80.ビー、魔法じゃ、おもしろいのう。わしにもできそうじゃ。
さてミネラちゃんの挑むマツジュ。どうなることやら。
* * *
「さて、始めるとしようかのう」
ミネラの言葉を合図にマツジュがミネラと距離をとる。そして、手に持つ杖を掲げ呪文を唱え始めた。その姿に、ミネラの眼が細まる。
「ミネラさま、行きます。炎に宿りし精霊よ、我の前に立ち塞がりし者に浄化の炎を」
(ほう、呪文か?なかなかにファンタジーじゃのう。ふむ、あの言葉で異なる次元の存在とのリンクを強化するのか。言葉が重要か、それとも精神集中する為の単なるワードか、お、杖に高エネルギー体が集まっておる)
ミネラはさも面白そうに、にこにこしながらマツジュを観察する。それに対し、マツジュは真剣な顔でミネラに向け、呪文の最後の一節を唱え る。
「フレームスフィアー!」
杖の先の赤いクリスタルよりゆらゆらと燃える赤い炎の弾が飛び出し、ミネラに向かう。ソフトボールの球程度の火の玉がミネラに迫る。
「おお、魔法じゃ。面白いのう」
ミネラは少し感心しながらも、マツジュが放った火の玉を軽く手を上げ、その手で受け止めた。当然、火の玉自体を薄くではあるがシールドで包んでいた。受け止めた際に、シールドから漏れ出した熱が軽く前髪を揺らしている。
ミネラの手の上で、マツジュが放った炎の弾が赤々と燃えている。揺れる炎がミネラの頬を照らしていた。ミネラは面白そうに、しげしげとその炎を見ている。ある程度の熱量はシールドで防いでいたのだが、それでも幾ばくかの熱がシールドを超えて漏れ出していることに軽く驚いていた。
「ふむふむ、面白いのう。炎の中心に小さなゲートがあるようじゃ。そのゲートの維持に生体エネルギーと言うべきものが使われているようじゃのう。これなら、わしにも出来るのう。やってみるか」
マツジュは驚愕に目を見開いている、まさか、己が放った炎の弾を受け止め、尚且つ、手の上で玩具の様にしているなど思ってもいない。
ミネラの手の中で、ふっとその炎が消えた。マツジュにより込められた魔力が尽きたのだ。
「熱量はなかなかじゃが、案外持続時間に問題があるようじゃ、あっけないものじゃのう。じゃが、なかなかの熱量じゃった、シールドの強度をもう少し上げねばならぬようじゃ。・・・それでは、今度 は、こちらからじゃ、死ぬなよ」
(あ奴、フレームスフィアーとか言うておったな、なかなかにカッコいいものじゃな。わしもひとつ、なにか言わねばならぬかのう。なにがいいじゃろ?まあ、なんでもよいか)
ミネラは顔の前で人差し指を立て、指の先を見つめた。指先に小さな炎が灯り、徐々に大きくなる。赤から黄色、さらに色が薄くなり白、そして青白い炎と化す。
「ミネラちゃんフレーム!」
結局、適当な名前を口にするミネラ。その声は恥ずかしかったのか、少し小さかった。
大きさはテニスボールぐらいだろうか、それを軽く、ひょいっとマツジュに放った。
人の歩くぐらいの速度だろうか、へろへろ~と、ゆっくりと空中を漂いながら、重力など無視するがごとく、近ずいてくる青い炎の珠に、マツジュはまたもや驚愕する。徐々に近づいてくるその物体が内包する熱量がとんでもないことに気がついたのだ。その珠が出現と同時に当たりの温度が2~3度一気に上昇する。
ミネラが「ミネラちゃんフレーム!」と言って出したものは、ミネラの体(本体)の中には、様々な用途用として幾つかの恒星が空間を歪められて設置してある。その内包する恒星から、表面から少し、入り込んだ部分を取り出し、拡散しないように軽くシールドしただけのものだ。
マツジュは、慌てて、間に遮蔽物を設置すべく詠唱に入った。
「大地に宿りし精霊よ、我の前に防御の盾を、アースシールド!」
マツジュの足元がもこもこと盛り 上がり、青い炎との間に岩の盾を造り出す。
「ほう、壮観じゃのう、じゃが、土木事業には良さそうじゃが、果たして効くかのう?」
青い炎の珠が壁に触れた瞬間、じゅ~と僅かな音を立てながら壁の中央に穴が開けられる。その進行は変わらず、一定の速度で近かづいてくる。それを見て、わたわたしているマツジュ。
そんなマツジュを見ながら意地悪くニヤリとするミネラ。
「速い事逃げんとお前にも穴があくぞ。ふむ、もうすでに開けられておるようじゃな、すでに経験済みじゃったか」
ミネラの言葉に、一時、呆けた顔をしていたが、意味がわかったのか、真っ赤になりながら言い返すマツジュ。
「失礼な、まだですの。手も握ったことありませんの」
意外と余裕があるようである。
「わしの方が勝っているようじゃな。手はすでに繋ぎ済みじゃ」
うんうんとなにやら頷いているミネラ。
「アースシールド、アースシールド、アースシールド、アースシールド、アースシールド」
あとづさりながらも次々に盾を形成するマツジュ。残念ながら、防御魔法はアースシールドしか持っていなかった。ゆっくりとした速度ながら着実に近かづいて行く青い炎。
8枚の盾を破られたところでミネラの放った炎が消えた。相当に魔力を消費したのか、少々苦しそうな表情を浮かべている。
「その様子じゃと、そろそろ限界に来ているのではないかの?」
「まだですの、まだやれますの」
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