79.ビー、まだ、ねているの。神と呼ばれるミネラちゃん。
そろそろ異世界との邂逅始めてみましょうか。
ここは、大地が住む街の全体が見渡せる小高い丘に設けられた公園の一角。
時刻は、もうすぐ午後4時になろうとしていた。いつもなら、子供たちで賑わう場所だが、何故か今は、ひっそりとしている。
今、砂場は、使うものが居ない為、猫避けの青いシートで覆われていた。その砂場を囲う様に設置されているモルタルで造られたベンチの上に、一筋の金色の光の線が現れる。
ゆっくりとその線が太くなり、終にはその線に沿って向こう側から押し開かれる様に左右に開いていく。中は黒くモヤがかかっており、良く見えなかった。そこから、ちょっと奇抜な、魔法少女風な衣装を着た小柄な少女が、トンっと、ベンチに降り立つ。
頭には物語の 魔女が被る様な大きな帽子が乗っており、手には背丈ほどの杖を持っていた。その杖の先端は3っつに枝分かれており、それぞれの先端に色の違うクリスタルが取り付けられており、陽の光に輝いている。
少女の顔は、幼いながら非常に整っており、吊目勝ちなその目は少女に勝気な印象を与えていた。少女の背後には先ほどまであった不思議なゲートは跡かたも無く元通りになっている。
「なんなのですの?」
少女の第一声は困惑に満ちたものであった。その少女の表情には困惑だけでなく、どこか期待に満ちているようでもあった。
「ありえないですの」
再度、紡がれた言葉にも少女の困惑を表していたが、口元には薄っすらと笑みが浮かんでいる、
(我が 国、バードケージの最強にして最高位の魔女メインコ・オカの一番弟子たる私、マツジュ・ウシが驚愕しているの。なんたることなの。美貌の天才魔導師と謳われた、知らぬ者などない、マツジュ・ウシがなの)
彼女の名はマツジュ・ウシ。マツジュが名でウシは家名を表す。ウシ家は代々宮廷魔術師を輩出してきた家柄で、マツジュも天才魔導師の呼び声も高い。今はバードケージの最高位の宮廷魔術師、メインコ・オカの元で研鑚に励んでいる。
事の起りは、彼女の師のもとへ二人組が訪ねてきた事から始まる。マツジュは彼らに興味をもった。何処から来たのか知らないが、気の良い奴らで、彼女は直ぐに彼らの事を気に入ってしまった。彼らが語った故郷について、恋焦がれてしまった。 彼女には力があった。 まだ、未熟ではあったが。
二人組の目的は、異界への門にあったようだ。その為に、我が師、メインコ・オカに会いに来たのだ。それは、まったくもって正しい。我が師はバードケージ屈指の魔法使いである、バードケージは、門を司る国であり、その司る門による恩恵により、一瞬にして各国に渡ることが出来るため、各国との繋がりも深く商業が盛んな国である。その国の最高位の魔法使いが、我が師であり、他地域へと繋がる門のみならず、異界への門の番人でもあるのだ。
かく言う、私も、同魔法の使い手である。しかしながら、私一人では異界への門は閉ざされたままであった。まだ、未熟なのだから仕方がない。如何に天才魔導師だとしてもなかなかに難しいのである。精霊の力を 借りてやっと、この地に来る事ができたのだ。
実は、もっと簡単に来る事が出来るだろうと思っていたのだが、彼らとの縁を辿れば、容易い事だと思っていたのだ。まさかここまで遠い場所であったとは。精霊から借りた聖なるオーブに込められし魔力の大半を使ってやっと門を開くことができる世界とは思わなかった。
唯唯、唖然、呆然、唯、口を大きく開けて見るしかなかった。辺りに広がる建物の数々、なんと広大な建物群であることか。地面は堅いなにかで覆われており、その上を行きかう人々が操る金属の箱、空には轟音を響かせて巨大な鳥が飛びゆく姿を。
「すばらしい」
私は、その世界に魅入られてしまったのだ。その為、私の背後に現れた存在に声 を掛けられるまで気がつかなかった。
* * *
「お前は何者じゃ?その手に持つ珠に 込められたエネルギーをどうするつもりじゃ」
その言葉に私が振りかえると、そこには偉大なる存在が居た。そう、神がいたのである。
その小さな体からは想像もつかない程の波動に私は畏怖した。少し警戒を含んだ波動は物理力を持っているかのように私の心を圧倒する。その波動からは、その存在は、私に力を貸してくれた精霊並み、いや、それ以上の存在であると判る。
(この方を怒らせてはならない)
しかし、私の力が何処まで通用するか試してみたい。そんな、愚かな自分がいる事に気付いて、私は自然と笑みを浮かべてしまった。
私は本能で感知する。私は震える声であったが、なんとか絞り出す事ができた。
「貴方様は、この地を治めておられ る神ですか?」
ミネラは少し目を細めながらその少女を見る。口元には薄っすらとであるが笑みが浮かんでいる。まだ、警戒を解いた訳ではないのだが、その少女の物言いに気を良くしているようである。
「神?ふむ、昔、別の世界でそう呼ばれたこともあったが、今は、単なる可愛い、ミネラちゃんじゃ。ふむ、わしを一目で内在する力に気がつくとは・・・、お前に、もう一度訪ねる。お前は何者じゃ?そして、その手に持つ物をどうする気じゃ?事と次第によっては、お前を排除せねばならぬからのう」
マツジュは慌てた。この地に来て早々、神と争うなどもっての他である。とてもではないが、逃げ出す事も、ましてや、勝てる訳もない。しかしながら、自分の力を試せるチャンスではないかと 思っているのも事実。
「え、わ、私は、マツジュ・ウシと申します。けっして怪しいものではございません。単なる旅人でございます」
「旅人?・・・お前、異なる積層世界の者じゃな、それも遠い、相当に遠い、異なる理が支配する世界から来た者のようじゃ、若干、時間遡航もしておるようじゃのう。その手に持っておる物の力か?お前一人では無理じゃろう、その手に持つ物には莫大な力が宿っていた様じゃな、今は、力の大半を消耗しておる用じゃが」
ミネラは既に、その少女の全身をくまなくスキャンし終えていた。残念ながら少女が手にする杖の能力の一部は異なる物理法則に支配されているのか不可視の壁に阻まれて解析できなかった。唯、別の世界から絶えず 先端に取り 付けられたクリスタルへのエネルギーが判るだけであった。
少女の持つ珠についてはそれほど感心するほどのことは無かった。唯、その大きさにしては莫大なエネルギーを内在しているのに過ぎない。造ろうと思えばミネラでも造れるものであったからだ。唯、解放されると少し厄介なものではあったのだが。解放されれば、一瞬の内に地球そのものがプラズマになる、と言うくらいのものだ。
少女については服装が奇抜と言うだけで、特に変わった点はなかった。その服の機能についても面白い部分はあったものの、ミネラの興味を引くことは無かった。ある部分を除いてだが。脳内のある部分、乳頭体と下丘と呼ばれる部分が異常に発達していたのだ、それぞれ感情、到底の周波数に関連が 深いと言われる部位だが、まあ、人の範疇であった。
「偉大なる存在よ、私の力を試させて頂けないでしょうか?」
意を決っしたマツジュはそう言葉を放った。
「ミネラじゃ」
「ミネラ様、なにとぞ」
「ふむ、お前、バトルマニアか?まあ、良いわ。わしも、大地ちゃんで遊んでいた処を邪魔されたので、少々機嫌が悪いのじゃ、良いよ。相手をしてやろうかのう。ふむ、ここではまずいのでな、少し待つがよい。今、場を用意してやるとするでな」
ミネラは虚空で指を2、3振った。辺りから聞こえていた風の音や、車が走る音などが急に消え、辺りは静まりかえる。マツジュには、景色が少し灰色を帯びた気がした。
「!!!、結界ですの?」
ミネラはマツジュに頬笑み掛ける。
「まあ、似たようなものじゃ、ここでなら、少々の事をしても、現実界には影響しないのじゃ。さて、お前の実力はどれほどのものかのう」
ミネラが行ったのは、強制的に自身が造り出した疑似停滞空間内に位相変換したものだ。通常、偵察任務のドローンを変換する際に使われる空間である。そこに、現実世界と若干劣化したコピー構造物を配置したのだ、唯、違うのは、時間が停滞している世界と言う点だ。
(ふむ、マツジュとか言ったか、こ奴、自身のエネルギーを高次存在に提供して、別の世界の物理法則を適用するようじゃのう、さて、どのようなことをしてくれるのか、楽しみじゃのう)
* * *
マツジュがこの世界 にやってきた目的 は、もちろん、その二人から聞いた話に憧れたからだが、もう一つ目的があった。
マツジュの住んでいた処では、精霊との契約により、より大いなる力を得、行使できるようになる。マツジュも大いなる存在を欲していた。マツジュには自信があり、またその為の力もあった。
幼い日より、マツジュは精霊に祝福された存在であり、周りには常に精霊がおり、契約などせずとも力を借りる事ができた。
マツジュの目にはその二人は眩しかった、そして、羨ましかった。
力をもった精霊は人型をとるようになる。その精霊も人型をとっていた、しかも、常時、顕現していたのだ。いや、その精霊はもう精霊の範疇を超えた存在で、神とも言えた。その御方の名はビーと言った。幼い容姿に 厖大な力を宿し、しかしながら、残念な事に力の大半を封じられているのか、失った状態であった様だが、それでも、マツジュの力など及ばない存在であった。
傍らには大地と名のる青年がいた。ビー様の契約者だろうが、契約の作用なのか、彼も一部精霊化している様であった。
二人から話しを聞き、自分もビー様のような存在と契約を守護を勝ち取る為にここに来たのだ。そして、今、自分の前にはミネラと名乗る神が居た。
(この方の守護を得たい、この方に私の力を示せば或いは契約を結ぶこともできるかもしれない)
淡い期待を胸に戦いに臨むマツジュであった。
「さて、始めるとしようかのう」
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お読み頂きありがとうございます。
行き当たりばったり出すみません。




