第四階層に行こう3
第四階層もこれまでとは大きな差はない。
山級冒険者が少人数パーティーでも来れるレベルだから心配はしていなかったが。
出てくる敵も単調だし、油断や慣れこそ恐ろしいというやつだろう。
「油断しそうだな。気を引き締めなおそう」
俺が言い放つと、ポリーヌが真顔でうなずく。
「同感です。この単調者こそ厄介な心理トラップと言えます」
俺たち二人の会話を聞いたネディスは神妙な面持ちで賛成する。
「お前らの言うことは正しい。優秀で正しくて可愛げがない新人だな。何度でも言うがお前らみたいな新人、普通はいねえよ」
「ほめられているのかな」
「ほめられているのですよ」
俺が疑問を口にすると、ポリーヌはにこりと笑う。
ポジティブな解釈をする子だな。
ここは見習っておこう。
「よし、じゃあ先に進もう。ネディス、敵の気配は?」
「少し離れたところに三つほどある。ロイ、魔力の余裕は?」
俺の問いにすぐ答えたネディスが、逆に聞き返してくる。
俺が魔法を使えなくなったらパーティーの戦力が激減するからだろう。
安全管理という意味では正しい。
「普通にこのまま急いで地上まで帰れそうなくらいにはあるよ」
だから俺も正直に答える。
「さすがと言うべきなんだろうな」
「ロイさんがまだ山級なのは正しいのでしょうか」
ネディスはあきらめ顔、ポリーヌは微苦笑という差があった。
「経験を積んで知識を増やさないと昇格させてもらえないっていうのは、正しい制度だと思うよ」
強ければオッケーというのはちょっと危なっかしいしな。
下の階層や強い魔物となれば、知識がないと詰んでしまう状況だってあるかもしれない。
それを考えれば当然の処置だと思う。
「……ロイの考え方は新人らしくないと言うか、若さが足りないな」
「えっ」
ネディスの言葉にちょっとショックを受ける。
たしかに前世を足せば四十歳を超えるけどさ、単純に足し算していいのかこれ。
この疑問に答えは出ないだろうから、思考を戻そう。
「とりあえずこのまま進んでもいいのか? どこで採取できるっていうのはある?」
「このまま進んで左に曲がれば広場に出る。火赤草も熱石もそこで採取できる」
ネディスは即答する。
割と親切というか、クリアしやすい感じなんだな。
まだ序盤の段階だからだろうか。
「採取はネディスかポリーヌに任せてもいいか?」
「ポリーヌがいい。周囲の警戒は俺がやって、敵が出た場合はロイに対処してもらう。それが一番安全だ」
「分かりました」
ネディスの意見にポリーヌが賛成し、俺もうなずく。
周囲警戒はたしかに俺よりもネディスのほうが向いているな。
敵を倒すのは俺の役目という点は一致していたが、瞬間的にその判断を思いつくのはさすがネディスだ。
広場に行くと、そこに誰もいなかったし魔物もいなかった。
ちょうどいいと採取ポイントに移動する。
ポリーヌはやけに慣れた様子でネディスから渡された布で石を包み、ネディスへと手渡す。
次に火赤草を優しく根ごと引き抜き、自分のアイテム袋へと入れる。
「何もなかったな」
「しょせんは山級になりたて用の依頼だ。めったなことがあってたまるか」
俺の言葉にネディスが油断なく周囲を見回しながらも笑う。
「このまま戻りますか?」
立ち上がったポリーヌに聞かれ、俺はネディスに相談する。
「どうする? ちょっとくらい休んだほうがいいか?」
「余裕があるなら早めに第三階層に戻ったほうがいい。階層が下ほどシビアな状況になりやすいからな」
ネディスはそう言って声を低め、続きを言う。
「それにジェヴォーダンが上の階層までやってきた原因は、まだはっきりしていない。油断しすぎると怖いぞ。ロイがいるかぎり、大丈夫かもしれないがな」
「……そうだったな。早めに戻るか」
舐めたプレイをした結果、命の危険にさらされるなんて笑えないにもほどがある。
本来固定階層から動かないエリアキーパーが動いた理由、なるべく早く解明してほしいものだ。
帰りもネディス、ポリーヌ、俺という順で縦一列になって進んでいく。
他のバスターとは遭遇しないな。
迷宮はけっこう広いからだろうか。
「意外と他のバスターとは遭遇しないものなんだな」
「そりゃな。同じような依頼を受けたとか、特定階層をしらみつぶしに進む必要がある依頼だったとか、そういうパーティーとくらいしか遭わないさ」
ネディスの回答にそういうものなのかとうなずく。
まあ迷宮内で他のバスターとトラブルになっても面倒だからいいか。




