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お前らみたいな新人がいるか

 ネディスの装備は鎖帷子、小手、短剣という軽装である。

 間違っても敵の殴りに耐えられるもんじゃない。

 それを言ったら俺も似たようなものだが……。

「俺が盾役をやればいいだけだが」

「回避盾なら聞いたことはあるが、火力盾なんて存在するとは思わなかったな」

 俺のつぶやきをネディスが拾って肩をすくめる。

「第一階層だから、めったなことはないだろう。ネティス、頑張ってくれ」

「おうよ」

 緊張していないのは俺だけらしく、ネティスは表情をややこわばらせて、ポリーヌは油断なくかまえていた。

 第一階層をうろつき回り、適度に魔物を倒していく。

「止まってくれ。敵の気配だ。おそらくグレムリンが三」

 という具合にネディスはなかなかの気配探知力の持ち主だった。

 戦闘スタイルはスピードを活かしたヒットアンドアウェイである。

 俺とは微妙にあわない気がするな。

「どうだ、俺は?」

 ネディスに聞かれたので正直に答える。

「俺とはかみあわないスタイルっぽいね」

「そうですね。ロイさんが前に出て防御兼攻撃、ネディスさんは気配探知と援護に徹するほうがよさそうです」

 ポリーヌもそう言って俺に賛成した。

「そっか。そうしよう」

 ネディスは素直に聞き入れる。

 フェロスモードのジェヴォーダンを瞬殺し、命を助けたおかげか彼は俺に対して敬意を持って接してくれていた。

「なあロイはどれくらいの魔法を使えるんだ?」

 さてどうするか。

 隠したほうがいいかもしれないが、いずればれる日が来る予感もある。

 迷ったあげく話してしまうことにした。

「実はよくわからない。迷宮だと等級の低い魔法を迅速に撃つことが大事だと教わったからね。星級の威力が出そうだからやめろと言われたことならある」

「星級……フェロスモードのジェヴォーダンが全く相手にならなかったくらいだからなぁ? ありえないことじゃないか」

 ネディスとポリーヌは一瞬目をみはったが、一瞬だけだった。

「そうですね。それくらいの実力があるほうが自然ですね」

 受け入れてもらえて何よりである。

 それだけ星級って存在が強大なんだろうな。

「俺が仮に星級だったとしても、やっぱり一階層ずつ進んでいくほうがいいよな?」

「それはもちろん」

 二人は賛成してくれるが、ネディスはちょっととまどっている。

「しかし俺たちでいいのか? 実力さえ示すことができればもっと雲級や空級から誘いがあると思うんだが」

「実力があっても俺と上手くやっていけるかは別問題だろう」

「……正論だな」

 ネディスは納得した。

 知らなかったのではなく、俺が理解していることにうなずいたのだろう。

「実力なんて身に着けていけばいいしな」

「その発想もなかった」

 ネディスは自分の限界を恥じるように天をあおぐ。

「というかロイは新人にありがちな驕りや焦りとは無縁だな」

 それに関しては正直ポリーヌもたいがいだと思うぞ。

 俺は二度目の人生っていう点が大きいのだが、ポリーヌもまた波乱万丈な日々にもまれてきたのだろうか。

「今日はこのまま第二階層に行ってみるか? それとも引き返すか?」

 ネディスの問いに俺はそのポリーヌの意見を求める。

「どうする、ポリーヌ?」

「ネディスさんさえよければ、第二階層に行ってみてもいいのでは? ネディスさんは物入りでしょうし、私とロイさんには余裕がありますから」

 ネディスはパーティーが壊滅し、装備も全損状態だった。

 いちから揃えなおしたとしても大赤字のはずである。

 少しでも稼ぎたいと思っていてもおかしくはない。

 それを態度に出さないあたり、経験豊富なバスターって感じだ。

「……ばれていたか。助けてもらったあげく、気を使われて申し訳ないんだが」

 ネディスは気まずそうに頭をぽりぽりとかく。

「俺たちが知らないことをいろいろと教えてくれよ」

「私たちって迷宮にもぐりはじめて三、四日くらいの新人ですからね」

 ネディスは絶対うそだと言いたそうな顔だった。

 俺もネディスの立場だったら信じられなかっただろうな。

「お前らみたいな新人はいないよ。普通はな」

 ネディスは目をそらし、そっとため息をつく。

「分かった。今日は第二階層に行かせてくれ。リハビリも兼ねてだ。だから第三階層には行かない」

「了解」

「それが安全でしょうね」

 三人だけに決定も早い。

 先頭はネディス、真ん中にポリーヌ、最後に俺という形になった。

「やっぱり怖いのは背後からの不意打ちだからな」

 ネディスはそう言う。

「正面からの不意打ちってあんまりないものなのか?」

 せっかくだから俺は質問してみた。

 正面から不意打ちって字面的には変だけど、うす暗いエリアが多い迷宮でならありえるんじゃないか。

「ないとは言わないが、前からは警戒しているからかわしやすいし、やっぱり後ろのほうが狙われやすいもんだよ」

 みんな前からや横殴りは警戒しているし、対応もしやすいということらしい。

 ……みんなが警戒しているから後ろからくるって言うなら、迷宮の魔物には知性でもあるのか?

 本能的に襲撃がしやすい方法を選んでいるだけかもしれないが。

「一応聞きたいが、ロイって背後から奇襲されても戦えるか?」

「ポリーヌを守りながらとなると、相手次第かな。グレムリン程度なら余裕だけど」

 やっぱり守らなきゃいけない人がいると厳しくなる。

 迷宮を壊してはいけない制約もあるからなおさらだ。

 どちらも気にしなくていいから高火力を叩き込めって展開なら、だいぶ余裕が生まれるんだけどなあ。

 そんなことを考えてしまう俺ってあんまり迷宮には向いていないのかもしれない。

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