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はじめての迷宮

 ヴィエルゾンの街の西の壁を越えて迷宮へと入っていく。

 迷宮は基本的に地下へと降りていく仕様だが、まれに例外もあるとか。

 まあ俺に関係あるか分からないけどな。

 門番にバスターカードを提示して門を開けてもらう。

 俺が先を歩き、一メートルほど後にポリーヌがついてくる。

 入り口は大きな洞穴のようなものだ。

 左右の壁にはろうそくの火がついていて、いったい誰が用意しているのだろうと益体のないことをふと思う。


「明かりがいらないのは楽だね」



 ずっと無言なのもつらいと思い、ポリーヌに話しかけた。


「そうですね。でもせいぜい十階層くらいまでみたいですよ」


 ポリーヌは遠慮がちに答える。

 そう言えばそうだったな。

 階層が下になればなるほど、魔法使いとヒーラーの需要が高まる。

 今のうちに組めたというのは悪い話じゃないか。

 

「今日は確認がメインで、できればホラホラ草を採るって感じでいいかい?」


「異論はありません。初めて組むんですから、第一階層だけにとどめておく方が安全でしょう」


 ポリーヌは当然という顔で応える。

 とてもつき合いやすい子だなというのが率直な印象だ。

 一階層は赤黒い土のような壁と天井と床である。

 踏んだ感触的に下はたぶん土なのだろう。

 迷宮は分かっていないことが多いが、ひとつ言えるのは迷宮核と言われる巨大な魔石を破壊しないかぎり、迷宮は消えない。

 まあ迷宮核は大きさ次第では買い取り価格が一個一億ゼルクを超えるそうなので、壊さず持ち帰る人の方が多いらしい。

 敵が出てこないからか、ポリーヌが話しかけてくる。


「ロイさんはどうして迷宮に?」


「金を稼いで貴族になって、家族を養いたいんだ。よくある話だと思うよ」


 俺が答えるとポリーヌはなるほどと答えた。


「ポリーヌの方は?」


 人に聞いておいて自分は教えないなんていう性格には見えなかったので、思い切って聞いてみる。


「他に行くところがなかったのですよ。女にとってはよくある話です」


 女がバスターになるのは金のため、あるいは誰かから逃げるためと相場が決まっているとユーグが言っていたな。

 ポリーヌも何らかの事情で逃げてくるしかなかったのだろうか。

 だとすればこんな時期にやってきたのはうなずけるな。


「そっか。まあお互い頑張ろう」


 そう言うとポリーヌは足を止める。


「変わった人ですね、ロイさんは」


「そんなことないと思うけど」


 言いたくないなら言わなくてもいい。

 言いたくなったら言えばいい。


「裏切りだけはごめんだけど、そうじゃないなら気にしないよ」


「……ありがとうございます」


 ポリーヌは小さく礼を言った。

 こんなことで打ち解けられたとは思わない。

 だが、何かのきっかになってくれたらよかった。


 

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