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稼げると言ったが、儲かるとは言ってない

「まずは防具からにするか……ポリーヌはどうする?」

「私のはただの法衣なので、何か質のいいものがあれば」

 ポリーヌはそう言う。

 けっこうよさそうな一品に見えたけど、ただの法衣だったのか。

「そう? これなんてどう? 防塵、防刃、防魔法の効果つきよ」

 女性は一着の白い法衣を取り出してくる。

「素晴らしいですが、白は汚れやすいのでバスターをやるうえでは不適切ですね」

「じゃあ色違いの黒ならどう?」

「いただきます」

 ポリーヌは即決する。

「俺はどうするかな。魔法戦士で魔力を提供するだけ攻撃力や防御力が上がるとうれしいんですが」

 後は自力で何とかできるしな。

「レベルの高い装備はないけど、山級冒険者相当のものなら」

 女性はそう言って銀色に輝く剣と鎧を持ってきてくれる。

「これは魔法金属<タブラ鋼>で作られているの。天級や星級の魔力には耐えられないでしょうけど……」

 まあ山級の活動範囲で天級レベルの敵と遭遇することはないだろう。

 フェロスモードのジェヴォーダンと遭遇したところだが、あれはレアな現象だ。

 あんなことが日常的だったらこの街のバスターが全滅してしまう。

 ……原因がはっきりしていない以上、楽観しすぎないほうがいいかもしれないが。

「いいですね。いただきます。おいくらですか?」

「法衣は五百万。剣と鎧は合わせて千二百万よ」

 意外と高いんだな。

 命の値段と考えれば安いし出せない額じゃないんだが、バスターは夢がある職業、稼げる職業と言われていても、儲かるとは言われてなかった理由がちょっとわかった気がする。

 言葉のマジックだな。

 ポリーヌも俺も一括で払う。

 ちょうど懐はあったかい。

「このあとはどうするの?」

「今日は解散でいいんじゃないかな」

 女性の質問に俺が答える。

 別に今日急いで迷宮にもぐる必要はない。

 ポリーヌもこくりとうなずいて賛成する。

「ネティスも積もる話があるだろうしね。明日以降でいいんじゃないかな」

「気が利くわね」

 ネティスではなく女性が言った。

「じゃあ悪いけど、今日一日この男を借りるわ」

「明日から俺たちが借りるって言ったほうが正しいような」

 俺はそう言うとネティスはまごまごし、女性はにこりと笑い、ポリーヌは涼しい顔をしている。

「その辺は適当でいいわよ。じゃあまいどありー」

 軽い調子で手を振る女性に見送られ、俺たちはネティスを置いて店を出た。 

「ポリーヌはどうする?」

「知り合いに近況報告の手紙を書こうかと。ロイさんはどうするのですか?」

「近況報告か……」

 ポリーヌの返事を聞いて俺はリア様の幼く端正な顔を思い出す。

 おそらく手紙をよこさなくても、大変なのだからと自分に言い聞かせているだろう。

 大貴族の令嬢とは思えないほど、いい子だから。

「俺も書こうかな。どうすればいいか教えてもらっていい?」

 書く気になったものの、何をどうやればいいのかまったく分からない。

 日本だったら文房具屋で必要なものを買ってから郵便局にでも行けばよかったんだが。

「いいですよ。読み書きができないなら代書屋に行くのですが、ロイさんはできますものね」

 知り合って数日とは言え、行動を一緒にしているからな。

 ポリーヌは俺が読み書き計算が一通りできると知っている。

 でなければ彼女に書類関連の作業を任せていただろう。

「こういう場合は雑貨屋に行くのですよ」

 そう言って俺たちは雑貨屋に行き、安っぽい獣皮紙を購入する。

「配達屋でも扱っていますが、高いですからね」

 雑貨屋だと一枚千ゼルクだが、配達屋では二千ゼルクだという。

 千ゼルクあれば二食分になるので、けっこう馬鹿にならない。

「書くものは?」

「それは配達屋で借ります。日常的に使うなら買ってもいいのですが、そうでないなら三万ゼルクは高いでしょう?」

 たしかに高かった。

 万年筆のいいやつならともかく、ボールペンや鉛筆が三万と考えると「ないな」と思わざるを得ない。

 配達屋は中央通りにあった。

 ラッパのマークが大きく看板として出ている赤い屋根の建物だ。

 中に入ると喧噪が迎える。

 カウンターには五人の男女の受付がいて、四つが埋まっていた。

 残り一つを先にポリーヌに譲る。

 彼女に手本を見せてもらうためだ。

 彼女は三百ゼルク払ってさらさらと書き、さらに三百ゼルクを払って封筒に入れてヒモで縛って、あて先を書く。

 そして俺に譲ってくれる。

「あて先ってどう書けばいいんだ?」

「受け取る人の名前と職業を書いて、自分の名前を書くのですよ。そうすれば配達人が捜してくれます」

 住所って感覚がない分大変なんだなぁ。

 俺は近況報告を書いて次にあて先を書くわけだが、迷った末にグエリーヌ侯爵にする。

 州、都市、侯爵の名前で十分だろう。

 何せ領主様で大貴族だし。

 書いた手紙を受付に渡すと、硬直していた。

 ……バスターが貴族に手紙を出すってそんなに驚くことなんだな。

 それでもプロらしく、笑顔で応対してくれる。

 配達費は千ゼルクだという。

 高いのか安いのかよく分からない。


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