↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
fall in wonderland  作者: 雨空 晴
PR
2/5

アイデンティティの喪失

第2話


一体、どれくらい落ち続けているのだろうか?


終わりの見えない降下は次第に恐怖心を煽り、果


たしてこの奈落に底はあるのかすら分からなくな


る。


と、不意に下から光が、淡い光が漏れ出している


ことに気が付いた。


「……ッッ‼︎で、出口か⁈」


光は次第に俺の身体を包み、纏わりつくように染


み込んでいく。


次の瞬間、世界から影という概念が消えた。ま


るで自分というちっぽけな存在さえ搔き消してし


まいそうな、その白光はいつしか俺の視界を奪っ


ていた。


「ま、眩し過ぎるっ‼︎そして目がァァッ‼︎‼︎…」


(このままじゃ、地面に足が着いたとしても確実


にミンチになっちまう)


そうパニクっていると、不意に光が途切れる。


およそ一時間ぶり(くらい)に開く目が、次第に明


るさに適 応する。


「………街だ。」


見開いた眼下に広がるのは見慣れない街並みだっ


た。


「ヨーロッパか?ヨーロッパ旅行なのか⁈…い


や、違う。欧米の風景とは、何か違うな……」


目の前に広がる光景は確かに中世ヨーロッパのそ


れを模しているようにも思えた。がしかし、俺の


知ってるヨーロッパはあんなにも魔法に満ちてい


ないはずだ。イギリスの空を人が飛び回るのは映


画の話ではなかったのか。


「…もう理解が及ばねぇ。」


落ちて、落ちて、石畳の坂道が近づく。来たるべ


き衝撃に備え、歯を食い縛る。


(さあ、早く来いッ)


ストン。身をひき潰すくらいの落下になるはずで


あった衝撃は急激に弱まり、軽く尻餅をついたく


らいで、終末を迎えた。人の覚悟を返せ。


目を見開く。


「…ま、街の中、だよな?」


あまりの驚きに、疑問が口から零れる。


そこに居たのは、いわゆるヒューマンだけではな


かった。獣耳、機械人、鬼のような風貌の集団。


皆活気に溢れていて、実に不思議な光景が商店街


には広がっていた。


「……、ねぇ、あんた大丈夫なの?」


ふと、後頭部から声が掛かる。


「……、あ!俺か?うん、まあ基本的にはセーフ


かな……ッ⁈」


リアルではなかった。色々な意味で理解する。こ


こは断じて昨日まで俺がいた世界では無いのだ


と。


目の前に立つ少女は、この世のものとは思えない


程に美しく、可憐で、儚く、大仰な剣を担いでい


たのであった。


「カタナァァ⁈」


「ま大丈夫ならいいけどさ〜、あんた、名前は?


私はミルド。ミルド オーフェンていうの。」


どうやらこちらの疑問には応じてくれないらし


い。


「ミルド…か、よろしく、正直なところ、俺何も


わかんないんだわ。ここは何処なんだ?」


「タンマ!まず、名乗りなさいよ、それくらい出


来るでしょ?」


言われて気づく。彼女は真っ先に名乗り出たとい


うのに、自分はただ問いかけるばかりであったこ


とに。仮にも紳士の端くれ、名乗られっぱなしと


言うのは宜しくない。故に名乗る。


「あぁ、悪い。俺の名前は………」


俺の名前は何だ?一文字も浮かばない。


「…………?」


まさかこの歳で物忘れなんてことはないだろう。


では先程の落下で頭でも打ったか。ない。あの時


確かに俺の身体は上に引きずり上げられた、落下


の衝撃なんて、あってないようなものだった。


「………ど、どしよ」


18にして、俺の名前は忘れ去られたのであった。

読んで頂いた方々、ありがとうございます‼︎

御感想頂けると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。