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迷宮への挑戦、二日目のはずが……

 酔っ払いの四人組にまた会うかと思っていたが、顔を合せなかった。

 ポリーヌと一緒に朝飯を食べ終えて頼んでいた弁当を受け取り、協会へと顔を出す。

 するとペネロペさんがニヤニヤしながら話しかけてくる。


「聞いたわよ、ロイさん。酔っ払いの四人組を叩きのめしたんですって?」


「え、うん」


「……得意になってなさそうね。調子に乗っていたら<芽吹きの季節>に泊まっているバスターたちに、上級者はいないだから勘違いしたらダメよって注意しようと思っていたのに」


 ペネロペさんは少し残念そうだった。


「冷静で落ち着いているのは素晴らしいけど、新人らしい可愛げがないわね」


 そりゃ一応二度目の人生だからな、俺って。

 子ども時代を経験してきたせいか、正直あまり実感はできなくなってしまっているが。

 

「ローグの応募はありました?」


「残念だけどないわねえ。ローグってよっぽどひどくないかぎり、需要は尽きないもの。長い目で見るか、どこからか連れてくることを考えたほうがいいかもしれないわね」


 ペネロペさんはそう言った。

 ローグの実力がパーティーの生死を分けることが少なからずある。

 だから腕のいいローグがフリーになることはまずないという。

 もっともだが、俺たちとしては少し困るな。

 

「下手をすれば今度新人がやってくる時期まで見つからないかもしれませんね」


「だからと言って他のパーティーを追い出されるような奴を入れるのにはリスクがあるし……」


 ポリーヌと俺は顔を見合わせる。

 どちらも名案が浮かばず困った表情をしていた。

 

「ひとまず今日はもぐってみよう。第五階層くらいまでならふたりでも平気かな?」

 

 戦力的には第二階層くらいで止めておくべきなんだろうけど、俺とポリーヌという組み合わせならば心配は少ないだろう。

 

「ええ。ただ、最初は第三階層を目標にしたほうがいいかもしれませんね。その時点での消耗具合で決めるというのはいかがでしょう?」


「異議なし」


 アイデアを出してくれる仲間というのは素晴らしいな。

 たしかに迷宮はもぐるたびに消耗具合が変わると聞いた覚えがある。

 もぐってみてから臨機応変に行動するつもりでいるほうがよさそうだ。

 

「……何と言うか、新人同士の会話には聞こえないわね」

 

 ペネロペさんは苦笑している。 

 正直なところ俺もそう思ったし、表情的にポリーヌも同じようだった。

 新人らしくない新人バスター<アンビシオン>の俺たちは軽い足取りで迷宮へと向かった。

 まずは第一階層で「ロストマン」などを撃破しながら、下に降りる階段を探す。

 階段の位置は変わらないのだから、昨日の段階で見つけておくべきだったかな。

 ちょっと後悔したものの、ポリーヌは黙ってついてきた。  

 第二階層に入っても出てくる魔物の種類は変わらなかった。

 そしてそのまま第三階層へと降りていく。


「ここまでは順調だな」


「ええ。出現する敵が同じというのは大きいですね」


 ポリーヌの言葉にうなずく。

 やはり敵の種類がコロコロ変わるのはやっかいだ。

 第三階層に入ると、壁や床がうすい緑色の石のような材質に変化している。

 

「少し空気が変わったな」


「ええ。どことなく冷たく、引き締まった風がただよっている気配がします」


 ポリーヌが言いたいことはよくわかった。

 第二階層と第三階層でこんなに変わるものか?

 注意をしたほうがいいかもしれない。

 そう思い、歩くスピードを落として慎重に進んでいると、前方から悲鳴が聞こえてきた。

 同時に戦闘音らしきものも響く。


「ロイさん、どうします?」


 ポリーヌがけわしい顔で鋭い声を放つ。


「助けに行ったほうがよさそうな予感がある。問題は俺たちで足手まといにならないかという点だが」


 そこで俺がちらりと見ると、彼女の表情におびえの色はない。

 見知らぬ誰かのことを案じている神官らしい少女の姿がある。


「行くだけ行ってみようか。俺たちにできることがあるかもしれない」


「はい!」


 ポリーヌは我が意を得たりとばかりに力強くうなずく。

 俺はポリーヌを置き去りにしないように注意しながら駆ける。

 幸い、彼女はけっこう足が速かった。

 途中右に一回、左に一回曲がり、さらに右に曲がったところで大きな広間に出る。

 そして同時に血の匂いが俺の鼻を強く刺激した。

 肌を針で突き刺されているような感覚が全身を襲う。

 これは強敵と遭遇した感覚だろう。

 目の前にいるのは全長六メートくらいの大きなオオカミのような魔物だ。

 赤い両目に加えて額にも青い瞳があり、足は六本、さらに尻尾が二本ある黒い体毛の生き物をオオカミと呼んでいいのか分からないが。


「まさか、ジェヴォーダン!?」


 魔物の名前を知っていたらしいポリーヌが悲鳴のような声を上げる。


「ジェヴォーダン?」


 俺が聞き返すと、彼女は「何で知らないんだ」という顔をしながら早口にまくし立てた。

 

「第十階層にいるエリアキーパーですよ! こんなところにいるはずがない、超大物です!」


 とりあえず異常事態なのは理解した。


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