73.ビー、いちごのプリントなの。
自習時間に会議です。彼と進展するには?
幸いなことに、1時限目は自習であった。中身大地なビーが帝に連れられてビーの教室に行ってみると、黒板に大きく「自習」の文字が書かれてあった。
帝は教室の前で分かれて、笑顔で走って行った。
大地が教室の入り口できょろきょろしていると、手招きしている女の子がいた。見るとその子の横だけにぽつんと席が開いており、どうも、そこがビーの席らしかった。確かに、記憶の片隅にはその席に座っているビーが映っていた。
残念ながら、他人の肉体を制御しているからと言って、ツバイの様に簡単に記憶を組み立てることは難しいようだ。断片的な記憶は偶に見えるのだが、大地には意味が判らなかった。なので、今、手招きしている女の子のこともまったく判らなかった。
「ビーちゃん、おはよ~、遅かったね~。なにかあったの?」
(とりあえず、入り口まで帝さん来てたし、見られてるやろうから、帝さんのせいにしとくか)
「おはようございます。え~と、帝ちゃんとちょっとね」
女の子は訳知り顔で答える。
「ああ、生徒会のお仕事?大変ね」
(お、なんとか会話繋がった)
女の子はシャーペンを指の上でくるくる回してる。右回転、左開店、なかなかに器用だ。
彼女の名は蚕月灯ビーの親友になりたいと思っている一人だ。
「それで、例の彼氏さんとは旨くいってるの?同棲してるって言う彼」
(同棲?確かに今は一緒なんやけど、最近はビーも月に帰らなくなったし。しかし、彼氏って俺のことやろな、彼氏ってあらためて言われるとちょっと恥ずかしいもんやなあ。)
「う、うん」
大地が答え難そうにしていると、灯は察して自分の中で答えを出したようだ。指の上では相変わらずシャーペンがくるくる回っている。回転が増したように思える。
「やっぱり、まだ、一線を越えられてないのね。この前も言ってたもんね、ビーちゃん、えっと、彼氏の名前なんだっけ?」
(おいおい、一線って、あれのことやんなあ。君、中学生やんなあ)
「大地」
「そうそう、その大地さんが手を出さないとかね。それ、ちょっと問題よね。好きあってるんだよね。ビーちゃんだけの一方通行ってわけないか、同棲してるんだし」
中身が大地のビーはなんとも複雑な顔をしていた。
「まあ、ビーちゃん、まだ体が未成熟?みたいだし、大地さんが大人ってことなのかもしれないけど、男ってみんなロリコンじゃない、ビーちゃん可愛いからいけると思うんだけどなあ」
(おいおい、 君、その決めつけはど~かと思うんやけど。まあ、俺もひょっとしたらそうかもしれんけど。ここはひとつ、男らしく、否定はしない、うん)
「そうかな?」
くるくる回していたシャーペンを筆箱にしまう。
「そうだよ」
なにか考えていたが、中身大地のビーに少し笑いかけた。なんとも楽しそうな笑顔だった。
「・・・あ、そうだ、良い事思いついちゃった。へへへ~」
中身大地のビーが怪訝そうにしていると、灯が急にたちあがって、手を上げる。
「はいはい~い、みんな~、ちゅうも~く。今から会議をやるよ~。みんな~こっち、こっち。ちゅうも~く」
灯は両手を振って、みんなに注目を促している。教室のみんなからは、何事かと注目があつまる。
「みんな~ちょっと、ビーちゃんの相談にのってよ~」
灯は机の間を歩いて、黒板の前に立った。くるりと背中を見せて、黒板下に備えつけられてあった引き出しから、 チョークを取り出し、黒板に大きな字を書き始めた。
・議題、ビーちゃんと彼氏(大地さん)の仲を進展させるには?
(おいおいおいおい、こんなんするか~、俺、ど~したらええんやろ。俺との仲を進める会議に俺がでる?ありえん)
「ビーちゃんね、今、彼氏との仲が進まなくて悩んでるんだって、みんな、知恵を出してあげてよ」
ひとりの女の子が勢い良く手を上げる。
「は~い、質問~。今、彼氏との仲は何処まで進んでるんですか?」
(そんな、質問すんなよ。・・・、キスまでだよな。うん、でもあれって、ツバイさんやから、でも同じか?胸は触った事あるよな、ビーには内緒だけど)
「え~っと、キスまでかな」
途端にがやがやし始める。
「うわ~」「ひゅ~ひゅ~」「羨ましい~」と言う囃したてる声の上がる中、黒板に『キスあり』と書かれた。
別の女の子から、質問があがる。
「夜、寝る時は、二人は~、別々の部屋ですか?きゃっ」
「 ・・・えっと、同じ部屋です」
「え~同じ部屋だって、やだ~」「でも、それでなにも無いの?」「それって・・・」「不能・・・?」「熟女好きとか」「男に興味あるとか」
(うぎゃ~、やめて~)
女の子たちが口々に話す事で、どんどんと沈んで行く大地。そんな質問大会が進んでいく。
* * *
質問大会が終盤に差し掛かったとき、灯が中身大地のビーに近寄り、告げる。
「ビーちゃん。結論を言います。その彼氏は貴方の事を、好きでないか、もしくは、妹と思っている可能性あります。好きでないということはないでしょうから、妹が妥当なところでしょう」
「妹?」
「そう、妹です。妹からの脱却を目指しましょう」
(ひょっとしたら、大事に大事にしてる可能性もありますが・・・それは、黙っておきましょう)
黒板に『 妹 』と書いた上、二重丸が 付けられた。
(そうか、ビーは妹やったんや)
「さて、ビーちゃん、パジャマはどんなのを着ていますか?」
びくっとなる中身が大地のビー。今度はなにを聞かれるのか、内心びくびくだった。
「えっと、怪獣の着ぐるみのやつ。尻尾もついてるよ」
質問内容にすこしほっとしながら答える。
「か、かわいいい。は、いやいや、だめだめです。ビーちゃん。ドキっとさせなければ」
別の女の子から質問が灯にあがる。
「先生~、すけすけのネグリジェはどうでしょう?」
気がつけば、灯は先生と呼ばれていた。
「なかなか良いですが、あからさま過ぎます。あざといです。ここはひとつ、男物の大きな白いワイシャツだけを身に付けるのがいいのではないでしょうか」
いつのまにか、みんなが、灯を囲んでいる。
「ふむふむ」
「彼氏のぶかぶかのワイシャツを着ることを試してみましょう。ビーちゃん。メモとってますか?結構」
中身が大地のビーは慌ててメモを取り始める。
「ワイシャツの下はパンツだけです。ブラはいけません。ワイシャツに透ける突起が良いのです。ここ、ポイントです」
(たしかにそそる。貴方は何者ですか)
「さて次に、下着についてです。ビーちゃん、今、ビーちゃんはどんなパンツを穿いていますか?」
中身大地なビーは朝の出来事を思い出していた。今、穿いているのはツバイに履かせてもらった、いちごパンツだ。
「あの、えっと、小さないちごがいっぱいプリントしたやつです」
灯は親指をたてている。やけに笑顔が眩しい。
「ふむ。いちごパンツですか。なかなかです。グッドです。ビーちゃんにあってます。でも、世の男どもはある信仰を持っています」
女の子たちから質問が飛ぶ。
「先生、それはなんですか?」
灯は、周りを取り囲むみんなの顔をひとりひとり見ていく。
「それは」
し~んとなった教室。窓には明るい陽の光が注いでいる。
「それは?」
ごくりと一堂かたずを飲んで次の言葉を待つ。
「・・・水色のシマシマパンツ信仰です」
驚きの顔のみんな。
「シマシマ!」
確かに、マンガなどではおなじみだ。
「そう、シマシマです。実は、世の中には水色のシマシマパンツなど流通していません。無い物だから、逆に皆、求めるのです。これを手に入れる事が出来たなら最強戦士の誕生です。怖いものなどありません」
「最強戦士!」
「なかなか手には入りませんが。そして、侮ってはならないのが、白です。中央の小さなリボンのワンポイントも忘れてはなりません。このリボンは色付きであってもなくてもその効果はかわりませんが、やはり白が望ましいでしょう。また、黒も捨てがたいのですが、黒は人を選びます。普段、清楚もしくは幼い雰囲気の方がここぞと言う時に着用するとその効果、測りしれません」
「素人の方は、無難な白をお勧めします。白ならば、間違いはないでしょう。いや、確実に間違いを起こすことが出来るはずです」
そんな講義が自習時間終了ぎりぎりまで続けられた。
中身大地のビーは手元に沢山のメモ書きを 手に入れる事ができたが、ど~するのだろうか。
それにしても、蚕月灯、貴方は何者?
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