも苦労しただろうからお詫びと言ってはなんだがベリーのジャムをサービスしといたぞ。」
「(オッサンいい人じゃねぇか...)」
人の温かさに触れて普段の絶望とは違う感動の涙が出た。気づけばペェァンにも笑わなくなっていた。あぁ、人の成長って凄いな。
傍から見れば非常にしょーもない出来事ではあるが、コミュ障オタクにとってこれは大きな進歩である。だが次の瞬間、もう1つの紙袋の中身を見て驚愕した。
「あの激マズボールを使ったお嬢ちゃん専用新作デザートだ!お嬢ちゃんに是非食べてもらって欲しい!」
隠しきれていないどす黒く艶のある丸いフォルム、調味ソースの代わりにクリームとベリーのソースがかかっている。このオッサン正気なのか。
かくして主人公としては最悪最低の手段ではあるが雅には期間限定と偽ったデザートを購入して(実際は自分だけペェァンを買おうとしていて無料で貰えたものを)お詫びとして渡すことでご機嫌とりが出来た。店長、渡すシュチュエーションとか設定までは指定されていませんからね、はい。
〜再び宿の部屋にて〜
気分も良くなり、ベリーをたっぷり塗りこんだジャムパンでかなり顔色は良くなってきた。
横に目をやると雅はベッドに入って数分で既にすやすやと寝息を立てている。
また急に疲れが来てうとうととまどろんでしまった。
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『ドスッ』
胸元に何かが落ちてきて一瞬、パニックになりかける。
「うっ...!まっ、マンゴーちゃん!胸に飛び乗っちゃいけまっ...」
『あい...?』
ん!?マンゴーは飛び乗ってきたのに寝ぼけてるのか?昨日はめちゃくちゃ寝相が良かった(ヒビキが抱きついて離さなかっただけ)
しかも聞き間違いでなければマンゴーの声が耳元でした。さらに落ちてきたものは軽かった。
「もう9時だけどいつまで寝てるの?」
意識がハッキリしてきて犯人が声と共に現れる。
「雅かよ!びっくりしたじゃねぇか!」
タダでさえ弱っちいボディと精神を持つヒビキにドッキリは1歩間違えば死にます。オタクはそういう生き物なんです!!!
巨大なペェァンが入った袋が胸元に置かれている。
「もう1階で買っておいたわ。さ、食べましょ。」
気が利くじゃねぇかと薄く輪切りにされたペェァンを見て目を疑った。例の毒ボールが1玉丸ごと乗っている。
「結構イけるわよこれ。」
急に顔が真っ青になるのが自分でもわかった。昨日は酷い目にあっていたのを目撃していたはずだがそれでもこの女は勧めてくるのだ。恐ろしいこと極まりない。
「オジサンがペェァンとベストマッチしたから是非食べてみて欲しいんですって。こういうのは勢いが大切とも言っていたわ!」
もうあんなに吐きまくるのはごめんだが、自ら激マズ発言をしていたおじさんが美味しいと言ったのだから仕方ない。蛙みたく██を███す覚悟で毒ボールをペェァンに乗せて丸ごと口に放り込んだ。
「うっ...!」
「う〜んたまらない...って、!...ヒビキ!どうしたのよ!ねぇ、ねえってば!!!」
その瞬間、呼吸困難で意識が遠のいた___
ちなみに例の毒ボールですが、握り拳サイズだと1口では食べられないのではないかという意見に対し、リア友との厳正なる審議の結果、1〜2回りほどサイズダウンしました。(前回の毒ボール解説シーンは修正済みです。)




