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【完結】時紡ぎ~再び君と出会うまで~  作者: 紫乃月 聖巴


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16. 邪神教団の残党

 邪神は討伐されたが、まだ終わっていないことがあった。

 邪神教団の残党がまだいる。

 教団の多くの戦闘員と魔術師達は捕縛や死亡が確認されたが神殿長から聞いた話では、まだ教団壊滅にいたっていないそうだ。


「教団の残党については、王国騎士団が追うことになるでしょう」

「私達も協力します」

「それは心強いです。今後、王宮と調整して作戦を立てましょう」



 学園は教団が暴れたこともあり、建物の複数箇所で破壊が見られた為、復旧するまでは休校となった。その間、リセリアはリンフェリス大神殿にルイが滞在していることもあり、一緒にお世話になっていた。



 数日後、王宮から使者が来た。

 オルスティ侯爵の名代として来た若い文官が新たな要請書を持ってきた。

 要請書の内容は、教団残党の討伐への正式な協力依頼だった。


「オルスティ侯爵は、明日の午後に作戦会議を行いたいとのことです。リセリア・シャステリーゼ様とルイ・クロデリヌス様のご参加をお願いします」

「承知しました」


 リセリアは答えた。

 ルイ・クロデリヌスも頷いた。






 当日の午後、王宮で作戦会議が始まった。


 議長はオルスティ侯爵が務めた。


「まず、邪神討伐に対して王国を代表して感謝申し上げる。リセリア・シャステリーゼ嬢、ルイ・クロデリヌス様、そして王国騎士団と魔術師団達、全ての者の尽力があってこその勝利だ」


 部屋の全員が頷いた。


「次に、残る課題について話し合う。邪神教団の残党についてだ」


 グランドロス騎士団長が地図を広げた。


「捕縛した教団信者からの情報で教団の拠点は、南東に位置する森の中の洞窟と複数の場所を特定しました」


 グランドロス騎士団長は、その位置に印をつけた。


「それから幹部と見られる人物が三名います。彼らは、あの時の戦闘の場にはおらず、二名は本拠地と思われる森の洞窟にいます。これを機に一気に拠点を攻めます。現在、各場所で監視員を送り込んでいます」


 それから、細かな作戦へと話し合いは続けられた。






 三日後、部隊は動いた。


 ヒリエダ隊長率いる第一連隊の主力と魔術師部隊、そしてリセリアとルイが南東の森の洞窟へと向かった。


 森に着いた時、斥候を先に出した。

 斥候はグランドロス騎士団長が選んだ精鋭で、森の地形を熟知した者達だった。


 しばらくして斥候が戻ってきた。


「洞窟の入口付近に、魔術的な仕掛けがあります。近づくと何かの術式が作動するようです」


 ルイは斥候に確認する。


「仕掛けの術式は、どういう種類か分かりますか?」

「私には詳しくは分かりませんでした」

「では、実際見てから解除した方がいいですね」

「ここからは、俺が気配を消す術式をかけます」



 全員が気配を消しながら、洞窟の入口へ近づいた。


 入口の術式は、特定の人物以外に反応するものだった。

 教団以外の者が近づけば作動するものだろう。


 ルイがその術式を確認した。


「これなら解除できます」


 双字を空中に書きながら詠唱した。

 術式が音もなく無効化された。


「ここから何かあるか分かりません。慎重に行きましょう」

「了解しました」


 ヒリエダ隊長が答え、周りも頷いた。



 洞窟の中は薄暗かった。

 魔術師部隊が光の術式で内部を照らした。


 進んでいくと、仕掛けがあった。

 ルイが足を止めた。


「また仕掛けの術式ですね」


 ルイが術式を分析し始めた。

 リセリアも傍で確認した。


 分析が終わり、再び解除をした。


 ヒリエダ隊長が「見事ですね」と小声で言った。


 いくつかの仕掛けを処理しながら、奥へと進んだ。


 洞窟の深部で声が聞こえた。

 複数の人間がいた。


 ルイが手で合図した。

 全員が足を止めた。

 そっと覗き込むと、広い空間があった。


 そこに、十二名の人間がいた。

 十二名の教団達は、奥の壁に向かって何かをしていた。


 一人が指示を出していた。

 教団の幹部格だろうとリセリアは判断した。


「邪神は討伐された。しかし我々の目的は終わっていない。新しい計画を立てなければならない。まずこの場所の証拠を全て消去する。それから――」

「そこまでだ」


 ルイが前へ出た。


 教団の者達が振り返った。


 その顔に驚愕が走った。


「お前は……使徒?!」

「なぜ、ここが分かった!」

「邪神も討伐された。お前たちの計画は全て失敗した」

「お前達、奴らを叩き潰せ!」


 教団の魔術師が術式を展開しようとした。


 だが、ルイが先に動いていた。

 双字で拘束術式を展開した。

 地面から光の線が走り、全員の足元を縛った。


 全員が動きを封じられた。

 ヒリエダ隊長が騎士達を前へ出した。


「動くな! 王国騎士団だ! 投降せよ!」


 数名が無理矢理、攻撃しようとした。

 ルイが盾の術式で防いだ。

 幹部の男が歯を食いしばった。


「まだだ、まだ終わりはしない! 邪神は討伐されても思想は残り続ける。我々の信念は揺るがすことはできん!」


 ヒリエダ隊長が周囲に聞かせるように言った。


「捕縛する!」


 中にいた教団の者達は全員捕縛された。

 抵抗しようとした者は、騎士達が制圧した。

 魔術師部隊が魔術的な封印を施して、術式が使えない状態にした。


 その部屋の中には教団の計画書や記録が残されていた。

 ヒリエダ隊長がその記録を手にとった。


「これは重要な証拠だ。全て回収する」






 森の洞窟での任務を終えて帰路についた翌日、王都の情報部から連絡が来た。

 残り一人の幹部も騎士団長の部隊により捕縛されたという。

 その幹部は王都内の商人だったそうで商会ごと摘発された。

 そして他の拠点もすべて制圧した。


「洞窟で回収した記録から、十分な証拠たるものが発見されました」


 情報部の責任者であるサジウス卿が、オルスティ侯爵に報告した。


 サジウス卿は神経質そうな男性で長年、水面下で教団の追跡を続けてきた人物だった。


「教団の残党が全員捕縛された今、組織は機能を失いました。これで教団は壊滅したと見ていいでしょう」

「教団との長い因縁も、ようやく終わりを迎えた」


 オルスティ侯爵は静かに言った。

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