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こういう時、真理亜って天才だと思う。というより、私マニア? というか。もう私を完全に掌握してるって感じる。
――ぐうの音も出ないってこういうことかな。
そう思うほど……それは、私的にも好みで。
それでもって、奇抜でもなく。かと言って古風過ぎもせず。派手さに欠けると言えばマイナスだけど、古臭くはなくて、清楚さを感じた。
紺が濃すぎず、少し薄めで……小花柄。憎いことに帯が白で、蝶の舞う様子が可愛らしい。
悔しいって思うけど。真理亜に買い物付き合ってもらって心底良かったって思いつつ。
「これに、する」
ニヤッと笑う真理亜を横目で察知しつつ、黙って浴衣を手にしてレジへと向かった。
『もちろん、琴莉の驕りだよね?』
ニシシって聞こえてきそうな顔で真理亜が私を見つめて言ったのは、例の駅前にあるアイスクリームショップの入り口だった。もちろん、私の答えにNOなんて選択肢が残されているわけがないのを承知の確認。……で、私は無言のまま入口の扉を開いた。
「いらっしゃいませー!」
明るい店員の声とは裏腹に、若干引きつり気味な顔の私。
――いや、文句なんて無いけどさっ!?
「キャラメルマキアート」
新商品のキャラメルマキアート味を頼む私の隣で
「ストロベリーショコラのミルフィーユ仕立て!」
それってアイスなの!? ってビックリな商品名を唱えた真理亜を凝視した。
「あれだって、美味しそうじゃない?」
「あるんだ、商品……」
真理亜が指さした先には、甘ったるそうなアイスの箱。確かに商品名に間違いはないらしい。
「コトは何にしたの?」
「私? キャラメルマキアートだけど」
「ははっ。コトってさ、味覚だけは想像を裏切るよね」
「そう?」
「うん。私の予想をいつも裏切るよ」
「そっかな」
「ま、そこが面白いけどね」
なぜか面白そうに笑う真理亜を不思議に思いながら、会計を済ませてどちらから言うともなく2階へと階段を上がった。フロアを見回すと、運よく誰もいない。
なんとなくお気に入りの席となりつつある、前と同じ席へ二人で自然と足が向いた。
こういうところ。何も言わなくても自然と呼吸の合うところが、真理亜と居てとても心地いい。
何でもない他愛もない話をあれこれして、コーンに齧りつき始めた頃。私は、またしてもアイスを落としそうになる質問をされた。
勿論相手は真理亜で……貸切状態のフロアで、声量を憚ることなく大胆に尋ねられた。
「でさ、コトはさ。シタ、の?」
「ブフッ!! ……ちょっ、まりっ。グフッ」
コーンを口に含んだ瞬間の質問に、慌てて咽る。
――もうっ! なんてこと聞くのよっ。
「いや、そんな咽なくても……大丈夫?」
「ん、だい、じょぶ」
トントンと意味があるかないかは分からないけど胸を叩くと、なんとなく落ち着いた。アイスと一緒にもらった水を一口飲んで、呼吸を整えてふーっと息を吐く。ほんと、真理亜には参る。
「尋ね方とかって、無いの?」
あまりにもぶっちゃけすぎた質問に、顔を赤らめながら私も思わずツッコんでしまう。
いくらなんでも明け透け過ぎじゃない? 真理亜さん……という目で見ながら言うと
「だってー。濁したって聞いてること一緒だし? コトが気づかなかったら、私一人が恥ずかしいじゃん」
「いやいや、私だって気づく」「いや、コトはオブラートになんかしたら、気づかないって」
無茶苦茶な言い返しをする親友に多少むっとしつつも、反論できない自分。思い当りがないわけでもなく、釈然としないながらも押し黙った。く、悔しいっ。
「――で、どうなの?」
キラキラした目で、少しばかり身を乗り出した真理亜が私を見つめる。好奇心に満ち溢れてるってまさにこういう状態だよねって思いつつ、若干体を引いた。昔なじみの親友とは言え、怖すぎる。
「えと、ね?」
シタ? の尋ねてる範囲が怪しいとこだけど……私なりに、アレは『シタ』に該当するのかな? なんて思いつつ。恥ずかしさで言葉にするよりも先に、ますます顔が赤くなってきた。
さらにあの日のことが思い返されて、顔が熱くなってくる。
それに、恥ずかしすぎるーー!
答えるよりも先に、どんどん答えが表情に出ていたようで……
「コト、ごめん。言葉にされるよりも、アンタ見てる方が照れてきた」
「ふへっ?」
「うん、よく分かった」
「え、と。……あ、ち、違うから!」
シタ、の指すところが違うような気がして慌てて否定する。けど、真理亜の恥ずかしそうなニヤニヤそうな顔が引っ込むことはない。
「いや、いいよ否定しなくっても。あんなにコトが好きなちぃくんが、手を出さずになんて、ね?」
「て、手って!! だから違うってば! 真理亜、勘違いしてるから!!」
「勘違い? してないよー」
「し、して、してるよっ。わ、わた、私がしたのは……っ」
キスだから、って言おうとした瞬間。
「あ、めっちゃ空いてるしー。ラッキー」
明るくテンションの高い大学生くらいのお姉さま方が3人ほど階段を上がってきて、拳を握りしめて少し立ち上がり気味で捲し立てかけた私の熱は、それによって鎮火した。




