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――ちぇ、上品にきれいに食べたくて頑張ったのに。
なんて心の中でぶつぶつ言いながら、また一口齧る。もうこの時点では、口の大きさなんて気にしてらんなくて、思いっきりがぶっとかぶりついていた。
そんな私を見つめるちぃくんと目が合ってしまい、私はハッとして顔ごと思い切り目を逸らすとちぃくんは苦笑いする。
「こーとーちゃん。コレあげるから機嫌直して?」
言いながら自分の箱に入ったポテトを1本摘まんで、バーガーをごくっと飲み込んだ私の口元に差し出してきた。
「こ、こんなんで、釣られませんっ、よ?」
横目でちらと見て抵抗すると、ポテトでぷにっと唇を押された。
「ほーらっ」
ちぃくんが開けろって催促するから、仕方なく口を開ける。
もう、心臓がバクバクして、止まんない。だって、口を開けながら気が付いたんだもん。
――やばい、めっちゃ彼氏彼女っぽいっ!
赤面しながらかぷっとポテトを口に入れると、はみ出た部分を自分で持って回収した。
このままちぃくんに食べさせてもらうとか、無理無理無理っ。
残りも一気に押し込むと、オレンジジュースでまたごくっと飲み込んだら、ポテトの味が、分かんなくなった。
「機嫌、直った?」
なんて嬉しそうに尋ねてくるけど、私は恥ずかしから返答に困ってトレイのポテトに目線を落とした。
「わ、私のもあるから、ダメです」
可愛くないって思いながら、俯いてポテトに手を伸ばす。今度は私のポテト。
だけどそれは、さっきよりしょっぱい気がして……それからは少し無言が続いてしまった。
最初は赤面してて無我夢中で。
途中で、静かすぎるって思った時には、どうしたらいいのか分かんなくなってた。
――バカバカ、私の馬鹿。
またどうしたらいいか分からないじゃないっ。
可愛くない反応をしてこんな空気創っちゃうなんて、私最悪だってほんとに落ち込む。
どうしよどうしよって頭の中で「どうしよ」がぐるぐる回ってるのに、名案も浮かばない。
落ち込みすぎていっそのこと走り出したい気持ちにまで膨れ上がったその時。
「ことちゃん、どしたの?」
泣きそうになっている私に気が付いたちぃくんが、びっくりした表情で私を見ていた。
「へっ……?」
ちょっとばかりうるんだ瞳で顔をあげると、ちぃくんが本気で焦った顔をして私に手を伸ばした。
「ごめんっ、俺。そんなに笑ったつもりなかったのに。そんなに嫌だった? ごめんな、可愛くてつい」
言いながら、私の頬に手を伸ばしてゆっくり包まれた。
親指の腹が目の下をくっと摩る(さする)。
触れられた右頬だけがやけに熱くなった。
「ち、違うんですっ。あの、沈黙が、どうしていいか、その……」
ちぃくんに笑われたことなんてすっかり忘れていた私は、それこそなんて言っていいのか分からなくてしどろもどろだ。
おまけにちぃくんは、また可愛いだなんて言うから困る。
――可愛くなんか、ないからこうなったのに……
でも、そんないっぱいいっぱいの私の言葉を、ちぃくんは理解してくれたみたいだ。
「なんだ、俺、泣かしたのかと思った」
ホッとした顔をして、私の目の下を同じように2度さすって手が離れた。恥ずかしかったけど、ちょっぴりだけ、離れた手がさびしいな……なんて。
「ごめんな。俺考え事しちゃうとつい籠っちゃって。別に黙ってようとか意図したわけじゃないんだけど。傷つけた?」
優しいちぃくん。いつも私を気遣ってくれる。
私がふるふる顔を振ると
「良かった。あーじゃあさ、なんか1つ言ってよ。俺にお願い、とか」
「お願い?」
「お詫び、に。ポテト却下されたしぃー」
少しだけ意地悪そうな顔を浮かべて、ポテトを1本ちぃくんは齧った。
その態度にうぅうって唸ったら、また笑われた。
「ことちゃんのお願い、1つ叶えさせてください」
おどけてそう言いながら契約書代わりにポテトを一本差し出され、私は少しだけ頬を赤くしてソレを受け取った。




