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いつの間にか購入された切符を手渡されて、切符とちぃくんを交互に見比べる。……切符代まで出してもらう訳にはいかない!
慌てて手を離して鞄を漁っていると、頭上から先手を打つ声が聞こえてきた。
「今日は俺が急に言ったから奢らせて?」
上手いこと、私からお金を受け取らせない言葉で言いくるめようとする。
「でも……っ」
「いいから。ちょっとバイト代も入ったし。それより、ハイ」
財布を探すために慌てて離した手。
それを繋ぎ直すために、再びちぃくんの右手が差し出される。
「コレのが大事でしょ?」
そう言うちぃくんにキュンとして、私は真っ赤になりながら「ありがとう」ってお礼を言って、そっとちぃくんの右手に左手を重ねた。
そしてやっぱり思うのだ。
ちぃくんが、好きって。
優しさに触れる度にキュンと甘く疼く胸を大事に温めて、私はまた繋がれた手に力を込めた。
大好きを伝える、私の精一杯の表現で――
到着した公園はちぃくんの言うように桜が満開で、見物に来る人で溢れていた。
「すっごい人ですね」
「うん、満開だし良かった。行こう」
「はい」
自分の彼氏と手を繋いで、満開の桜の下を歩くなんて。
――きゃっ。めっちゃ恥ずかしい……でも、幸せ。
折角繋いで歩くことにも慣れて来たのに、そんなことを考えていたらまた恥ずかしくなって指先が熱くなってきた。
恥ずかしさでキュッと手を握りしめてしまうと、ちぃくんが不思議そうに私を見下ろしてくる。
その目と目が合ってしまって、私は慌ててフルフルと首を振ると、ちぃくんはククッって喉で笑った。
私は相変わらずいっぱいいっぱい。
「綺麗だろ?」
そんな単純な質問にも、アワアワアワアワ……
「ひゃいいっ」
なぜだかテンパって、まともに答えられなかった。
でもそんな私をちぃくんは温かく受け止めてくれる。
「ぷはっ、ことちゃん可愛すぎ」
可愛いかどうかは別として……また笑われた。
年が離れてる分、私が少しでも大人になれたらいいのにって思うのに、ますます子供っぽい。
そのことに一人凹みながら、私をグイッとひっぱるちぃくんの後をやっぱり嬉しそうに付いて歩いた。
綺麗な桜を見るのもそこそこに歩くと、いつかの懐かしいベンチが見えてきた。
「座る?」
柔らかい笑顔を浮かべたちぃくんが私に尋ねる。
私は満面の笑顔を浮かべて、はいって答えた。
懐かしい、場所……
ここでお守り交換して、ボタン、貰って。
それでここ出た後に――わわわっ。
それ思いだすと恥ずかしすぎる。
初めて抱きしめられた、あの日のこと。
突然顔を赤くする私に気がついたのか、
「琴莉?」
って、名前で呼ばれてクイッと手を引っ張られた。
ちぃくんから名前を呼ばれると、やけに耳の奥まで響いて聞こえる気がする。それが歯がゆいけど嬉しくて、私はいつも以上に舞い上がってしまう。
「ひゃいっ」
またちゃんと返事できなかった。
自分にガッカリしそうになりながらちぃくんを見上げると、ちぃくんは優しい表情で私を見つめる。
その表情が温かいから、私は隣にいることを止められない。
恥ずかしい失敗ばかりするけれど。
「あ、そうだ。ココ立ってて」
「?」
私をベンチから少し離れた場所に立たせたまま、ちぃくんはそう言うと一人ベンチに座った。
離れた手が、ちょっぴり寂しい。少し距離のある場所で私をジッと見るちぃくんと……それを首を傾げて見る私。
「……ふむ」
ふむ?
どしたんだろ、ちぃくん。
なんかおかしい、よね?
「じゃあそこで、クルッとゆっくり回って」
「へ?」
「ゆっくりね」
「え、っと。ここで……?」
ココは紛れもなく公園と言うなの屋外だ。
今日は桜が綺麗に咲いていて、人がたくさん居る。こないだみたいに、寒くて人が誰もいない公園じゃない。
こんなとこで、くるっと回ったらおかしな子だよねぇ?
「うん、ここで」
おかしな子だよ、と思っている私に、ちぃくんはハッキリとそう……ここでくるっと回ってと言った。




