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怪しい小瓶



 土方が小瓶を持ち上げる。

「さて、次はお前だな、総司」

「えっ」沖田の心臓が、どくん、と大きく跳ねあがった。


 

小さな器。中には、得体の知れない液体。

色は……なんとも言えない。透明とも濁りともつかず、ほんのりと苦そうな気配を漂わせている。


(あれは、、もしかして…)

沖田はごくりと唾を飲み込んだ。

(土方家伝の薬……飲んだ者は必ず酷い目に遭うという……あの……!)

 


「なんだ?」

土方の眉がぴくりと動いた。

「何か 疑っているのか」

「だって土方さん。前にも それ、」


「大丈夫だ」

軽く睨まれるが、沖田はそれどころではない。

視線は完全に器に釘付けだ。



「ほら、さっさと飲め。」

「……毒見」

「しねぇ

即答だった。


「屁理屈言ってねぇで飲め」

土方が器をぐいっと差し出す。

逃げ場はない。

沖田はじりじりと後ずさるように視線を逸らし、また戻す。

(どうする……どうする…)


「総司」

低い声が落ちる。

「……はい」

「死にてぇのか」

「飲みます」

即答だった。

死にたくはない

震える手で器を受け取る。

近づくにつれ、薬の匂いがふわりと鼻をかすめる。

(……あれ?)

思ったより、飲みやすい かも…


(いや油断するな………)

心臓は相変わらずバクバクしている。

土方がじっと見ている。

逃げられない。

沖田は目をぎゅっと閉じて――

一気に、飲んだ。

「……!」



思ったほど、何も起きない。

むしろ、喉を通った後、ほんのりと体が落ち着く感じがする。

「……普通だ」

ぽつりと呟くと、土方が鼻で笑った。

「なんだと思ったんだ? これは、ふつうの五苓散だぞ」

「……ほんとに薬だった……」

「山崎が、薬屋からかってきたやつだ」

ちゃんと飲めよ」

「はい……」


土方はそう言いながらも、どこか満足げに立ち上がる。

「しばらく休め。水もちゃんと飲めよ」

「はい……」

障子が閉まる。

静けさが戻る。

沖田は天井を見上げながら、ゆっくり息を吐いた。

(……助かった)

そして数分後。


(……効くかなあ、 効けばいいなあ」

心臓も、ようやく落ち着いてきた。

ドクン……ドクン……

(……でもやっぱり)

薄く笑う。

(副長が持ってくると、なんでも怪しく見えるんだよなあ)

そんなことを思いながら、沖田は再び目を閉じた。

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