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アンビシオン

「よかったら町を歩いて回ったらどう? まだ来たばかりで土地勘がないでしょう」


 とペネロペさんに提案される。


「そうですね。あ、俺たち二人は正式に組むことに決めました」


 うなずいてから俺は忘れる前に報告をしておいた。


「そう。じゃあこの紙に書いてね」


 差し出された獣皮紙には名前を書く欄があった。

 

「パーティー名。二人だからコンビ名か。どうしようか?」


 何かいい案がないかとポリーヌに振ってみる。

 

「そうですね。私にもロイさんにもそれぞれ夢があります。それを踏まえて<アンビシオン>というのはいかがでしょうか?」


「いい響きだな」


 意味はよく分からないけど、たぶん悪い意味ではないだろう。

 アンビシオンと書き、ロイとポリーヌの名前を書いた。


「これでいいですか?」


「ええ。メンバーが増えた場合、その都度ロイに書いてもらうけどね」


 マジか……これもリーダーの役目ってやつだろうか。

 俺がリーダーでいいのかと思うものの、流れ的には今さらな気がする。

 ポリーヌは反対なのに黙っているような性格じゃないということは、短いつき合いながら理解できたと思うし。

 

「あとは……ローグがいればいいなと思いました」


 俺が言うとペネロペさんはにっこりした。


「気づいてくれてよかったわ。募集するのがヒーラーだけだと知って、最初はどうしようかと思ったけど」


 あ、はい、うっかり抜けててすみません。

 そうだよな、魔法戦士がローグを連れずに迷宮にもぐるのはわりとやばいよね。

 序盤のうちはいなくても何とかなるだろうとぼんやり思っていただけなんだが、他の人にはわからないだろうし迷宮をなめすぎと怒られても仕方ない。

 

「募集は性別は不問でいいわよね?」


 俺はこくりとうなずいた。

 男がいいのは本音だけど、ポリーヌは男の比率が増えるとやりにくいかもしれない。

 仲間になったのだから自分の都合ばかり考えるのはよくない。

 ペネロペさんと別れて俺はポリーヌと一緒に街の散策をする。


「ポリーヌはどこに何があるか分かる?」


「教会の場所と薬屋の場所くらいでしょうか」


 有事の際に駆け込むことになりそうな場所は、昨日到着した段階でチェックしていたのだという。


「しっかりしているな」


 俺がダメ人間のように思えてくる。


「いえ、私が小心者なだけだと思います」


 ポリーヌはひかえめに笑ってフォローしてくれた。

 二人できょろきょろしながら道具屋を探していると、古ぼけた印象を与える赤い看板を出している店を発見する。

 まだ日は沈んでいないのにカーテンが閉められているせいか、中はうす暗かった。

 店番をやっているらしい小柄な紫色の服を着た老人のところだけが明るい。


「ウェルフェアさまが恵まれるかけらに引き寄せられたことを感謝いたします」


 ポリーヌはそう告げる。

 たしか貴族とかの言葉で「あなたと出会えた幸運を神に感謝します」という意味だったかな。

 ウェルフェアは慈愛の神、癒しの神で幸運をつかさどる神は「プリエリヤン」のはずだが……自分が信じる神に感謝をささげるってことでいいのかな。


「これはていねいに。神官さま」

 

 老人はちょっと気圧されていて、ぎこちない返事をする。


「アイテム袋を探しているのですが、こちらで取り扱っていますか?」


「ええ。ただ、一番収容量が小さいやつしかないですよ」


「それで充分です」


 俺はそう言って値段を聞いた。


「八〇〇万ゼルクだが、払えるのかね?」


 とあるリバーシの大会での優勝一回分だな。

 うなずいて金貨を見せると、老人は棚から白い袋を一つとって差し出してくる。

 それを受け取って金貨をしわだらけの手の上に置いた。


「駆け出しのくせに払えるだなんて、あんた何者だ?」


「とある新人バスターさ」


 お茶目な風に言ったせいか、老人は信じてくれなかった。

 俺の隣のポリーヌも絶句しているようだった。

 そう言えばなんで俺がこんな金を持っているのか、説明していなかったな。

 今日のところは商品を見に来ただけだと勘違いしていたのかもしれない。

 まあ話していないことがあるのはお互いさまなんだろうから、ここは許してもらおう。

アイテム袋を無事にゲットしたのでポケットに入れて店を後にする。


「次は教会と薬屋に行ってみたいけど、案内を頼めるかい?」


「ええ。お任せください」


 ポリーヌの案内で教会、薬屋に行き、それから武器屋、防具屋、魔法ショップにも顔を出した。

 


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