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一気に気がそがれた私は、風船がしぼむようにぷしゅーと気も抜けた。だけど、真理亜は特に彼女たちを気にした様子もない。
「で? コトがしたのって何?」
ぐいぐい迫る勢いで、さらに尋ねてきた。
――もぉーー! ちょっとは恥じらいってものをっ
持ってよ! と言いたいのを我慢して睨むと……
「なんてね。分かってるってば。キス、したんでしょ?」
さすがに小声でだけど、あっさりと私の言いたいことをあてて、ニシシって笑った。
く、悔しいっ。今日は全然勝てそうにないっ!
涙目になりながらずけずけ、ずばずば言う真理亜をさらに睨みつける。けれど、それすらも真理亜には何の攻撃にもならないようだ。
「ほらほら睨まない。……はぁ。もぉほんとコトは可愛い」
そう言って私の髪をわしゃわしゃ撫でてきた。
「ちょっ、真理亜!?」
かき乱すだけかき乱して、最後の一口を口内へ放り込んでまたニッと笑う。その顔に、何か一言言ってやりたいと思いながら見つめると「おめでと」って今までとは裏腹に、毒気を抜くような柔らかい笑みを浮かべられて……私は何にも反論できなくなってしまった。
「ちぃくんはさ。コトをすごく大事に想ってるみたいだから……してないんだろうなって、ずっと思ってて。でね」
「……うん」
「私が、創と……って話した時に、琴莉黙っちゃったでしょ? しまったって思って」
「え?」
正直、真理亜に気づかれてたと思わなかった。自分の勝手な醜い気持ち。隠したつもりでばれてたなんて、ちょっとどころか結構恥ずかしい。恥ずかしさに真理亜が見れなくて、ついと視線を下げる。
テーブルの切れ目から自分の膝頭が見えて、ため息を吐いた。
「コトが焦ってるのかなって。もしかして私が言ったことで、変な不安とか煽りを与えてるのかなって」
「……」
違うとも、そうだとも言えなくて、ただ俯いて真理亜の話を聞く。言い当てられて恥ずかしくて、なんだか泣けてきて。だけど、こんなことで泣きたくもなくて、スカートの端をきゅっと握りしめた。
「ごめんね。私が変なこと言ったから」
そう締めた真理亜。でもそれにだけは反論したい。
「ちが、う。違う、の。私が、私が……」
真理亜に言われたことで焦ったのも事実。だけど、それだけじゃない。
あの頃は認められなかったけど、今なら言える。
――私が、彼に触れて欲しかっただけ。
それをしてもらえない不満を、勝手に真理亜にぶつけてた……それだけだって。
言葉にしなくたって、それが伝わってたなら言ってたのと同じだ。私は言葉にしなかっただけで、真理亜を傷つけたのかもしれないってとても後悔した。醜い自分の感情を、上手く隠せなかったことと、処理でき無かった自分を。
「違う。真理亜のせいじゃない。私が、勝手に―――」
「でも、ゴメン。ね……それが、言いたくて。なのに言い出せなくて」
そう言った瞬間、偶然にシーンと店内が静まり返った。お姉さんたちの会話が途切れたのと、私たちの沈黙が重なったせいなんだけど。その見事なまでの静まり返りように、彼女たちの視線が少しだけこちらに向けられた。なんか、気まずい。
「出よ」
私が何か言う前に真理亜が立ち上がって私の手を引いた。
コーンに巻き付いていた、すでに私の手の中で折り目だらけになっているそれを慌ててごみ箱に捨てると、私たちはそのまま足早に店を出た。
――――――
「プリクラ、撮りに行かない?」
言いながら、すでに私の腕を引いて歩き出す真理亜にNOとも言えず。私が大人しくついて歩くと、一組だけ待てば順番が来るようだった。いつも多いのに、今日はやっぱり運がいいみたい。
だけど反面。いつもは会話の止まらない私たちの会話がはずまなくて、いつもならあっという間に順番が来るのに今日はやけに遅く感じる。
一組だけなのに。こんな沈黙、真理亜との間では初めてかもしれない。
今日は、止めとこう? って言葉が喉まで出かかったとき。
「空いたよ」
真理亜が手を引くから、私はまた無言のままカーテンの中へと入って行った。
「こっちは私の驕りねー」
財布を取り出そうとする私を抑えて、真理亜が百円玉を投入してしまう。アイスのことがあるし、いっか……と私もそのまま大人しく鞄に財布を戻した。
何も言わなくてもサクサク選択をしていく真理亜を見ながら、腰かけのバーに凭れてると設定が終わったのか真理亜が横にぴとっと立った。
『準備をしてね』
アナウンスが流れているのに、表情の硬いままの私。どうしよう、笑わなきゃって思うのに固まってしまっていると――
「でさー。どうだった?」
「何が?」
普段と変わりない調子で尋ねてくる真理亜。
一体、何のこと?
『準備はいい? いくよっ?』
カウントが始まったと同時に
「何ってキスに決まってるでしょ?」
ニッと笑った真理亜に――ビックリして、顔を引き攣らせた直後。
パシャ!
いつのまにかカウントが終わっていて、一枚目が撮られた。




