転移の代償を支払い過ぎた俺はお釣りを待つ
第4話
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
そう言いながら恭しく頭をさげる黒服+メイドが
巨大な屋敷まで列を成していた。
「メイドが居るだと⁈てか、お前、お嬢様だった
のか⁈」
あまりの驚きに、思わず叫んでしまう。まさか刀
担いだ謎女が、いくら親切極まりなかったとはい
え、お嬢様育ちだとは思わまい。
「うん、まあ一応ね。って言っても、ただの辺境
伯だから、権力なんてあって無いようなもん
よ。」
ミルドは照れ隠しのように口をすぼめて呟く。
(何が辺境伯だ。屋敷の面積が余裕でリアルのウチ
の20倍はあるじゃねぇか)
今まで目にする事なかったサイズの豪邸に呆気に
とられるが、それと同時にミルドの顔を再確認。
確かに顔はそれなりに可愛らしいし、体つきもそ
こそこだ。
しかし、常にカタナを(そもそもカタナなのか?)
を担いでいるせいで、彼女の魅力らしい魅力が根
こそぎ持って行かれてしまっている。
「うん…これが残念美人か。ホンモノは初めて見
たが、中々に不憫だな…。」
持って産まれた美貌があると言うのに、中身がつ
いてこないなんて、可哀想過ぎる。一体どんな教
育を受け続けたらこんなにも奇抜な性格の人間が
出来上がるのだろうか。
と、失礼極まりない思考を巡らせていると、横を
歩くミルドの足が止まるのに気づく。
「うわぁ……これが大広間か?とんでもないサイ
ズのドアだな‼︎中どんだけ広いんだよ⁈」
見上げると、いつの間にか巨大な鋼鉄の扉が道を
閉ざしていた。一般的な一軒家よりも、その扉は
大きかった。
「ううん、そこは武具庫よ。代々ウチが集めて来
た世界中の剣という剣がぶち込まれているわ。」
平然ととんでもないことを口走るミルド。
(世界中の剣という剣?)
それは果たして、いつぞやの武蔵坊○慶の様に
刀狩りでもしているのだろうか?
しかし何より……
「そんだけ色々カタナが有るんなら、俺でも振れ
るようなのもあるっつーことか?だとしたら、や
っと釣り合いが取れてきたんじゃ…」
男の子なら一度は憧れるソードマスターになれる
かもしれない。 はやる気持ちに身を任せ扉へと駆
ける。ついに俺のTUEEE時代がくる!
「ッ‼︎ 待って‼︎あなたが触ったら…」
ノブをもぎ取る勢いで伸ばされた両の手が、眼前
で……吹き飛んだ。
「……あなたには……、というか、その扉はオー
フェン家当主以外には開けられないの……」
何とも申し訳なさそうな顔でミルドが発言の続き
を述べる。
しかし、時すでに遅く、俺の腕は跡形も無く消し
飛び、断面はまるで鋭利な刃物で切り開いたかの
様な跡があった。
「ッッッッ‼︎‼︎」
来るべき痛みに備え、奥歯が擦り切れそうな強さ
で歯を食い縛る。
けれど、いつまでたってもその痛みは訪れない。
それどころか。消えてしまったはずの肘下から、
何故か鋼鉄を溶かした様な液体が垂れている。
垂れて垂れて垂れ続ける液体は次第に固まり始
め、終いには人間の腕を模した形を成していたの
だった。
(義腕、なのか?)
余りにも沢山の事が一気に起きすぎて、理解力が
キャパを超える。思わず頭を抱え、しゃがみこ
む。
仰向けになり、天を仰ぐと、ミルドはすでにその
通路から姿を消していた。
第4話です!
毎度ながら目を通して下さった皆様、本当にありがとうございます!少しでも楽しんで貰えたら幸いです。また、もし良ければ感想、レビューも頂けると感激です!




