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第四階層に行こう2


「他のバスターたちと仲良くなるのってどうすればいいんだ?」


「うーん」


 第三階層で休憩になったところで、俺はネディスに問いかける。


「酒場に行くしかなかったりするのか?」


 ネディスが渋面を作ったところでピンと来たので、先回りして聞いた。


「まあそれが一番手っ取り早い。宿屋にある酒場じゃなくて、いろんな奴らが来る大きな酒場がいい」


 宿屋付きだとダメだったのか。


 そこまでは気が回らなかったな。


 ポリーヌは驚いている様子はないため、たぶん知っていたんだろう。


 俺もポリーヌも未成年だから、黙ってていても文句を言えないんだけどな。


 この国での成人は十八で、それまで酒は飲めない。


「ポリーヌって成人している?」


 女性に年齢を聞いてはいけない暗黙の掟はこっちの世界にもあるんだが、この聞き方ならいいだろう。


「いえ、まだです。あと二年ですね」


 ポリーヌは流れ的に仕方ないと思ったのか、怒らず教えてくれた。


「つまり同い年だったのか」


「そうみたいですね」


 知り合って数日でお互いのことをまだほとんど知らないからな。


「……そうなのか。お前らけっこう息ぴったりだから忘れそうになったが、この街で知り合ったばかりなんだよな」


 ネディスが何やらしみじみとつぶやいている。


「そうなんだよな。酒場はダメだから他の手を考えてもらいたい」


「他の手か。現実的なのは大規模依頼クエストかな」


「大規模依頼クエスト?」


 何かゲームでありそうな呼称だな。


 それ言ったら迷宮とか魔法とかもそうか。


「うん、大物の討伐依頼が出た時とか、大量の素材が必要になった時に特別に組まれるんだ。実力に差がないパーティーが集められる場合が多いから、そこでいやでも知り合える」


「そっか」


 酒場の次くらいのアイデアとして出てくるってことは、そう頻繁にあるものでもなさそうだな。


「ちなみそれって山級バスターでも受けられるんですか?」


 ポリーヌが鋭くたずねる。


「なくはないが、雲級より上の等級になってからのほうが多い」


 ネディスはそう言った。


 そりゃ苦い顔にもなるよな。


 俺たちが採れる手なんてないも等しいわけだ。


 俺の顔を読み取ったのか、ネディスはなぐさめるように言う。


「まあロイはほっといても注目を集めるだろう。そのうち売り込みがあるかもしれないぞ」


「知名度あがったから売り込みに来るって大丈夫なのか?」


 無名同士から苦楽を共にした仲間のほうがいざって時に強いんじゃないのか。


 そう思って口にするとネディスとポリーヌに苦笑される。


「ロイさん、意外とロマンチストなんですね」


「過ごした時間は関係ない。それに実力者と組んでこそ上手くいくタイプもいるみたいだぞ。初めて組んだ相手と理想的なパーティーになれるなんて、意外とないものだ」


 世知辛い現実を知らされてしまった気がした。


 冷静に考えてみればもっともな話である。


 初対面の初心者同士がたまたま組んで、そのまま星級になれるほど迷宮は甘くないらしい。


 もっともネディスの口ぶりから察するに、まったくいないわけでもないようだが。


 とりあえず期待しすぎないことにしよう。


 たっぷり休んだので行動を再開する。


 第三階層に出てくる主な敵は「ソナーバット」だ。


 音を飛ばしてこっちの平衡感覚を揺さぶってくるのだが、単体だとあんまり強くはない。


 音波を飛ばされる前に倒すか、音波を飛ばす時だけ耳をふさげば問題ないのだ。


 ただ、他の魔物と一緒に出てくると一気に面倒になる。


 耳をふさぎながら他の魔物を倒すなんて器用な芸当をできるバスターはほぼいない。


「こいつが他の魔物と出てくるようになるのは第五階層あたりからだ。できれば対策を用意したいな」


 ネディスはソナーバットの死体を見ながらそう言う。


「対策ね。どういうのがある?」


「魔法で防ぐのが一般的だな。あとはこいつらがいやがる匂いを閉じ込めた匂い玉を持ち込む。耳栓を用意するという手もあるが、音が聞こえなくなるのは迷宮じゃリスクがあるし」


 すらすらと対策が出てくるのさすが先輩バスターだ。


 音に対抗する魔法か。


 たしかユーグに習ったやつにあったな。


 音を出してきたり、咆哮が衝撃波となってくる魔物がいるために編み出された魔法が<風の壁>だったはず。


「こういうやつかな?」


 使って見せるとネディスは絶句していた。


「使えるなら使ってくれよ」


「ごめん、必要に感じなかったから……」


 謝るとネディスはため息をつき、ポリーヌはぷっと吹き出す。


「ソナーバット相手に音対策の必要を感じない剛の者、なかなかいませんよね」


「ああ」


 ネディスはあきらめ顔に首をふる。


「ごめん、気をつけるよ」


「そうしてくれ」


 どことなくネディスが疲れた顔をしていたのは、きっと気のせいではない。


「むしろロイさんには使える魔法を今のうちに教えていただけませんか」


 ポリーヌが提案する。


「使える魔法か。空級までなら全属性だいたいは使えるかな」


 本当は星級も使えるけど、今は黙っておこう。


「はっ!?」


「……予想はしていましたが」


 ネディスは大きく目を見開いて固まり、ポリーヌはそっとため息をつく。


 ポリーヌにため息をつかれたのは何気に初めてかもしれない。

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