19
さくさくとチケットを購入して、座席まで案内してくれるちぃくん。家族と真理亜以外の人と映画に行くことが初めてな私は、相手がちぃくんなだけにさらにドキドキする。
彼氏の隣に座るって、こんなにドキドキなのにみんなどうして落ち着いていられるんだろう?
私には不思議で仕方ない……
「ハイ」
にこっと微笑みながら手渡されたジュースとポップコーン。
――どうしてこんなに、スマートにいろんなこと出来るの?
ちぃくんは、なんでもさくっと出来る。不器用な私には信じられないほどに。
それがまた格好いいと思うから、隣に座ってるだけでいっぱいいっぱいの私はさらにドキドキが高まった。隣に座るちぃくんを見て私ははたと気が付いた。
「あ、あのっ、いくらでしたか?」
また私はお金を払ってないことを思い出す。でも、ちぃくんはいつもはぐらかすのが上手だ。
「あー……今日は出資者がいるからいいよ」
「え?」
「まぁ気にするなってこと。ほら始まるよ」
一瞬顔を顰めた(しかめた)ちぃくんが気になりつつも、私は暗くなり始めた場内に、仕方なく正面を向いた。
真っ暗になった瞬間、伸びてきた手にきゅっと握りしめられる左手。暗くて見えないながら左を見ると、そっと左耳に寄せられるちぃくんの唇と、その近さにドキドキしながら耳を澄ませると――
「繋いでてもいい?」
なんてて囁くから、私は真っ赤になりながらコクコク静かに頷いた。今、真っ暗でホントに良かったって思いながら。
アクションとラブストーリーのミックスした映画は、想像以上に面白くてあっという間に見終わった。それから、初めて二人でファミレスに入る。
私はドリアをちぃくんはハンバーグを注文し、二人で映画の感想を言い合って、会計をすることになったその時。
「ことちゃん、いいよ」
「え?」
「今日は出資者がいるから……」
「でもっ」
「まぁ、説明は後で」
ちょっと困り顔でそう言われて、私は出した財布をまた鞄にしまわされる羽目になった。
……うぅ。なんか、こんなんでいいのかなぁ?
どぎまぎしながら会計をするちぃくんを後ろから見つめて、私は一人そわそわする。
ファミレスを出て「ごちそうさまでした」と頭を下げると、またちぃくんの顔が微妙に顰められる。 「あー、うん。……あのさ」
急に口が重くなり始めて、モノが歯に挟まったような、すっきりしない話し方をする。
一体どうしたんだろう?
「ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど」
時刻を確認すると、もうすぐ2時。時間はまだある。
コクリと頷いて大丈夫と答えると、ふわっと笑ってちぃくんの右手が差し出された。
「行こう」
繋がれた手をほとんど解くことまま、ちぃくんに続いて歩く。
たわいもないお喋りが楽しくて、つい口も軽くなった。上手に話を振ってくれるちぃくんに甘えながら、今の高校の話をする。
相変わらず、聡先輩の話が出ると少し殺気だって見えるのが可笑しいけれど……私は決意したとおり、会長と呼び続けていると途中で不思議そうな顔をされた。
「あれ? ことちゃん、聡先輩って呼ばないの?」
私はその言葉ににんまりと笑いつつも、余計なことは言わない。
「会長って呼ぶことに決めました」
それだけ答えたらすっごく笑われて、ぎゅーって手を握られた。
そんなこんなで、何の思慮もなくちぃくんについて来たことが心底間違いだったと理解したのは、目的地に到着してからだった。
当たり前の様に、自然と大きなマンションのエントランスに入るちぃくん。
それにギョッとして、目を見張っていたら
ピー
と音がして、自動ドアが開かれた。
どうやらちぃくんがポケットから出した鍵を、センサー受信部に翳したら開くらしい。
……って。それって、それって……!!?




