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「ちょ、な、な……!」
「何よ。教えてくれたっていいでしょ?」
「お、教えてって!! ま、真理亜だって!!」
「私が何?」
「し、し、しっ」
パニック状態の私を余所に『2枚目いくよー! ハイ、チーズ!!』という機械から発せられる掛け声とともに、2枚目の撮影が終わっていた。
「コト、言ってること意味不明だよ? それにほら、笑って笑って」
「わ、笑えるわけ……!!」
『次は、腕を組んでみたりしてね? じゃあ行くよ?』
「ホラ、コト! もっと寄って!」
「わわっ」
パシャ!
――ちょ、ちょっと!? 私の顔ヒドイのばっかじゃない!?
反論したいのに、機械は動きを止めてくれない。
そして真理亜の質問も……
「やー、でもやっぱちぃくんって大人だよね!」
「へっ?」
「だって、ずっと我慢しててくれたんでしょ?」
「が、が、まん、とかっ」
言われた言葉に恥ずかしさがこみ上げてきて……というより。あの時ちぃくんに言われた『もう、限界』って言葉が脳内に響いてきて、一気に顔が赤くなった。
「コトってば。何思い出してんのー?」
「ち、違うって」
「顔赤すぎー」
「もうっ、真理亜!?」
真っ赤な顔の怒り顔で撮られて。まともに撮れた写真は全然ない。
散々真理亜にからかわれて、さっきの沈黙が嘘だったみたいにいつもの二人に戻ってて。最後の一枚の直前、真理亜がぽつりと呟いた。
「こうやって、コトと恋愛の話出来て、すっごく幸せ……」
そんなこと、こんな時に言うから……最後の写真だけは、涙ぐんだ表情で写ってしまった。
結局、まともなのは一つもなくて。どの写真も騒がしいだけの感じに映っていたけれど。
「真理亜、ありがと」
彼女なりの、精いっぱいの私への謝罪とおめでとうなんだと感じられて、宝物になりそうなプリクラになった。
『コトが大事にされてて、本当に良かった』
そう言って笑う真理亜に、私もつられて自然に笑みが零れた。
――私も。真理亜と一緒だよ?
大好きな人の話をしたり、聞いたり。それを当たり前に出来る今の関係が、すごく恵まれてて幸せだって思ってる。
けどね?
『ねぇ、ほんとにシタときも、教えてね?』
小声で耳元で囁く真理亜は、ちょっと悪魔だと思う。
――――――
いろいろありすぎて……うっかりしてたことがある。
というか、そんなことでドキドキと馬鹿みたいに悩んでるのって私だけだと思うんだけどね?
初心者だから、分かんないんだもん。真理亜に聞いておきたかったのに……
どうしよう。
初めて、キス、したら。
次に会ったときは、どうなるの? って。
どんな顔して会えばいいの? って。
そんな悩むべきなのか、それとも悩まなくてもいいのか。よく分かんないことを。
悩んだって結論が出るはずもなく、すぐに花火大会の日は来てしまった。
どうしよう、なんて言ってられるはずもなく、ドタバタと私は3時から準備に取り掛かっていた。
「どう、いけそう?」
「ん、大丈夫と思う」
「まぁ……食べ過ぎなきゃ大丈夫でしょ」
お母さんにそう言って、バシッと帯を叩かれた。
う、ちょっと痛い。
「そ……そんなには、食べないもん」
「ホントにー? ま、彼氏の前で、ドカ食いしないか」
「ち、ちょっ、お母さん!?」
「きゃー、羨まし♪」
なぜか私以上にルンルンな様子のお母さん。
もうっ、恥ずかしいからそう言うの止めて欲しいんだけど!!
ほんのり顔を赤くしながらじとっと睨むけど、お母さんにはどこ吹く風だ。
「髪も、やってあげる」
にやーって笑うお母さんの顔が若干許せないけど、背に腹はかえられないというか。
「お願いしまーす」
拗ねた口調のまま、私はお母さんの前に座り込むしかない。そして座る私を前に、お母さんは手際よく両サイドを編みこみにして、ハーフアップにしてくれた。
普段しないそれが、いつもと違う気がしてドキドキする。
「うーん……ちょっとだけ、化粧しちゃう?」
「へっ!?」
「薄くだけど。ファンデと口紅だけつけてあげるわ」
――待って、お母さんっ!
止めるのが間に合わず、慌てて化粧を取りに行った母は私の前にはもういない。
「化粧とか……恥ずかしすぎる……」
可愛くなりたい、って少しでもって思うのに。
急な変化は怖すぎて。あからさまに変わる自分は、ちぃくんにとってどう映るの? って不安になる。
だけど、それくらいじゃ足りないのかもしれない。
ちぃくんは大学生で……私はまだ中学を卒業して高校生になったばかりで。きっと周りは、綺麗なお姉さんでいっぱいに違いない。こんな私じゃ、ちょっと化粧したくらいじゃ変化に気づいてもらえないのかも。
いろんな想いをグルグルと巡らせていると「琴莉もどんどんお姉さんになってくのね……」なんて、パタパタとお母さんんが化粧を施しながら、感慨深げにポツリと呟いていた。
「そう?」
「そうよ。よし、可愛いコトちゃん」
「ありがと」
パシッとお母さんに肩を叩かれたけど、それはとても温かな気がして。
頑張れ! って言われてるみたいに感じた。




