最初の成果
俺たちはその後ロストマンを十体、グレムリンを七体しとめた。
なかなかの戦果だと言えるが、ヒラヒラ草を発見できなかったのが少しだけ残念だ。
あと、残留品集めも意外と大変だった。
ポリーヌが持っている「アイテム袋」に入れさせてもらった。
アイテム袋はその昔、謎の魔法使いによって開発されたもので、値段は高いもののたくさんの物をしまえることから愛用者が多いらしい。
リバーシといい、みそやしょうゆといい、俺の先輩かなり頑張ったんだな。
金儲けの手段をまたひとつ潰されていることが判明したわけだが、恩恵を受けられることには感謝しよう。
「アイテム袋ってどれくらいするんだ?」
「収納可能な量によってかわりますが、私が持っているので一〇〇〇万ゼルクでしょうか」
「高いな!?」
思っていた以上に高いというか、高い物を持っているポリーヌは何者なんだ。
じっと見つめると彼女はそっと目をそらす。
「私はほら、一応神官見習いなのでもらえる機会があったのですよ」
うーん、うそをついているわけじゃないがすべてを話しているわけでもないって感じがするな。
「犯罪で手に入れたわけじゃないんだな?」
「違います。それだけは違うと断言しておきます」
ポリーヌはすんだ瞳でじっとこっちを見てくる。
信じてもよさそうな顔だな。
まあ万が一だまされていたら、きっちりと報復することにしよう。
俺は必要とあれば女子どもや老人だってボコボコにする主義である。
きれいごとじゃカビが生えたパンのかけらすら食べられないからな、こっちの世界は。
「分かった。疑ってもキリがないからな。今は信じよう」
「ありがとうございます」
ポリーヌはホッとしていた。
「まだ余裕はあるかい?」
「ええ。ロイさんのおかげですが」
彼女はたしかに余裕そうである。
魔物の大半は俺が倒したってのもあるんだろうけど、神経をすり減らすはずの迷宮に初めてもぐったはずなのにこれとは、大したタマだな。
これは掘り出し物的な人物と知り合えたかもしれない。
「じゃあ今日のところは帰ろうか」
俺がそう言うとポリーヌは拍子が抜けた顔になる。
「帰るんですか? 余裕があるなら第二階層に行こうとおっしゃると思ったのですけど」
「初日だからな。無理しない方がいいよ。それに今日頑張る理由もないし」
それなりの成果を出せないと家賃を払えないとか、明日の飯が食えないって状況なら無理もするだろう。
だが、今はそんな心配はいらないのだからガツガツやる必要はない。
そういうことは迷宮に慣れてきて、戦力が整ってきてからでも遅くないはずだ。
「分かりました、賛成します。正直に言うと少し安心しました」
ポリーヌは俺が続けてもぐろうと言い出すんじゃないかと不安だったらしい。
「俺ってそんな風に見えていたのか」
「というか、子どもが小石を蹴飛ばすみたいに、サクサクと魔物を倒してしまうので、第一階層はただの準備運動だと思っているのかと考えていました」
ポリーヌはそう言って謝ってきた。
別にかまわないけどな、だいたい正解だから。
やってみて思ったけど、やっぱり第一階層はウォーミングアップ程度にしか感じなかった。
ユーグの情報によると、ヴィエルゾンの迷宮の魔物が強くなるのは、第一〇階層の下あたりかららしい。
「否定はしないよ。ただ、どうせならローグくらいはほしいなって思っているんだ」
凶悪な罠があるだろう階層に行くのにローグがいないのは、翼なしで空を飛ぼうとするようなものじゃないかな。
「同感です。ロイさんと私の考え方は一致しやすいようで何よりです」
パーティー組む相手と考え方が合わないってかなり苦痛なんだろうなあ。
そんな経験なんてないけどさ。
「ところでロイさん、本当に迷宮は初めてなのですか?」
「そうだよ。俺もポリーヌに同じ質問をしたいけどな」
そう返すと俺たちの間には沈黙が舞い降りる。
そしてどちらともなく笑いだす。
「お互い何も聞かなかったことにしましょう」
「そうだな」
いきなり互いのことを打ち明けあえるほどの関係になれたとは思えない。
パーティーメンバーとして信頼してやっていけそうだというだけで十分だ。
地上に戻り、バスター協会に顔を出す。
ペネロペさんが俺たちを出迎えてくれ、左側にある査定窓口を案内してくれる。
査定窓口に座っているのは四〇歳くらいのスキンヘッドの鋭い眼光のおじさんだ。
「ロストマン十体、グレムリン八体か。初心者、それも二人組としてはまずまずだな」
特に驚いた風もなく査定が進んでいく。
「買い取り価格は二十万ゼルクになる。不満は?」
不満も何も現状じゃお金に困っていないし、最初はこんなものだろうという思いもある。
「ありません」
二十万ゼルクを受け取った俺は半分ポリーヌに渡す。
「え? 大半ロイさんが倒したものですけど?」
「パーティーだからな。それにポリーヌの援護なしじゃ倒せない敵が出てくるかもしれない。それでも半分だよ」
「なるほど、了解です」
常に半分となれば不公平感は少ないだろう……たぶんだけど。
貢献度なんてものは目に見える数字かできるはずがないんだから、仕方ないのだ。
やることをやった俺はペネロペさんに聞いてみた。
「アイテム袋って買えませんかね? あと、ローグを募集したいんですが」
「アイテム袋は協会じゃ扱ってないわね。町の道具屋を探してちょうだい。ローグ募集については了解したわ」
ペネロペさんはテキパキと応対していく。
協会にアイテム袋はないのか……面倒だけど仕方ないか。




