第20話 Bパート① ー乗り越えろ、大技!ー
読んで下さりありがとうございます!
感想、圧倒的感謝!
何度倒れても不屈の闘志で立ち上がる照也を前に、哀が大鎌の構えを変える。
「……ナーサリーライム、起動!」
哀が見せる、明らかな溜めの動作。
正面に立てた大鎌の刃に、ゆっくりと光が満ちていく。
「我が前に真の姿を示せ……大鎌“ブラックスワン”!」
光は黒い輝きを放ち、哀の周囲に光の帯が幾筋も走り圧を増す!
「あれは、あの時の……」
その技に、照也は覚えがあった。
(俺がまだ、ダイデンダーの力に目覚める前。新型ソウルイーターに向かって放った技!)
巨大な敵を十文字に切り裂き、大木を薙ぐように巨体を両断した必殺の斬撃!!
「……シャドウ・クロス!」
記憶を呼び覚ました照也の全身が、総毛立つ!
「耐えてみせなさい、大殿照也! ……いえ、魔法勇者ダイデンダー!!」
「!」
戦士の黒い瞳が、照也を見逃さない。
照也のことを勝つべき相手と認識しての、真っ向勝負!
「お、おおおおお!!」
呼応するように、照也の口から咆哮が上がる!
「……常闇へ還れ! シャドウ・クロス!」
哀が跳ぶ。
「うおおおおおおーーーーーー!!!」
迫る必殺の一撃に、照也もまた己のこぶしを強く握り込んだ。
※ ※ ※
システム・ナーサリーライム。
それは、魔女たちが己の魔法を効率よく使用するための共通規格である。
特定の型をもった特殊な器に魔力を注ぐことにより、安定的な結果を生み出すシステム。
それは、心の揺れが魔法の精度に大きく影響する魔女たちにとって、革命的な技術であった。
今では一部の一族伝来の技を持つ魔女を除いて、そのほとんどがナーサリーライムを大なり小なり活用している。
そして、このシステムの構築には地球人の技術者たちも多く関わっており、まさに地球と魔法界との縁が生んだ力と呼べるものだった。
哀が放つ必殺の一撃、シャドウ・クロス。
それは哀の大鎌“ブラックスワン”に、ナーサリーライムで制御できる最大値まで魔力を込めて放つ大技である。
魔法戦士の持つ武器の中でも技巧に特化したブラックスワンが出せる最高火力。
刃その物だけでなく、描く光の軌跡すら攻撃力を持つ黒き十字の斬撃は、単なる物理防御であれば容易く切り裂く魔法の斬撃なのだ!
それが、今。
「はああぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
「うおおおおおおおおーーーーーー!!」
突き出された勇者のこぶしに、止められていた。
「円さんっ!」
「今視てる!」
新型ソウルイーターすら切り裂く一撃が、止められている。
そんな異常事態を、円は持ち込んだ機材を総動員して解析する。
「これは……斬撃の魔法が届いてない? ただ受け止めてるわけじゃなく、薄い障壁が弟くんのこぶしから出て止めてるみたいっ!」
「薄い障壁? ……あっ!」
円の言葉に青い目を凝らした絵瑠が、それを捉える。
「ホントだ……! お義兄ちゃんの手の先で、ブラックスワンの刃が止められてる!」
彼女のよく視える瞳は、そこからさらに、照也の手から力場のような何かが放たれているところまで見抜いた。
「あれって……プラーナ!?」
照也のこぶしは、命の力で哀の斬撃を受け止めていたのだ。
「……まさか、ここまで守りに秀でているなんてね」
感心した様子で哀が呟く。
全力でもって振り下ろした一撃が受け止められてしまった事実に、彼女の頬を汗が一筋流れ落ちる。
「どうやらあなたの持つ力は、私たち魔女の力とは似て非なるものみたい」
「正直俺にも何が何だかさっぱりだが、それでも、わかることはある!」
対して、受け止めている照也の表情は、喜びに満ちていた。
「俺の力はみんなに届く。みんなと並んで戦える!」
照也が心を解き放つたび、力の出力が上がっていく。
命の輝きが増すほどに、こぶしの先の障壁が、哀の斬撃を押し返す。
「俺の魂が叫んでる! ダイデンダーの力は、俺の望みに応えてくれるって!!!」
「ッ!」
カッ!
閃光が奔る。
障壁が砕け、哀を押し返す力となって放たれる!
「マジカルリフレクタァァーーーーッッ!!!」
「……上等ッ!」
弾かれた哀が、強引に体を捻って、再び大鎌を振るった。
ガァンッ!
硬質な物同士がぶつかり合ったような、重く低い音が校舎裏に響く。
「叩き斬るっ!!」
「弾き返すっ!!」
黒の刃が押し込まれていく。
不可視の障壁が押し返していく。
必殺の一撃を、勇気の守りが迎え撃つ!
「お義兄ちゃん!」
「弟くんっ!」
莫大なエネルギーのぶつかり合いに、見守る絵瑠と円にまで衝撃が届く!
「い、け、るっ!!」
「!?!?」
哀が、押した。
拮抗するぶつかり合いの中で、鍛え抜かれた戦士の勘が、照也の障壁に浮かぶ守りの《《ムラ》》を見抜いた!
「はぁぁぁぁぁっ!!」
黒の刃が、不可視の障壁を切り開いていく!
「ぐ、ぉぉぉっ!!」
照也がこぶしを開いて、より障壁をイメージして対応するも。
ギ、ギギギッ!
必殺の刃は止まらない!
(このままじゃ……負けるっ!!)
すでに障壁の維持が難しくなった照也の右腕は、上下左右にぶるぶると揺れている。
もってあと数秒。
現状を維持するだけでは勝ち目はない。
「もう、もう十分だよ! お義兄ちゃん!!」
心配する絵瑠が、自分を想って声をかけてくれる。
彼女の言う通り、力を見せるという意味ではもう、十分すぎるほどに見せた気はした。
だが。
「ま・だ・ま・だぁぁぁぁーーーー!!」
「お義兄ちゃん?!」
大地をしっかりと踏みしめて、重心を低く保つことでさらに堪える。粘る。
「俺は、俺は……諦めないっ!!」
腹の底から吐き出すように、照也は叫ぶ。
「この力は誰かを守る力! だったら最後まで、諦めちゃいけないんだぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!」
叫びとともに、照也は左手を前に突き出した。
瞬間。
「なっ!? プラーナの出力が……!!」
哀の一撃を受け止める障壁が、その厚みを一気に増して広がった。
そして。
必殺の黒い刃が。
「マジカル……リフレクタァァァァァーーーーーーッッッ!!!」
「きゃああっ!!」
砕けた障壁に、弾き返された。
※ ※ ※
「……まさか、私の最大火力すら弾き返されるなんて、ね」
地面に大の字になりながら、哀が暮れだした空を見上げて呟いた。
跳ね返された攻撃のダメージこそほとんど受け流してみせたが、それでも受けた衝撃と魔力消費が重なり、すぐには起き上がれそうにない。
「はぁー、はぁー、はぁー……」
対する照也も満身創痍で、強い疲労感を覚えながら、肩で息をしていた。
それでも……彼は立っていた。
「……しょうがない。私の負けね」
「はぁー、はぁー……あ?」
決着を告げる言葉に、照也はキョトンとした顔を浮かべる。
「あなたの勝ちよ、大殿照也」
「え……?」
思わず哀の目を見れば、彼女の瞳から戦意が喪失していた。
「……俺の、勝ち?」
「そうだよ! 勝ちだよ! 弟くぅぅーーーーーん!!」
「おうあっ!?」
ふらふらの照也に、大きくて柔らかい物がぶつかる。
倒れる前にギュッとされ、彼はそのまま締め上げられた。
「すごい! すごいよ弟くん! 魔法戦士に勝っちゃった!!」
「ちょっ、ちょちょちょ円さん! お義兄ちゃん潰れてる! 潰れてる!!」
全身で喜びを示す円に遅れて駆け寄った絵瑠が、一生懸命に潰れた義兄を救出にかかる。
「データもいっぱい取れたよ! やっぱり弟くんは未知の塊! すごくすごいんだよっ!」
「ぐぇぇ……」
「放して! 放してってば! 円さんっ!!」
「……ほんと、仲が良いわね」
もはや見慣れてしまった光景に、ようやく体を起こした哀から、間延びした吐息がこぼれた。
(大殿照也。ダイデンダー。魔女の力とは似て非なる、プラーナすら操る未知の力……)
正直に言えば、未だ信じるには至らない、何が起こるかわからない恐れすらある力。
けれど。
『この力は誰かを守る力!』
そう断言する彼の心意気の方は。
少しは信じてもいいのかもしれないと、哀は感じていた。
その言葉を聞いた瞬間。
自らの刃をブレさせてしまった、その自戒も含めて。
「……お姉さま」
変身を解き、手元に戻った黒鳥の装飾品を見つめ、哀は呟く。
「……勝負に負けてしまったので、少しだけ、寄り道してきます」
許しを乞うような、深い呆れと諦めがこもった小さな言葉。
けれど、声の主の口元は、ほんのわずかに微笑んでいた。
リアクション、感想、高評価いただけるとめっちゃやる気でます。
ぜひぜひ応援よろしくお願いします!




