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異変

「俺たちは第八階層で探索していた」

 

 ネティスはゆっくりと話しはじめた。

 

「そしたら下の階層からやつが、ジェヴォーダンが現れたんだ」


 そう言ったネティスは体を震わせる。

 

「四つのパーティーがつぶされ、俺たちは命からがら逃げだした。ここまで逃げてきたやつらの中で生き残ったのは俺だけだろう。他の階のメンバーがどうなったのかまではわからないが」


 この広間にネティス以外に二人いるが、二人ともすでに事切れていた。

 

「一度戻って協会に報告したほうがいいかな」


「そうですね。上級バスターたちによる調査チームを派遣してもらったほうが安全でしょう」


 俺の意見にポリーヌは賛成する。

 

「賛成だが、待ってくれ。ジェヴォーダンを討伐した証を持って帰るべきだと思う。君たちの手柄になる」


「私たちというか、完全にロイさん一人の功績ですが」


 ポリーヌは微苦笑した。

 

「ジェヴォーダンのなきがらを解体するんですか?」


「うむ。ジェヴォーダンは強力な魔物だ。バスターにとって誉れとなるだけじゃなく、なきがらは高値で売れる。放置しておくと、誰かに回収されてしまうだろう」


 ネティスの説明はもっともなように感じる。

 結果だけ横取りされるのは釈然としない。

 ジェヴォーダンと戦ったバスターと分け合うなら別にかまわないんだが。

 

「どの部位を持っていけばいいんですか?」


「頭部。前足、尻尾だな。それ以外の部位はそこまで重要じゃない」


 ネティスの言葉にしたがって俺はジェヴォーダンの死体を魔法で解体する。

 二人には力の一部を見せてしまったので、今さら隠す必要はないだろうと思ってスパスパやった。


「ロイさんって、力を隠していたのですね。そうなんじゃないかと思っていましたが」


 ポリーヌはやはりかと言わんばかりだった。

 うすうす感づかれてはいたんだな。


「……いや、ジェヴォーダンの体をこんなにあっさり解体できるなんて本当に君は何者だ?」


「新人バスターです」


「……誰も信じないし、ジョークとしても笑えないぞ」


 ネティスは疲れたような顔で言った。


「ところでこれを持って帰っても信じてもらえますかね? 新人が討伐できるはずがないって言われませんか?」


 俺にとって一番気になっている点である。

 

「それについては俺が証言をしよう。山級バスターとしてそれなりに実績と経験がある。俺が言えば少なくとも信じてもらえると思う」


 山級冒険者か。

 中堅クラスでそれなりに信頼されている人が多いDランク相当ってところか。

 俺とポリーヌだけよりも信じてもらえる確率は高いだろうな。

 アイテム袋に解体したなきがらを放り込んで俺たちは一階へと戻った。


「ネティスさんはまだ戦えるような状態ではないので、ロイさん頼みになってしまいますが」

 

「任せてくれ」


 第三階層までの魔物は俺の敵じゃない。

 ネティスをかばいながらでも全く問題はない。


「すがすがしいくらい強いな」


 俺の戦いぶりを見たネティスはそんな感想をつぶやく。


「足手まといになって悪いって気持ちがまるでわいてこない、規格外の強さじゃねえか……」


 呆れられているように感じるのは気のせいだろうか。

 まっすぐ協会に戻るとネティスはペネロペさんじゃない受付嬢のところに行った。


「緊急報告をする。協会長か副会長を頼む」


「緊急報告ですか!?」


 協会職員と偶然居合わせたバスターのメンバーがぎょっとしている。


「しょ、少々お待ちください」


 青い顔した女性職員が奥に引っ込んだ。

 大急ぎで協会長を呼びに行ったのだろう。

 

「ネティスさん? 他の人は? <風よけのマント>のみなさんは?」


 若い男性職員がおそるおそるたずねる。


「全滅した。生き残ったのは俺だけだ。それも彼らに助けられたおかげで、かろうじてといったところだ」


 ネティスが俺たちを見たので、場の人間の視線が俺たちに集まった。


「山級バスターパーティーが壊滅するような事態を、新人バスターの二人が助けた? どういうことだ?」


「ほら、後ろの女の子はヒーラーみたいだから」


 うん、俺たちが元凶のジェヴォーダンを瞬殺したとは誰も思っていないようだな。 

 死にかけていたネティスをポリーヌが救助したと考えているのだろう。

 俺も他人だったらおそらくそう判断するな。

 

「ネティスさん、それに<アンビシオン>の二人も協会長がお会いになるそうです。二階へどうぞ」


 奥から出てきたペネロペさんがそう指示を出す。

 バスター協会の協会長かあ。

 都市長に任命されるらしいけど、どんな人なんだろうな。


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